新型インフルエンザの国内発生は、大阪府や兵庫県の高校生を中心に感染が拡大する様相を見せている。
感染源は不明で、生徒らに最近の海外渡航歴はなく、国内で人から人への感染があったとみられる。新型ウイルスには潜伏期間があり、感染しても症状が出ない人もいる。厳重な水際検疫も通過し、ウイルスが旅行者などを介して国内に持ち込まれ広がった可能性が強い。
国内発生は予想されていたことだ。感染者はどこで見つかっても不思議はない。国と自治体は連絡を密にして拡大防止に全力を挙げねばならない。なぜ感染者が高校生に集中したのか、感染状況の分析も急ぎたい。
新型ウイルスは感染力は強いが、毒性は低いといわれる。症状は普通のインフルエンザと同じで、大多数の感染者は重症化しないと考えられている。タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬が効果がある。
しかし、糖尿病などの持病を抱えた人や妊婦や体力の弱った高齢者では重症化するケースがある。若者に感染が多いのも特徴だ。恐れすぎることはないが、軽くみてもならない。
国内感染の発生で、政府の行動計画は、第一段階(海外発生期)から第二段階(国内発生早期)へ移行した。感染者の指定医療機関への入院措置や学校の臨時休校などが基本となる。さらに対策本部は患者と濃厚接触のあった地域の企業や学校に時差通勤や通学を容認するよう求めることなどを決めた。
兵庫県と大阪府は、公立の小中高校や保育所・幼稚園などを臨時休校・休園し、神戸市ではイベントの中止や外出自粛を要請するなど市民生活に影響が広がっている。対策は感染拡大を抑えることを主眼に置くべきだろう。経済活動など社会機能を維持しつつ難しい対応になろうが、各自治体ごとに知恵を絞り、冷静に対処したい。
拡大防止には一人一人の予防が大切だ。基本は毎年流行するインフルエンザ対策と同じで、うがいや手洗いを励行し、マスクを着用して、なるべく人込みは避けるなどの注意点を守ることである。発熱があり感染が疑われる場合は、保健所などに設けられた発熱相談センターに電話して指示を仰ぎ、自治体病院や大学病院などにある「発熱外来」を受診することになる。
感染者は今後も増えることを覚悟しておかねばならない。受診者の急増に対処し、重症者を出さないためにも医療体制の強化充実が急がれる。
東京証券取引所の第一部上場企業の二〇〇九年三月期決算がほぼ出そろった。自動車、電機など日本を代表する企業が巨額の赤字を計上した。世界同時不況の深刻さをあらためて認識させられる結果である。
日興コーディアル証券が十四日までに決算発表した九百七十九社を合計した純損益総額は、七年ぶりに赤字に転落する見通しだ。〇八年三月期の十九兆四千四百五十四億円の黒字から二十兆円近く悪化し三千四百億円規模の赤字だ。
赤字幅が大きかった業種は、電気機器が百十五社合計で二兆六千七百七十四億円、輸送用機器が五十三社で九千七百十二億円、証券も二十社で九千百億円を超えた。
製造業で過去最悪となる日立製作所の純損失は七千八百七十三億円。〇七年から一〇年三月期まで四年連続赤字で、抜本的な経営改革が急務だ。パナソニックやソニーなども赤字を膨らませている。
自動車は大手八社のうち五社が赤字転落した。トヨタ自動車は北米での販売が落ち込み、四千三百六十九億円の赤字に転落した。来年も八千五百億円の赤字見通しだ。
しかし、厳しい不況の中でも黒字となった企業もある。軽自動車が主力のスズキやダイハツ工業は黒字を確保した。ホンダも二輪車が新興国などで下支えした。任天堂は家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」で売り上げを伸ばした。斬新な商品を開発すればチャンスはある。
製造業はここにきて在庫調整が一服し、生産は一部で上向き始めた。政府の景気対策効果も徐々に出始め、ハイブリッド車には注文が殺到している。苦境は新たな商機となろう。経営者は独創的な戦略を立てて復活に結びつけねばなるまい。
(2009年5月18日掲載)