“変わらないこと”が生み出すハーレーの個性と魅力

比較的エントリー向けの「スポーツスター」シリーズ。これは883ccの「スポーツスター883アイアン(XL883N)」、2009年モデル(以下同)(画像クリックで拡大)

スポーツスターは1200ccとの2本立て。これは「スポーツスター1200ロードスター(XL1200R)」(画像クリックで拡大)

 では、二輪車に限らず他のメーカーや業種でも、HDJと同じ戦略が取れるのだろうか? 不可能ではないにしても、簡単ではないだろう。その戦略の根本には、「ハーレーダビッドソン」という商品が持つ強烈なキャラクターがあるからだ。

 ハーレーのバイクの基本的なスタイルは、何十年も変わっていない。販売モデル数は多いが、エンジンは4種類しかなく、ほとんどはデザイン面での違いが主になる。しかし、その“変わらないこと”がハーレーの魅力になっている。より速く、より快適にという、多くの工業製品が評価される価値観とは、別のところにハーレーはいる。そういう商品は決して多くない。

リジット風スタイルのフレームをもつ「ソフテイル」シリーズ。エンジンは1584cc。写真は「ファットボーイ(FLSTF)」(画像クリックで拡大)

ビッグツインのなかで最もスポーティな「ダイナ」シリーズ。エンジンは1584cc。写真は「ダイナ・ローライダー(FXDL)」(画像クリックで拡大)

 変わらないということは、陳腐化しないことも意味する。たとえば、ハーレーの価格はかなり高い。最も安価な「スポーツスター883」でも88万3000円、ビッグツインエンジンを搭載した「ダイナ」「ソフテイル」なら200万円以上が当たり前だ。若いライダーは手が出しづらいと思うかもしれない。しかしHDJは最長で150回もの長期ローンを用意している。期間にして12.5年だが、これならお金に余裕がない人でも購入できるし、実際に多くのユーザーが長期ローンでハーレーを購入している。この長いローンも、「ハーレーなら10年以上乗り続けられる」という裏付けがあってこそ可能になる。

 性能を追求したスポーツバイクなら、毎年何かしらの進化がある。次のモデルはより速く、快適になっている可能性が高い。つまり自分の乗っているバイクは1年も経てば古くなってしまうわけだが、ハーレーにはそれがない。

 蛇足だが、けっしてハーレーが進化していないわけではない。毎年ニューモデルが登場し、数年に一度はエンジンを改良している。2007年には、全モデルがインジェクション(燃料噴射)化を果たした。世界で最も厳しい日本の騒音規制もクリアしている。進化しながら商品価値を変えないのがハーレーなのだ。

大きなカウルをもつ「ツーリング」シリーズ。2009年モデルからフレームを一新した。写真は「エレクトラグライド・クラシック(FLHTC)」(画像クリックで拡大)

1250ccの水冷エンジンを搭載する「VRSC」シリーズ。写真は「V-ROD(VRSCAW)」(画像クリックで拡大)

ハーレーダビッドソンは、専用デザインやスペシャルパーツを施したカスタムモデル「CVO」も発売してる。写真は「ファクトリーカスタム・ロードグライド(FLTR3-CVO)」(画像クリックで拡大)

こちらもCVOのひとつ「ファクトリーカスタム・ウルトラクラシック・エレクトラグライド(FLHTCU4-CVO)」。CVOは“カスタム ビークル オペレーション”の略(画像クリックで拡大)