2006年04月27日
2005年夏、大泉自民と完全に敵対し、厳しい選挙戦を戦わなければならなくなった、亀田衆議院議員は憤っていた。
「俺の選挙区に出てきた、ドザエモンとか言う男、あれなんだ???」
亀田は秘書に怒鳴りつけた。
「彼はライブアドという会社の社長でして・・・・若者に人気があります・・・・」
「くそが・・・大泉め・・・叩き殺したい・・・・あの野郎・・・ドザエモンの周辺を徹底的に洗え、なんか後ろ暗いとこあるだろ」
亀田は警察官僚に絶大なコネクションを持っていた。彼はその人脈を使い、ドザエモンの近辺を徹底的に洗った。しかし、選挙期間中にはなにもつかむことはできなかった。
選挙は亀田が勝利したが、亀田の所属する国民新進党は惨敗であった。
亀田はかつて得ていた権力の大半を失い、国会でも蚊帳の外となりそのプライドも落ちるところまで落ちていた。
憎い。大泉が憎い。大泉は許せない。何かないか、、、
選挙で惨めな敗北をし、失意の中、亀田は同様に大泉に権力を奪われた幾人かの政治家とともに、とあるフリー記者と会っていた。
「先生、あれからドザエモン周辺を徹底的にあらってたんですが、あれですね、あいつ・・・・ダイナシチーって知ってますか?」
「知らない。なんだそれは?」
「まあヤクザまがいの会社ですけど・・・・あそことつながってますね」
「ほー」一同が興味を示した。
「どうもライブアドはヤクザ絡み、そして儲け金は自民の竹部議員にもわたっているらしいです。もちろん竹部だけじゃなく、大勢の現執行部議員に・・・」
亀田の背中に一瞬戦慄が走る。
もしこれが本当であれば、政府を転覆できる。再び権力の中枢に戻れる。
「確かな情報か?」
「確かです」
「俺はドザエモンを調べさせているがなんにもでてこないぞ?出てきてるのはしょうもない財務処理ミス程度のもんだ。」
「ライブアドは全て文書をサーバーに保管してますから。尻尾を捕まえるのはむずかしいですね。でもサーバーさえ押さえれば・・・」
「おい、詳しく教えろ・・・」
時は流れ、
2006年を迎えようとしていた年末、亀田は特捜の事実上の責任者である大鶴田という人物に連絡をとった。大鶴田は亀田の大学の後輩、また、警察庁の後輩にもあたる。
酒を飲みながら、亀田はしばし大鶴田と二人、他愛もない話をした。そしてゆっくりと本題にはいった。
「いやーしかしね。大鶴田君。近頃じゃドザエモンとかいう、輩があくどいことをして儲けている。ゆるせんな。ありゃいかん」
「先輩・・・ドザエモンの件ですが・・・私は彼のような人物は許せないんですよ。もし本当なら額に汗して働く人間が報われない。」
「まあ許せんな。もっと労働者が報われる社会にせんといかんな」
大鶴田は学生運動の世代であり、元運動員であった。
東大時代は教科書よりもマルクス、という典型的な団塊の世代の大学生であった。労働者という言葉に胸が熱くなった。
「でも先輩、去年の選挙のときもドザエモン周辺を徹底的に洗ったんですが、法は犯してないんですよ。あいつは。ずる賢い奴で」
「いやそうでもない」
にこやかだった顔が急に真顔になり、亀田は大鶴田をじっと見た。
「これはある筋の情報だが、ライブアドは違法な株取引で暴力団の資金源になっていて、その金が政治家に流れているっちゅうんだな・・・」
「・・・・まさか・・・去年、我々が調べたときはそんなものでてこなかった。」
大鶴田は冷静にそう答えた。
「いや、サーバーっちゅうのがあってな。よくわからんがそこを見ないと尻尾はつかめんらしい。だが確かだ。じゃなきゃあんな会社が大きくなれるはずがない」
「サーバー?ですか。わかりませんがどういうことです?」
亀田も大鶴田もネットの知識も株式市場についての知識もなかった。
がしかし、二人ともドザエモンが好きではなかった。これは個人的な感想であり、ともに理由は異なれど彼が憎かった。テレビで彼を見るたびに不愉快であった。
大鶴田は動いた。そして、ライブアドの株式市場を利用した錬金術に舌をまいた。
ライブアドは結局のところ、新興市場に上場する新規上場株の売却益で利益を上げ、それによって会社の価値を高めていた。
新規上場株は無闇に高騰する。これは株式の需給の関係でそうなるのであるが、ドザエモンはその株式市場の歪みを最大限に利用していた。
「こいつを、ドザエモンをなんとかこらしめたい。これは正義だ。これが正義なんだ」
大鶴田はここから加速する。
「ライブアドは暴力団に資金提供し、同時に政治家への利益供与をしている」
この思いが彼を動かし続けた。
2006年2月、大鶴田は強制捜査を決定する。
「サーバーさえ押さえれば必ず何か出る」
大鶴田は確信していた。彼のヒロイズムは頂点に達しようとしていた。強制捜査の前夜、部下に伝えた。
「強制捜査の30分前にいっせいにマスコミに伝えろ。そして、六本木ヒルズに報道陣が集まってから、行け。それからしっかりテレビに映れ。車で乗り付けるな。ヒルズには
いるとこをしっかりテレビで流させろ」
大鶴田は興奮していた。正義の味方になれる。そう感じていた。
一方の黒幕、亀田はひっそりと身を隠した。今は自分が出てはいけない。そして大泉政府が転覆することを心から祈った。
強制捜査後、すぐに金融庁幹部から電話が来た。
「どういうことですか。聞いてませんよ。ライブアドは確かにあれですけど、別段違法な取引にはあたらないんです。これは東証とも共通の認識です」
「我々は我々で動きますから」
そう答え大鶴田は金融庁を一蹴した。この後、金融庁は特捜に対しての不快感をマスコミにしゃべったが報道されることはなかった。
強制捜査の翌朝から、株式市場は未曾有の暴落が生じた。元々株に興味のない大鶴田は特に感慨を抱かなかった。
大鶴田はかねてからの計画通り、マスコミを最大限に利用した。
彼の思い、社会主義的な理想論からくる思いはマスコミに受けた。
ドザエモンは悪のイデア、そのようにマスコミに報道させ、日々、情報をリークしていった。
しかし、何日たっても本丸に辿り着けない。何も出てこない。大鶴田、そして特捜全体があせり始めた。
とにかく、起訴だ。粉飾、粉飾の尻尾はあるんだ。まずこれで起訴だ。
ライブアド幹部の宮内川を拘留したのもこの時期だった。財務処理二間して、宮内川が全てのキーを握っていることはわかっていた。
しかし、ドザエモンが「全て宮内川がやったこと」というトカゲの尻尾切りを恐れたため、十分に計画をたて、ドザエモンと引き離すことに注力した。
拘留してみると、宮内川は意外に気の小さい男であった・取調べに大して非常に警戒心を持っていた。
「・・・・・で、お前はドザエモンの指示で粉飾したわけだな?」
「いえ、ですから、なんども申してますように、粉飾という意識はありませんでした・・」
「そんなこときいてんじゃないんだよ。ドザエモンの指示なんだろ?」
「指示っていうか、連結利益の分を会計処理で単体に計上するのはなんの問題もないって会計士の方々も言ってたんですって・・・」
「ドザエモンの指示なんだな?」
取調べは一方通行だった。しかし宮内川は早くココからでたい、という思いだけだった。
「なんでそんなリスキーなことするんですか。粉飾とかになるくらいだったら単体赤字にしますよ。どうせ連結の決算しか重視されないんですから。株主には。なんで僕らが
そんなリスクとる必要あるんですか?粉飾なんてしませんよ」
取調べしているものも一瞬、「そうだよな」と思った。しかし、そんなことを言えるはずもない。
「だからーこういう会計処理をやったのかやってないのかって言ってんだよ!!」
「やったことはやりましたけど、違法性があるとはおもってませんでした・・・」
「やったんだろ!!」
「やったことは・・・」
「やかましい!!お前はやったんだよ。犯罪者なんだよ。有罪なんだよ。ボケが!!」
その日の夜、マスコミに「宮内川、容疑を全面的に認める」というニュースをリークさせた。
しかしただただ日々は流れ、ライブアドからは何も出てこなかった。
地検幹部は大鶴田に言った。
「これやばいんじゃない? 大鶴田さんがあそこまでいうから、協力してきたけど、うちらこれ以上どうにもならんよ。こんなんで裁判して勝てるの?」
大鶴田は何も言わなかった。いえなかった。
このままではまずい。なんとかしなくてはまずい。
ドザエモンは弁護士と日々相談し、来る裁判に対し絶対の自信を持っているように思えた。
大鶴田は地検に働きかけ続けた。ドザエモンからの保釈要求も全てもみ消させた。
4度目に保釈決定となった際に大鶴田は地検幹部にかけよった。裁判官を変えろ、保釈なんてとんでもない、そう言った。
しかし地検サイドは冷静だった。もう大鶴田に未来はない。彼は地雷を踏んでしまった。
自分たちがその片棒を担いでいた後にマスコミにかぎつけられることは非常にマズイ。
大鶴田は考えていた。
株式市場から失われたという数兆円の金。ライブアドはもちろん、それに関係したいくつものなんの罪もない企業が消えた。
これらは全て自分のした事による結果なのだ。
自分のした事は本当に正義だったのか? 一体誰が幸せになったのだろう? 彼らはルールの範囲でやっていただけではないか?
いや違う、法さえ守ればいいというものじゃない、良心がある、彼らは悪どく儲けていたのだ、そうにちがいない、しかし悪かどうかを裁くのが我々なんだろうか?
違う、それを決定するのは法だ、俺は法なのか? ドザエモンが法を犯していないとするなら、俺は一体何をしてしまったんだ?
東京地裁が検察側のドザエモン保釈決定を不服とした準抗告を棄却した夜、
大鶴田は亀田に電話を入れた。
「・・・ご無沙汰しております、大鶴田です、今回はあのー・・・」
「あーもしもし。亀田だが・・・・・・ああ・・・・あのなあ・・・もう電話してくるな。わかったな」
「ちょっと待ってください、あの・・・」
電話は切られた。
「俺の選挙区に出てきた、ドザエモンとか言う男、あれなんだ???」
亀田は秘書に怒鳴りつけた。
「彼はライブアドという会社の社長でして・・・・若者に人気があります・・・・」
「くそが・・・大泉め・・・叩き殺したい・・・・あの野郎・・・ドザエモンの周辺を徹底的に洗え、なんか後ろ暗いとこあるだろ」
亀田は警察官僚に絶大なコネクションを持っていた。彼はその人脈を使い、ドザエモンの近辺を徹底的に洗った。しかし、選挙期間中にはなにもつかむことはできなかった。
選挙は亀田が勝利したが、亀田の所属する国民新進党は惨敗であった。
亀田はかつて得ていた権力の大半を失い、国会でも蚊帳の外となりそのプライドも落ちるところまで落ちていた。
憎い。大泉が憎い。大泉は許せない。何かないか、、、
選挙で惨めな敗北をし、失意の中、亀田は同様に大泉に権力を奪われた幾人かの政治家とともに、とあるフリー記者と会っていた。
「先生、あれからドザエモン周辺を徹底的にあらってたんですが、あれですね、あいつ・・・・ダイナシチーって知ってますか?」
「知らない。なんだそれは?」
「まあヤクザまがいの会社ですけど・・・・あそことつながってますね」
「ほー」一同が興味を示した。
「どうもライブアドはヤクザ絡み、そして儲け金は自民の竹部議員にもわたっているらしいです。もちろん竹部だけじゃなく、大勢の現執行部議員に・・・」
亀田の背中に一瞬戦慄が走る。
もしこれが本当であれば、政府を転覆できる。再び権力の中枢に戻れる。
「確かな情報か?」
「確かです」
「俺はドザエモンを調べさせているがなんにもでてこないぞ?出てきてるのはしょうもない財務処理ミス程度のもんだ。」
「ライブアドは全て文書をサーバーに保管してますから。尻尾を捕まえるのはむずかしいですね。でもサーバーさえ押さえれば・・・」
「おい、詳しく教えろ・・・」
時は流れ、
2006年を迎えようとしていた年末、亀田は特捜の事実上の責任者である大鶴田という人物に連絡をとった。大鶴田は亀田の大学の後輩、また、警察庁の後輩にもあたる。
酒を飲みながら、亀田はしばし大鶴田と二人、他愛もない話をした。そしてゆっくりと本題にはいった。
「いやーしかしね。大鶴田君。近頃じゃドザエモンとかいう、輩があくどいことをして儲けている。ゆるせんな。ありゃいかん」
「先輩・・・ドザエモンの件ですが・・・私は彼のような人物は許せないんですよ。もし本当なら額に汗して働く人間が報われない。」
「まあ許せんな。もっと労働者が報われる社会にせんといかんな」
大鶴田は学生運動の世代であり、元運動員であった。
東大時代は教科書よりもマルクス、という典型的な団塊の世代の大学生であった。労働者という言葉に胸が熱くなった。
「でも先輩、去年の選挙のときもドザエモン周辺を徹底的に洗ったんですが、法は犯してないんですよ。あいつは。ずる賢い奴で」
「いやそうでもない」
にこやかだった顔が急に真顔になり、亀田は大鶴田をじっと見た。
「これはある筋の情報だが、ライブアドは違法な株取引で暴力団の資金源になっていて、その金が政治家に流れているっちゅうんだな・・・」
「・・・・まさか・・・去年、我々が調べたときはそんなものでてこなかった。」
大鶴田は冷静にそう答えた。
「いや、サーバーっちゅうのがあってな。よくわからんがそこを見ないと尻尾はつかめんらしい。だが確かだ。じゃなきゃあんな会社が大きくなれるはずがない」
「サーバー?ですか。わかりませんがどういうことです?」
亀田も大鶴田もネットの知識も株式市場についての知識もなかった。
がしかし、二人ともドザエモンが好きではなかった。これは個人的な感想であり、ともに理由は異なれど彼が憎かった。テレビで彼を見るたびに不愉快であった。
大鶴田は動いた。そして、ライブアドの株式市場を利用した錬金術に舌をまいた。
ライブアドは結局のところ、新興市場に上場する新規上場株の売却益で利益を上げ、それによって会社の価値を高めていた。
新規上場株は無闇に高騰する。これは株式の需給の関係でそうなるのであるが、ドザエモンはその株式市場の歪みを最大限に利用していた。
「こいつを、ドザエモンをなんとかこらしめたい。これは正義だ。これが正義なんだ」
大鶴田はここから加速する。
「ライブアドは暴力団に資金提供し、同時に政治家への利益供与をしている」
この思いが彼を動かし続けた。
2006年2月、大鶴田は強制捜査を決定する。
「サーバーさえ押さえれば必ず何か出る」
大鶴田は確信していた。彼のヒロイズムは頂点に達しようとしていた。強制捜査の前夜、部下に伝えた。
「強制捜査の30分前にいっせいにマスコミに伝えろ。そして、六本木ヒルズに報道陣が集まってから、行け。それからしっかりテレビに映れ。車で乗り付けるな。ヒルズには
いるとこをしっかりテレビで流させろ」
大鶴田は興奮していた。正義の味方になれる。そう感じていた。
一方の黒幕、亀田はひっそりと身を隠した。今は自分が出てはいけない。そして大泉政府が転覆することを心から祈った。
強制捜査後、すぐに金融庁幹部から電話が来た。
「どういうことですか。聞いてませんよ。ライブアドは確かにあれですけど、別段違法な取引にはあたらないんです。これは東証とも共通の認識です」
「我々は我々で動きますから」
そう答え大鶴田は金融庁を一蹴した。この後、金融庁は特捜に対しての不快感をマスコミにしゃべったが報道されることはなかった。
強制捜査の翌朝から、株式市場は未曾有の暴落が生じた。元々株に興味のない大鶴田は特に感慨を抱かなかった。
大鶴田はかねてからの計画通り、マスコミを最大限に利用した。
彼の思い、社会主義的な理想論からくる思いはマスコミに受けた。
ドザエモンは悪のイデア、そのようにマスコミに報道させ、日々、情報をリークしていった。
しかし、何日たっても本丸に辿り着けない。何も出てこない。大鶴田、そして特捜全体があせり始めた。
とにかく、起訴だ。粉飾、粉飾の尻尾はあるんだ。まずこれで起訴だ。
ライブアド幹部の宮内川を拘留したのもこの時期だった。財務処理二間して、宮内川が全てのキーを握っていることはわかっていた。
しかし、ドザエモンが「全て宮内川がやったこと」というトカゲの尻尾切りを恐れたため、十分に計画をたて、ドザエモンと引き離すことに注力した。
拘留してみると、宮内川は意外に気の小さい男であった・取調べに大して非常に警戒心を持っていた。
「・・・・・で、お前はドザエモンの指示で粉飾したわけだな?」
「いえ、ですから、なんども申してますように、粉飾という意識はありませんでした・・」
「そんなこときいてんじゃないんだよ。ドザエモンの指示なんだろ?」
「指示っていうか、連結利益の分を会計処理で単体に計上するのはなんの問題もないって会計士の方々も言ってたんですって・・・」
「ドザエモンの指示なんだな?」
取調べは一方通行だった。しかし宮内川は早くココからでたい、という思いだけだった。
「なんでそんなリスキーなことするんですか。粉飾とかになるくらいだったら単体赤字にしますよ。どうせ連結の決算しか重視されないんですから。株主には。なんで僕らが
そんなリスクとる必要あるんですか?粉飾なんてしませんよ」
取調べしているものも一瞬、「そうだよな」と思った。しかし、そんなことを言えるはずもない。
「だからーこういう会計処理をやったのかやってないのかって言ってんだよ!!」
「やったことはやりましたけど、違法性があるとはおもってませんでした・・・」
「やったんだろ!!」
「やったことは・・・」
「やかましい!!お前はやったんだよ。犯罪者なんだよ。有罪なんだよ。ボケが!!」
その日の夜、マスコミに「宮内川、容疑を全面的に認める」というニュースをリークさせた。
しかしただただ日々は流れ、ライブアドからは何も出てこなかった。
地検幹部は大鶴田に言った。
「これやばいんじゃない? 大鶴田さんがあそこまでいうから、協力してきたけど、うちらこれ以上どうにもならんよ。こんなんで裁判して勝てるの?」
大鶴田は何も言わなかった。いえなかった。
このままではまずい。なんとかしなくてはまずい。
ドザエモンは弁護士と日々相談し、来る裁判に対し絶対の自信を持っているように思えた。
大鶴田は地検に働きかけ続けた。ドザエモンからの保釈要求も全てもみ消させた。
4度目に保釈決定となった際に大鶴田は地検幹部にかけよった。裁判官を変えろ、保釈なんてとんでもない、そう言った。
しかし地検サイドは冷静だった。もう大鶴田に未来はない。彼は地雷を踏んでしまった。
自分たちがその片棒を担いでいた後にマスコミにかぎつけられることは非常にマズイ。
大鶴田は考えていた。
株式市場から失われたという数兆円の金。ライブアドはもちろん、それに関係したいくつものなんの罪もない企業が消えた。
これらは全て自分のした事による結果なのだ。
自分のした事は本当に正義だったのか? 一体誰が幸せになったのだろう? 彼らはルールの範囲でやっていただけではないか?
いや違う、法さえ守ればいいというものじゃない、良心がある、彼らは悪どく儲けていたのだ、そうにちがいない、しかし悪かどうかを裁くのが我々なんだろうか?
違う、それを決定するのは法だ、俺は法なのか? ドザエモンが法を犯していないとするなら、俺は一体何をしてしまったんだ?
東京地裁が検察側のドザエモン保釈決定を不服とした準抗告を棄却した夜、
大鶴田は亀田に電話を入れた。
「・・・ご無沙汰しております、大鶴田です、今回はあのー・・・」
「あーもしもし。亀田だが・・・・・・ああ・・・・あのなあ・・・もう電話してくるな。わかったな」
「ちょっと待ってください、あの・・・」
電話は切られた。
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