フランスで製造された「プルサーマル発電」用のMOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を積んだ輸送船が18日午前、静岡県御前崎市の御前崎港中部電力専用ふ頭に着いた。約5キロ離れた同市内の浜岡原発に運び入れる準備が始まり、横断幕を掲げた地元の市民団体のメンバー数十人が「プルサーマルやめろ」と陸揚げに抗議した。市民団体によると、輸送船は午前6時過ぎ港内に入り、同6時半ごろ着岸した。
輸送船は英国籍で3月5日、仏北部シェルブール港を出港。御前崎港が最初の陸揚げ港で、この後、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)向けのMOX燃料を陸揚げする予定。MOX燃料を一般の原子力発電所で燃やすプルサーマル発電は、今秋にも玄海原発で通常運転が始まる見通し。【舟津進】
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■解説
プルトニウムを原子力発電所で燃やす「プルサーマル発電」用の核燃料を積んだ輸送船が到着した。プルサーマル実施について、国や電力業界は「60年代から欧米で行われている方法」として10年度までに16~18基の原発で導入を目指している。しかし、核燃料サイクル技術が未完成で、安全性確認を含め課題は山積している。
プルサーマルは、使用済み燃料に含まれ、まだエネルギーが出せるプルトニウムを取り出してMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して使う方法だ。プルトニウムは本来、高速増殖炉用の燃料と想定されたが、原型炉「もんじゅ」の開発が難航。国の「兵器転用可能なプルトニウムは使い切る」との政策を受け、代替策として計画された。
しかし、使用後のMOX燃料の処理は解決していない。国の計画では、高速増殖炉用の「第2再処理工場」が45年ごろに稼働するまで、各原発の敷地内に長期間貯蔵される計画だが、通常の使用済み燃料より高温で、寿命の長い核分裂物質を含む。
核燃料の扱いは、海外でも技術的・政治的にさまざまな変遷がある。日本の政策に柔軟性を持たせることも大切だ。【山田大輔】
毎日新聞 2009年5月18日 東京夕刊