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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

「米国の謝罪すべき行為に叱責はあったか」

 下院外交委員会での慰安婦決議案(下院決議案121号)の表決は賛成39票、反対2票だった。この数字だけをみれば、圧倒的多数での採択ではあるが、実際にはこの種の拘束力なしの決議案に少数でも明確な反対票が出ることは珍しい。重要な法案の採決とは異なり、議長役が「賛成ですね」と声をかけ、一般議員側も「イェイ(はい)」と発声して、全会一致とみなされるのが普通なのだ。だが今回の決議案はそうは扱われなかった。それだけ問題点が認識されているのだともいえよう。

 この採決から2週間後の7月9日、イノウエ議員が上院本会議で声明を出した。下院がこれから本会議で採決しようとする慰安婦決議案への正面からの反対だった。本会議での演説に等しい声明だった。そもそも上院議員が下院での案件に正面から意見を述べること自体がきわめて異例である。

 その声明の総括といえる部分をまず紹介しよう。

 「これらの出来事(慰安婦の存在など)は1930年代と40年代に起きた。そしてそこでの悪習に対する認知と謝罪は1994年以来の日本の歴代首相によりなされてきた。
 わたしは米国が認知し、謝罪すべき過去の出来事を多数、想起できる。だが米国政府はそうした行為を認知せず、他の諸国も米国を公式に叱責することはない」

 イノウエ議員は米国も過去には政府が謝罪すべき行為はとっているのに、謝罪はしていないではないか、と率直に述べているわけだ。だから日本にそんな謝罪を求めることには反対だと言うのである。

 同議員はそうした過去の事例として、日米開戦の直後に米国政府がチリやペルーなどの日系人を拘束し、米国本土へと連行して留置したことを挙げた。米国はまだその被害者たちへの賠償や謝罪の立法措置をとっていないし、そのことを他の国の議会や政府が抗議して、米側に謝罪を求めたこともない、と強調した。米国政府が戦時中に米国自身の日系市民を収容所に入れた「悪」についても、イノウエ議員は外国がそのことを叱責し、米国の大統領に謝罪を要求することはない、と言明したのだった。そして以下のように論じていた。

 「もし他の諸国の立法府が米国の第二次大戦中の歴史上の行動を糾弾したとすれば、米国政府はどう反応するだろうか。友好国や同盟国同士の外交上の儀礼では、こうした案件の処理には深慮と慎重さが求められるのだ」

 イノウエ議員はそこで改めて、慰安婦問題について日本は既に歴代首相の謝罪とアジア女性基金を通じての被害者への賠償金支払いにより、十分な対応をとった、と述べて、今回の決議案への反対を明確にした。

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