新型の豚インフルエンザの感染者が世界各地で確認されている影響で、日本人研究者が海外の学会を欠席したり、日本国内で予定されていた国際的な学会が急きょ中止されたりするケースが出ている。仲間に冷静に対応するよう求めている研究者もいる。
「科学的な判断が可能な皆様には、過剰反応ではない客観的な判断をお願いします」。レーザー技術の日本人研究者ら約190人に最近、こんな電子メールが届いた。31日から米国メリーランド州で開かれる国際学会への参加を呼びかけるためだ。
メールには、米国にいる学会関係者が、日本の研究者の学会欠席が目立つと指摘していることが書かれていた。他国の研究者にそのような動きはないらしく、「なぜ日本だけが……」と不思議がられ、新型インフルエンザを「トウキョウフルー(東京インフルエンザ)」と呼ぶ現地の研究者もいるという。
この学会に参加する電気通信大の植田憲一教授は「日本からだけ大量のキャンセルが出る事態になると、国際舞台での日本の存在感が下がることが心配だ」と話している。
感染防止のため、教員や学生に渡航の自粛や制限を呼びかける大学も増えている。
東京大は4月末、全学生と教職員に発生国への渡航自粛を要請した。期間は「当分の間」。5月5日に予定していた南米チリの東大アタカマ天文台の開所式も延期した。発生国からの帰国者は10日間は体温を記録し、大学内ではマスクをするよう求めている。
ほかにも、北海道大、東北大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大が渡航の自粛や禁止を決めている。
一方、東京都千代田区の城西国際大学キャンパスでは、21〜24日に予定されていたアメリカ映画・メディア学会の東京大会が中止された。32カ国から出席する予定だった約750人のうち、3分の1が欠席を申し出たからだ。
同大メディア学部によると、米国の学会事務局が、日本に行く国際便で新型インフルエンザの患者が出た場合、ホテルで足止めされる可能性があることを告げて出欠を取り直したところ、一気に欠席が増えたという。東京大会は50周年記念大会で、同大キャンパスではシンポジウムや上映会が予定されていた。