国内での感染拡大が続く新型インフルエンザ。九州でも自治体などが地元での感染拡大を想定して準備を進めているが、医療現場では混乱や不安の声も上がっている。
「38度以上の熱がある方は診察できません」。18日朝、福岡市城南区の内科医院を家族と訪れた男子高校生(17)は受付でそう告げられた。「発熱相談センターにご相談ください」
高校生の家族はすぐに福岡県保健衛生課に電話。担当者は海外渡航歴がなく、兵庫県や大阪府にも行っていないことを確認し「通常の医療機関で問題ない」と回答した。家族は再び内科医院に連絡したが、答えは同じだった。高校生は結局、発熱外来のある市内の別の病院を受診。B型インフルエンザと分かった。
各自治体は発熱などを訴える市民に、まず「発熱相談センター」に相談するよう呼び掛け、新型インフルエンザ感染が疑われる場合は発熱外来の受診を勧めている。
では、どのような場合に「感染が疑われる」のか。厚生労働省の定義によると(1)38度以上の発熱または急性呼吸器症状(鼻汁、のどの痛み、せきなど)がある(2)7日以内にまん延国または地域に滞在(3)感染者と接触‐となっている。一方で厚労省は発熱外来を設けていない一般の医療機関に「発熱相談センターの指導に従って発熱者が受診した場合は診察すること」と通知している。
だがこれらは国内感染の発生前の段階。福岡県医師会幹部は厚労省の定義について「見直しが必要な段階に入ったのでは」と発熱外来の対象拡大の必要性を指摘。一般医療機関での受診について「感染すれば重症化が懸念される慢性疾患患者や妊婦などを抱える医療機関では難しい」と話す。
だが、国内での感染拡大を受け、医療現場からは逆の不安も漏れる。
熊本市で唯一の感染症指定医療機関の熊本市民病院は地元で感染が拡大した場合、患者の集中が予想されるが、隔離病室の数に限界があり「他の病院にも協力をお願いする」。北九州市医師会も「医師や看護師が不足する可能性がある」と懸念する。
佐賀県では県内で感染拡大の場合、医師会全体で応援態勢を取ることを決めているが、同県医師会は「経済的補償やタミフルの予防投与をどうするか。国や県は考えてほしい」と話した。
=2009/05/19付 西日本新聞朝刊=