毎日新聞が16、17日に緊急実施した全国世論調査結果は、小沢一郎前代表辞任後の代表選を終えたばかりの民主党を安堵(あんど)させた。代表選前の前回調査(12、13日)で鳩山由紀夫新代表への世論の支持が低かった影響や「小沢かいらい」批判が新体制の船出に水を差すことを懸念していたからだ。民主党は「小沢辞任」効果で党勢回復の足がかりを得る一方、鳩山新代表の就任に歓迎ムードもあった与党側には衝撃が走った。【田中成之、高山祐】
「挙党一致体制で行けば政権交代できるという確信を得た」
民主党代表選で鳩山氏を支持した輿石東参院議員会長はこう語った。党内から「想像を超えた」(若手議員)との声も漏れた好結果。他の野党幹部は「ご祝儀相場とはいえ、これほど(民主党への期待が)高まるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。
次期衆院選で民主党の勝利を期待する回答が50%を超えたのは、同じ質問を始めた07年8月以降、麻生内閣の支持率が11%に落ち込んだ今年2月と、ガソリン税の暫定税率を復活させる法案を与党が再可決した直後の08年5月の51%のみ。今回の56%はこれまでの最高値を5ポイント上回った。
民主党の支持率も30%に達し、参院選で大勝した直後の07年8月の33%に次ぐ水準。「支持政党なし」と答えた無党派層では、衆院選で民主党の勝利を期待する回答が54%で、自民党の17%の3倍以上に達した。
ただ、党内には「この3カ月の浮き沈みは特に激しい。油断できない」「まだ何もしてないのに、なんでこんなにいいのか」と楽観を戒める声も出る。
その材料の一つが鳩山氏への期待度だ。世論調査では「期待する」と「期待しない」がそれぞれ49%と、文字通りの「期待半分」。民主党への評価が「上がった」との回答も17%にとどまった。
背景には、代表選前の毎日新聞の世論調査で岡田克也副代表の人気が鳩山氏を上回ったことなどからくる鳩山氏の「不人気」イメージに加え、小沢前代表の後継色が強いことへの「かいらい」批判の影響がありそうだ。
とはいえ、代表選を終えて地元に戻った議員たちは、小沢氏の公設秘書が逮捕・起訴された西松建設事件以降の「足かせ」が代表交代でとれたと感じているようだ。若手議員は「小沢問題のけりがついて良かったという反応が(支持者の)最大公約数」と話し、新人候補は「すっきり選挙運動に取り組める」と喜んだ。
一方、与党側にあった鳩山新代表への歓迎ムードは「政権交代」を求める民意の強さの前に吹き飛んだ。麻生太郎首相のもとで衆院選を戦うことへの懸念も再燃し「早期の衆院解散はとてもできない」(公明党幹部)との声も出ている。解散時期を巡り麻生首相はさらに厳しい判断を迫られることになった。
自民党の細田博之幹事長は17日、島根県斐川町の出雲空港で、鳩山氏の人気について「代表選出のご祝儀的なものがあるのではないか」と述べ、あくまで一時的なものとの認識を強調。ただ、自民党の政党支持率は民主党に逆転を許し、上昇機運にあった内閣支持率も微減に転じた。調査結果を聞いた自民党幹部は数字を聞き直し、一様に絶句した。
衆院選のカギを握りそうな無党派層の回答をみると、内閣支持率は10%に低迷し、鳩山氏の方が首相にふさわしいと25%がみている。ある派閥領袖は「党内には『麻生降ろし』のエネルギーも残っていない。傷が浅いうちに早く解散した方がいい」と述べたが、公明党幹部は「国会で民主党のあやふやな財源論や『小沢院政』批判を展開し、当面は様子を見るしかない」と漏らした。
毎日新聞 2009年5月17日 21時39分(最終更新 5月18日 6時25分)