新型インフル対策、全国一律の対応にならず−感染研・岡部氏
新型インフルエンザ感染者の国内発生を受け、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は5月17日に記者会見し、政府の新型インフルエンザ対策本部が16日に示した「『基本的対処方針』の実施」を例に、今後の医療体制などについて説明した。
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抗インフル薬の適正使用など重要―感染研・岡部センター長 「『基本的対処方針』の実施」によると、今回の新型インフルエンザでは、多くの患者が軽症で回復している一方、糖尿病など基礎疾患のある人を中心に、重症化する傾向や死亡例も報告されているとし、今後は感染拡大を防ぐほか、重症化しやすい人への対応を強化するとされている。
政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づく対応は、16日に「第一段階」(国内未発生期)から「第二段階」(国内発生早期)に引き上げられた。この段階での最大の目標として、軽症・重症を問わずすべて検査し、感染が強く疑われる例では措置入院を行って、感染拡大を防止するとされているが、多くの軽症例が発生する「第三段階」(まん延期)では、病院における治療は重症例のみに集中すべきとされているほか、一般の医療機関も含めて治療に対応するとされている。
岡部センター長は、今後地域ごとに発生状況が違ってくると指摘。その上で、「ある地域でばらばらと患者が発生する状況では、隔離入院は意味がなくなるが、まだ一人も感染者が出ていない地域で、同じく隔離入院をやめてしまうのは、その地域の予防対策にならない」とし、その場合、軽くても重くても入院措置を取る必要があるため、全国一律の対応にはならないと説明した。
抗インフルエンザ治療薬の使用については、「第二段階」では、治療以外にもタミフルなどを濃厚接触者やウイルスに暴露した疑いのある医療従事者、初動対応者などを対象に、予防投与を行うとされている。一方、「第三段階」に移行した場合は、治療を優先するため予防投与は基本的に行わないが、家族などに感染で重症化しやすい人が含まれる場合などは、例外的に予防投与があり得るとされている。
岡部センター長は、「治療薬がなくなった時、国民の不安感は強くなる」と強調。薬を有効に使うためにも、症状の出ている人から優先的に使うと述べた。
また、感染者がどの段階でウイルスを人にうつす心配がなくなるのかについて岡部センター長は、遺伝子を見るPCR検査では、感染力が消えても遺伝子が残るために陽性反応が出るとし、回復したかどうかは判断しにくいと説明した。ただ、「経験的に、熱を中心にした症状が出て2日くらいたてば、ほとんどの場合、感染力がなくなる。ある程度症状が消失していれば、常識的に考えてうつらないだろう」と述べた。
今後のサーベイランスについては、「感染が広がってくれば、症状のみが疑いのきっかけになる。サーベイランスも一つ一つ丁寧に行うわけにはいかなくなる」と述べた。検疫については、「水際対策は時間を稼げたのではないか」と評価しながらも、「既に国内で発生した以上、縮小に入るのではないか」と述べた。
国内でどのくらい発生が続くかについては、現段階で一概には言えないが、5月の発生ということから常識的に考えると、ある程度静まっていく可能性があるとしながらも、「この状況で収まるというのは楽観的な見方」とし、「秋にかけてわれわれは準備をしていく必要がある」と述べた。
更新:2009/05/18 17:16 キャリアブレイン
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