太陽電池が生む電力は直流。交流に変換せず使えば利用効率が高まる。そこで、直流と交流の2系統で給電する住宅用システムの開発が始まった。安全性の確保が課題。電気自動車を「蓄電装置」としても使う構想も。
景気対策と環境対策を結びつけ、日米で推進されるグリーンニューディール政策。日本では太陽光発電の普及が柱になると見られている。補助金の導入など政府の支援により、一般の住宅でも設置が増えそうだ。
消費電力が低い機器に
そこで浮上してくるのが「直流」というキーワードだ。電力会社から供給され、多くの家電製品で利用している電力は交流。そして、太陽電池が生み出す電力は直流である。この直流電力をそのまま利用できるようにする家庭用システムの開発が進んでいる。
その1つが、パナソニック電工が開発する「AC(交流)/DC(直流)ハイブリッド配線システム」だ。交流と直流の2系統で電気機器に電力を供給する。従来の交流用に加え、直流用の分電盤と配線を併用するのが最大の違いである。交流用の分電盤が冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどに電力を供給するのは従来と変わらない。一方、太陽電池が生む直流電力は、専用の分電盤からLED(発光ダイオード)照明や火災報知器、防犯機器など、比較的、消費電力が小さい機器へと供給される。
現在の太陽光発電システムは直流を交流に変換して使っている。それをわざわざ2系統に分けて直流のまま利用しようとするのは、電力の利用効率が高まり、省エネにつながるからだ。
交流と直流を変換する際、一般に5〜10%程度のエネルギーロスが発生する。にもかかわらず、電力会社の交流電力を機器内部で直流に変換して使っている電気製品は数多い。例えば、テレビやパソコンなどのデジタル家電は、内部の部品がほとんど直流で動いている。照明器具も今後普及する低消費電力のLED照明は直流である。
エアコンや洗濯機など、インバーターを内蔵する家電はさらに複雑だ。省エネ製品で広く使われるインバーターは、直流を交流に変換する装置である。変換の際に特別な制御をしてエネルギーの利用効率を高めている。ただし、電源は交流用なので、「交流→直流→交流」と2度の変換をすることになり、各段階でエネルギーをロスしていた。
このように、直流対応で省エネできる電気製品は多い。大型コンピューターで企業のデータベースの運用を請け負うデータセンターでは、直流電源を使っているところもある。
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