2007-09-23 13:16:53

分類不能の発達障害

テーマ:広汎性発達障害、アスペルガー症候群
今年の始め頃にうちの病院に転院して来た患者さんの処方。さて、診断は何でしょうか?

リスパダール 2mg
テグレトール 200mg
リーマス100  200mg
アキネトン   2mg
メトリジン   4mg
リズミック   1T

セレネース 3mg
ヒルナミン 50mg
バルネチール 100mg
ベゲタミンA    1T
ユーロジン 2mg
リボトリール 0.5mg
メトリジン    2mg  (コントミン換算475mg)
他下剤。


紹介状には、とりあえず診断は統合失調症にしているが、発達障害かもしれないと書かれていた。この処方はともかく、前医とその病院はけっこう良いのではないかと感じた。病院が良いと思った理由は、ジェネリックが全然ないことと、本人に聞いた範囲ではユーティリティなどが充実しているような感じだったこともある。前医が良いという理由だが、この患者さんを診始めてから期間がないみたいだし、多剤併用ではあるけどコントミン換算値はたいした量ではない。普通、紹介状の内容を見ればそういうのはだいたいわかる。

最初、この処方は長く治療してこういう結果なので、すぐに手が付けられないと思った。こういうのを急激に変更しようとすると、ほぼ悪い結果になる。しばらくは変えないで様子をみていた。この処方では、メインはたぶんリスパダールなのだろうと思う。475mgのうち200mg分だし。しかし本人の様子をみると、この量でも明らかに副作用が出ていて、パーキンソニズムのためネアンデルタール人のようになっていた。

この人の診断だが、僕の感覚だと明らかに統合失調症ではない。では何なんだと言われると困るが、知的発達障害を背景とする不適応みたいなものと思った。しかし知的発達障害というには微妙な知能なので僕は診断を保留したのである。

一時、アスペルガーかもな~と思っていた時期もあるが、こういう人はアスペルガーと言うべきではないと思うようになった。昔風には「知的発達障害」そうでなければ、「分類不能の発達障害」とでもいえるのかもしれない。DSM4の本を探すと何か診断名が転がっていそうな気もする。

この程度の量でこの副作用なのは、発達障害だから薬に弱いのだと思う。彼に勉強のことなど聞くと、あまりアスペルガー的ではなかった。運動はやっていたが、上手いとも下手だともいえないくらい。

この患者さんは幼少時に虐待を受けているため、一見、アスペルガーに見えるような気がしている。虐待を受けていた人は、そんな風に見えやすいところがあるからだ。

知的発達障害は生来性のものに限らず、後天的な悪条件(虐待、就学させない親、大きな外傷など)による発達の遅れもこれに含めている。一般人にはそうは思われていないけどね。アスペルガー症候群は幼少時は自閉症の診断基準を満たす人がけっこう多い。その後、成長とともに発達が追いつき知能的にはけっこうな水準になる。これは学習障害(LD)との大きな違いだ。LDは後天的に教育、学習がうまく吸収できないため、IQ的にはアスペルガーとは逆の推移になるのである。

この患者さんの場合、幼少時からさんざん虐待を受けた上に、その後ずっと孤児院に入れられていた。だから、元々生来性に何かあったとは言い辛いと思う。その当時を見ていないけど。

不適応を起こして以降、自殺未遂、暴力、器物破壊などがあり入院後は保護室などにも入れられていたこともある。長期に入院していたが、偶然うちの病院に転院することになった。上の処方の問題点があるとすれば、何をもって治療しようとしているのか、焦点がぼけていること。これじゃ、どの薬がどの程度、治療に関与しているのかさっぱりわからない。

この処方でもなかなか眠れず追加眠剤が必要だった。僕はこの不眠に関しては、何かあわない薬が悪影響を及ぼしていると思った。薬を整理すればかえって眠れそうなのである。リスパダールとセレネースはたいした量ではないのに、筋強剛などが出現しているので、やがては止めないといけないだろう。不眠の原因もこの2つのどちらかが悪いように思える。

ただ、この処方は変更しにくいのである。なんとなく。まずセレネースを漸減してリスパダール以外の薬物で治療をしようと思ったが、いかにも必要がなさそうな薬をまず減らした。それはリーマスとバルネチールである。これをデパケンRに置き換え、ついでにテグレトールを消去。これはうまくいった。最終的にはリボトリールもいらないと思ったが、これはアカシジアを緩和していると思ったのでそのままにした。

セレネースとリスパダールだけど、きっとこの人には絶対量が多すぎるのだろう。なぜリスパダール単剤でないんだろう?という疑問はあった。セレネースを減量しつつ、リスパダール以外の非定型を順番に使ってみた。

最初、ジプレキサ、エビリファイ、セロクエルなどで試行錯誤した。特にエビリファイは酷かった。僕は一発殴られたのである。だいたい、かつて虐待を受けているような人は往々にしてその人も暴力的だったりする。暴力的なところはアスペルガーに似ている。空気を読まないところも。この人はかつて器物破壊とか暴力、自殺企図などすべてあるのである。(このあたりが統合失調症的でないところ)エビリファイは浮上させるけど、彼の場合、エネルギーが良くない方向に行ってしまう。

なぜ殴られたかというと、開放病棟から閉鎖病棟に移動を告げた時。ちょっと油断していた。右フックが決まったが、むしろ膝を蹴られたのが痛かった。翌日はひっかるように感じになり、うまく歩けなくなったのである。

必死で治療している人をボコらないでよ。

と言いたい。だからといって、薬漬けにするわけにはいかんしのう。

基本的にリスパダールはともかく、他の非定型抗精神病薬はうまくいかないことがわかった。リスパダールにしても、ネアンデルタール人が解消しないので、もちろん良くはない。

こういう抑うつ気分を伴う統合失調的な症状を持つ患者さんは、古典的定型薬のクレミンやクロフェクトンなどが合うケースがある。これでわりと何とかなる一群の患者さんがいる。仕方がないので、デパケンR、クレミンで治療することにしたのである。

結果だが、素晴らしいほどクレミンがフィット。75mgまで漸増してリスパダールも中止。クレミンはわりあいセロトニン2Aに関与しているが、それでも副作用のためアキネトン(タスモリン)が必要になる人がいる。まあ量にもよるが。現在はこのような処方になっており、現時点ではクレミンはこれ以上減らせないように思っている。レボトミンは5mgか、あるいは必要ないかもしれない。このあたりはまだ漸減中なのである。

クレミン 75mg
デパケンR  400mg
アキネトン   2mg
メトリジン   2mg

レボトミン 50mg
ロヒプノール  2mg
レンドルミン  0.25mg (コントミン換算277mg)
他下剤。


この処方で彼は十分眠れるようになったのである。追加眠剤は現在は必要ない。多剤併用が緩和しており、ようやくネアンデルタール人も卒業。今は開放病棟で加療しているが、かなり落ち着いた状況が数ヶ月続いている。最近は病棟の友人と一緒に外出して食事をしてきたりもしている。転院して約8ヶ月、順調に整理できたと言える。彼はもしエビリファイが合ったなら、主剤がエビリファイ6mg、トロペロン1~3mgくらいになっていたと思うよ。これはこれでけっこう良い処方だと思う。まあ仮定の話だけど。

紆余曲折あったけど、なんとかうまくいって良かったよ。

参考
初診時精神所見
内因性うつ病(非定型の色彩を伴う)
多剤併用についての話




コメント

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2 ■お尋ねします。

kyupin先生。今回は大変でしたね。
お尋ねします。Hクリニックというところにかかっている境界性人格障害のものです。ちょっとしんどくなって、O病院というところを紹介されて、入院してきました。Hクリニックでは、自立支援の申請に、「統合失調症」という病名で出していましたが、O病院で、このブログに「統合失調症には使えない」とあったマイスリーを処方されました。近々、Hクリニックに戻る予定なのですが、マイスリー、処方してもらえるでしょうか?あと、以前頭痛外来からもらっていたリボトリールも、寝る前にだしてもらいたいな、と(O病院では言い忘れた)思っていますが、これも大丈夫でしょうか?
kyupin先生の書かれている「病名」とは、保険病名、診断病名、どちらなのでしょうか?また、この両者はどう違うのでしょうか?質問攻めで申し訳ありません。

3 ■追記

リボトリールは、肩こり・頭痛の予防薬としてもらっていましたが、金銭的に苦しくて、もう頭痛外来へはいけません。

4 ■自分まで

少し嬉しくなりました*  殴られた事をさらっと書かれているところが、逆に痛々しく感じました‥(-_-)

5 ■多剤併用

素人ゆえに勝手なことを言いますが、多剤併用にも限度というものがあるのではないかと…。この方の最初の処方は??です。診断というか症状に対する処方の対応が宙に浮いているように感じます。CP換算はいいとして、スタビライザーに煩い自分としてはテグレトールとリーマスがちょっぴりずつというのは理解不能です。暴力防止にテグレトール多めとか、どちらか片方が400mgならともかく。浮き沈みが激しい患者さんなんでしょうかね?虐待や不幸な育ちなどPTSD的色彩は濃厚ですね。こういうタイプの人は一番信用している人を傷つけたりしますよね。^^;それで誰を信用しているかが逆にわかったり…。

ところでセレネースとリスパダールが併用されている例をよく見かけますが、両者とも性格的には似ているので片方に統一しようというのは一般的な考え方ではないんでしょうか?いつも不思議に思えて。(kyupin先生の処方にはなかったと思います。)

この患者さんは抑うつ気分があるので理解できますが、クレミンは結構感情を煽るとも聞きます。用量によっては暴力的になったりすることもありますか?

ともあれ、またもや鮮やかなお手並みです。嘆息。

6 ■>>アンブローシア

統合失調症の患者さんはあんがい備品の破壊をすることはありません。備品とは、絵などを言います。

僕は殴られるほうも油断していたのが悪いと言う考え方です。

7 ■>>妹尾

なんとなく怖いのでリンクは開きませんでした。

8 ■>>ななこ

マイスリーはうつ病や統合失調症には処方できないことになっていますが、この制約は県により差があるような気がします。審査する人の裁量によるということです。

マイスリーを処方した以上、レセプト的には「統合失調症」や「うつ病」の診断はできません。特にうちの県では。マイスリーは一般にはレセプト的な制約が大きいのです。

リボトリールにせよマイスリーにせよ、レセプト的な診断をうまく書ければ良いのですが、そうもいかないことが多いのです。(このブログでも過去ログで出てきます)

うちの県では、ジプレキサとマイスリーは併用不可能です。なぜなら、整合性のある診断名がつけられないから。併用禁忌でもなんでもないのですが。

9 ■>>ブミ

テグレトール400~600mgはたぶん副作用で処方できなかったような気がしています。だいたい、この患者さんはテグレトールの単剤では片付きません。理由は幻覚妄想があるからです。テグレトールとかリーマスが中途半端な少量になっているのは増やせなかったのと、中止するのも怖かったからと推測します。

PTSDですが、この人は生まれて以来、本当に信頼できる人がほとんどいなかったのではないかと思うのです。だからこんなパーソナリティではないかと。まあ深いところはわかりませんが。

リスパダールとセレネースの併用ですが、僕はあまりしません。どちらか1本にすることが多い。ただ、僕はわりあい多剤併用も抵抗がないタイプなのです。一応、多剤併用も考えてやっているつもりなのですが。

10 ■>>補足

リスパダールとセレネースが中途半端に併用になっている理由ですが、ある時幻覚妄想が再燃したときなどに追加されたものと思います。セレネース3mgは少ない量なので追加しやすいのです。その気持ちは僕は精神科医なのでよくわかる。

クレミンは、クロフェクトン、エビリファイ、ジプレキサほどは煽りません。感情は持ち上げますが、興奮はやや抑えるといった印象です。これは量にもよります。微量だと違う結果になるような気もします。

クレミンを中止せざると得ないケースは、副作用か効果が思わしくない場合です。

11 ■>多剤併用 補足

誤解なきよう敢えて書いておきますが、僕は単剤主義者(医者でもないのにw)ではありません。ただ、リスパダールとセレネースの併用にどのような積極性があるのかな?と疑問に思ったのです。作用・副作用によってどちらかに絞れると思うので。

kyupin先生の大胆な多剤併用(今回の例も)にも、非定型抗精神病薬の少量投与にもどちらも多大な敬意を持っております。(^o^)丿

12 ■ネアンデルタール人

このエントリ中のネアンデルタール人
とはどういう意味でしょうか????

13 ■保険病名

ありがとうございます。
ところで、「境界性人格障害」という保険病名はありえるのでしょうか?自分のカルテがどうなっているのかわからないものですから・・・。

14 ■認知行動療法

統合失調症治療薬を服薬しています。医療従事者ではない方に、治療薬を極少量にしていただき、認知行動療法を勧められました。これは果たして有効でしょうか?横レスで申し訳ありません。

15 ■保険病名

保険病名を変えることは難しいことでしょうか?

16 ■リタリンの問題について

kyupin先生はじめまして。
以前からブログを拝見させて頂いております
昨今報道にありますリタリン問題について先生の所感をお聞かせ頂けないでしょうか
リタリンは私も一時、少量を服用し社会復帰を果たしました
確かにリタリンの依存性や裏取引の現状を考えると、一部の医師や患者に対する制裁は必要でしょう
しかしはじめからリタリン=悪と決めつけ難治性鬱病患者から服用の機会を奪ってしまうのもどうかと思います

17 ■希死念慮

以前の記事をみて。
私はうつ病で治療中です。よく死にたい気持ちに襲われます。主治医は「ダメだよ」と言います。kyupin先生は、どう答える事が多いですか?

18 ■>>Prudence

ネアンデルタール人やクロマニヨン人は時々影絵みたいなものが出てきます。姿勢などがあれにそっくりなのです。精神科関係者なら、ああ、とすぐにわかってもらえるのですが。

19 ■>>ななこ

境界性人格障害は保険病名としてなくはないですが、正式にこれに適応がある薬物は一切ないので、きわめてリスキーな病名といえます(何を処方しても減点されかねないという意味)

たとえば、
境界性人格障害(統合失調症状態)などと書けばうちの県では抗精神病薬、抗不安薬はクリアします。

20 ■>>緑

漠然とそのように言われても答えようがありません。診断によるからです。

強迫性障害などでは、良い選択かもしれません。

21 ■>>ななこ

保険病名は便宜的なものなので、何であろうと気にする必要はありません。

もし保険病名がそのまま診断に等しいなら、日本全国で統合失調症の人が大変な数になります。

保険病名は、処方により変りうるのです。あまりにも妙な変え方はできないですが。

22 ■>>mono

リタリンについてですが、ここのエントリで書いたままです。僕は今は2名ほど使っています。

これは保険病名的措置なので、どうにでもなるのではないかと。だから、服用の機会をうばうことにはなりません。

23 ■>>ririka

僕は平凡に説明することが多いですね。このブログの

http://ameblo.jp/kyupin/entry-10033618833.html

の後半を参照してください。

24 ■希死念慮2

愚問でしたね…すみません。
私は、うつとつきあって10年になります。娘の為に仕事をしない訳にはいかないので、抗うつ薬も仕事に差し支えない程度にしか使えず…症状が悪化した時は、ほんと「死」しか思い浮かばなくなります。主治医は、薬の変更・入院・ECT等いろいろ考えてくれますが、今の生活が維持出来なくなるので、断ってます。そこで言葉での励まし(?)になるのですが、日頃口数が少ない主治医が心から言ってくれる言葉は…やっぱり重く、救われることが多いです。(趣旨が逸れてしまってスミマセン)

25 ■うちの息子って?

一応、アスペルガー症候群ということで他害が多いので精神科に通い、オーラップとアーテンを飲んでますが。
特殊学級の5年生ですが「自分は何?」という疑問を持ち始めてます。
「君はアスペルガー症候群といってね・・・」と説明するにもなんだかなじまないような気がしています。
彼は就学前のwisc-3は120以上ありましたが、今は75以下です。だから療育手帳も取れましたが。
彼は何?
彼は私の息子ってことで。

26 ■>>じょん

アスペルガーの人は接した時に雰囲気があるので、それも参考になります。診察しないことにははっきりとはいえません。

27 ■無題

kyupin先生の、下記のブログを読むには、どうしたらいいのでしょう?http://ameblo.jp/kyupin/entry-10033618833.html

28 ■>>

http://ameblo.jp/kyupin/entry-10033618833.html

を、ブラウザ(インターネットエクスプローラーなど)の宛名にコピー&ペーストします。

これ以上、僕はうまく説明できません。あなたは、ブラウザで見ているので、必ず見られるはずです。

29 ■無題

はじめまして。大勢の前での発表時に、上がってしまい、心拍増加、呼吸のみだれがあります。
先日、診療内科を受診したのですが、インデラルは処方したことがないと、Dr.にいわれました。結局、抗不安薬の処方だけで終わりました。
東京都でインデラルを処方している、おすすめのできる診療内科、精神科をご存知でしたら教えてください。よろしくお願いします。

30 ■>>YMCWM

東京の事情はたまに遊びに行く程度でよく知らないのです。

31 ■こんにちは

先日は失礼致しました。↑「境界性人格障害に適応がある薬物は一切ないので・・・」との事ですが・・・境界性人格障害は、脳の病気ではないのでしょうか?(貴ブログを拝読してから、精神病は脳の病気だから薬物で治療出来るのだと解釈していました。「精神病は脳の病気」「脳は環境で作られる」と他のエントリで仰っていましたが、①それでは「脳は人(養育者)が作る」と捉えてもいいですか?)
先日あるTV番組で著名な精神家が、前総理は抑鬱病だと仰っていたのですが、抑鬱病になった理由は「怒りを向けるべき相手に向けずに、自分自身で抱えてしまうから」との事でした。育ちが良いので(「品があるので」だったか)怒りを人にぶつけられないという様な事も仰っていましたが、②私は前総理が抑鬱病だったとしても、その“誘引”は前総理の当時の置かれていた状況にあったとしても、“原因”はその状況にあったのではないと思うのですが、どうでしょうか?総理大臣ともなると一般の生活者と同等に考える事は出来ませんので、当時の総理を取り巻いていた環境が原因だと考えられるでしょうか?私としては精神病(メンタルな病全て)になる“原因”は成育環境にあると思っていますので、先生はどう考えられるかお訊ねしたいと思いました。
①②への回答宜しくお願いします。
私は「転移」に苦しんでいます。この病名は何になりますか?治療法はやはり心理療法ですよね?心理療法を受けた場合、一般的にどの位症状を改善する可能性があると思われますか?
追記:「アパシー症候群」のエントリを教えてください。拝読した記憶があるのですが検索出来ませんでしたm(_ _)m

「ぜぃぜぃ・・・」という程のスピードで拝読している訳ではないのですが、一年以上前からの記事を読破するのは中々大変です。。。でも何故か飽きる事もなく、興味深く拝読しております。 では、また

32 ■>>KAOLU

すべての精神疾患は生物学的な背景を持ちます。これは境界例でもそうです。

一般に、向精神薬ではこういう境界例や回避性人格障害などには正式な適応がないのです。これは薬物のレセプト的なことを言っているだけです。だから、境界例にはセロクエルやSSRIやアナフラニールなどの抗うつ剤が使われていることが多い。しかもこれは認知されています。

安部首相ですが、この人の場合も環境の影響が大きかったとはいえ、うつ病になるような生来の要素があったと思われます(実際にうつ病だったかどうかはともかく)

>>私としては精神病(メンタルな病全て)になる“原因”は成育環境にあると思っていますので、

これは相当な誤解です。僕はPTSDですら、素因的な背景を重視するタイプの精神科医なのです。

アパシーについてはエントリとしては取り上げていません。断片的に出てきているかもしれないですが。


33 ■有難うございました

お返事を有難うございました。↑の「脳は環境で作られる」ではなく「精神病は環境でつくられる」でした。←これで私は「精神病(メンタルな病全て)になる“原因”は成育環境にある」と考えていいと思いました。(貴ブログには色々な方がこられていますので、この様な場で言うべきではないのかも知れません)私の考えは書籍・サイト等・私自身の経験からある程度確信を持っていましたが、今までは“全て”のメンタル系の疾患がそうだとは言い切れませんでした。
昨日先生に一番お訊ねしたかったのは、①「脳は人(養育者)が作る」と考えられるか」という事だったのですが、専門外になるでしょうか?先生はどう思われますか?
>>・・・・・素因的な背景を重視する・・・・・・
精神病になる素因があるからといって、どうして精神病になるのですか?あくまでも素因にすぎないと思います。
「転移」については愚問だったでしょうか?先生のお考えをお聴きしたいのですが。それでは失礼致します。

34 ■追記

正確には「環境でつくられる」ではなく「環境要因は大きい」かと思います。これを自分で解釈した記憶だけで書いてしまいました。失礼しました

35 ■>>KAOLU

脳は環境から影響は受けるでしょうね。僕は一卵性双生児の統合失調症の一致率70%で、むしろ30%が一致しないことに驚きます。

参考
http://ameblo.jp/kyupin/entry-10014764965.html

僕は正直、このようなことにこだわるのが良くわかりません。

「転移」普段あまり大きな意識をしていないことなので、僕にはよくわかりません。そもそも「転移」というのは病名、病態でも何でもないですし。

36 ■生物学的視点

精神疾患を生物学的視点から見ている人はそう多くはいないと思います。精神科医・精神病理学者・一部の生物学者などが考えられますが、生身の患者さんに五感の感触で対峙しているのは精神科医、それもデキる医師に限られるのではないでしょうか。実験状況で脳の興奮の部位を見ているだけで患者さんの苦悩は見えてきませんし。

20年間心理学的視点でモノを見てきた僕はやはり環境因子を偏重する考え方をしてきました。今でもその考え方のクセは抜けません。ただ、環境要因は変数が多すぎて決定的なトラウマなどそう簡単にみつかるものではありません。以前も書きましたが、心理学には器質へのアクセス権がありません。丁寧な心理療法の書物でも統合失調症や双極性障害の記述は屁みたいなものです。

それほど敷居の高い生物学的視点を惜しみなく読者に晒していることがkyupin先生のブログの魅力の一つだと思っています。僕はこれが決定打で心理教から脱会しました。wもっとも、心理学の理論もあまり信用していなかったのですが…。

生物学的視点のいいところは、
①根拠がハッキリしている点
②無用な悪者を作り出さないで済むこと
③エビデンスに基づいた治療方針が立てられること
などでしょうか。

カウンセリングや精神療法を行っているうちに生物学的病因が消失し、回復する(ように見える)事例もあるのはある意味興味深いことです。風の様でありたいと望むkyupin先生は転移なんてものはあまり悩まなそうですね。

37 ■どうも有難うございました

ご紹介の記事確認しましたが、理解が間違っているかも知れませんので、確認させてください。
一卵性双生児の統合失調症の一致率が70%である事から、統合失調症になる原因は「環境要因が大きい」という事ですね?不一致率の30%は“素因”になるのですね?先生“個人“は統計で「環境要因」70%という高確率の方より、「素因」である30%の低確率の方を重視されているという解釈でいいでしょうか?

以下ご紹介の記事より
>>皆は、この70%の数字は驚くような高確率に思われるかもしれないが、僕は30%が一致しないことにむしろ驚く。ほとんどが、同じ親に育てられるために、環境リスクもほとんど同じだからだ。
先生は「一致率はもっと高くてもいいのではないか」と仰っているのですよね?(環境要因を重視?)極端に申し上げれば「100%一致してもいい筈なのに30%も不一致である」と。だからこそ、この「30%を重視される」という事でしょうか?それが何故かは解りませんが

38 ■>>ブミ

ブミさんは周期的に僕を誉めてくれますね。なんだか気恥ずかしいです。僕みたいなタイプはあまりいないような気がするのですが。ちょっと偏向した精神科医かも。

僕は結果的に良くなれば良いと言う感覚なのです。良くも悪くも。

例えば、いろいろ家庭状況を聞いて母親に問題があったとしても、母親が変れるかと言うと非常に難しいと思うのです。僕は特に「見かけ上健康に見える人間」は30~40歳を過ぎると、骨が硬くなるように、人が変るのも非常に難しくなるような気がします。

最初からできそうにないことに挑戦するより、本人がよくなった方が早いし、他の場面でも応用が利くし適応力も良くなる。そんな感じです。

39 ■>>kaoru

僕が考えていることとちょっと違う理解のような・・

普通、一卵性双生児の統合失調症の一致率が70%というと、その一致率の高さに一般人は驚愕します。それこそまさに生物学要因の高さに他ならないですから。

しかし、僕はそれでもなお残りの30%にむしろ驚いてほしいと思うのです。その30%こそ環境要因と言えます。(ここで、純粋に環境要因だけでもない点として、必ずしも遺伝子が一致していないことを付け加えています)

この文章を見て、やはり僕が環境要因が非常に高いと言っていると思うとしたら、理解がちょっとい偏っているというかあまりに精神疾患の環境要因の偏見に支配されていると思います。

40 ■尊敬しています(マジ)

>ブミさんは周期的に僕を誉めてくれますね。

これは「周期的」と言うところがミソですね。w
僕はkyupin先生は思い切り生物学的視点に偏重したキワモノ精神科医だと思っていますが、そこが先生の素晴らしいところなのです。精神医学とは敵対するしか方法がないという考えにかたまっていた僕にとって、最右翼からソリュージョンが訪れた感があります。僕はkyupin先生をポストKDBDr.を担う最も有力な臨床医だと確信しています。できれば仲間に入れて欲しいくらいです。(爆

41 ■ぼりぼり・・・

ちょっとどころではないような、解釈がかなり違ったような・・・(ボリボリ
端的にお訊ねしますが、貴殿の言われる「素因」とは「生物学的要因」を指しているんですよね?としましたら、先日申し上げた「素因にすぎない」は撤回します。(「素因」の解釈が違ったという事で、貴殿との原因の考え方の違いに変わりはないのですが)

>>一卵性双生児の場合、統合失調症の一致率は70%程度といわれる
とすると、愚問かも知れませんが兄弟の場合は一卵性双生児と同様には考えないのですか?例えば兄弟が5人とした時、3人位は統合失調症になるという事にならないのですか?(一卵性双生児よりは養育者・環境等の状態の誤差が当然生じますが)

何度も申し訳ありません。宜しくお願いします。

42 ■愚問ですね。

 このブログを愛読している者です。

 KAOLU様、失礼ですが、高校生物の遺伝のところを勉強してから書き込みしていただけませんか? 

43 ■素因

とは「①もととなる原因。②ある病気にかかり易い素質」と広辞苑にあり、私は②の「素質」と解釈していました。貴殿の言われる「素因的背景を重視する」の「素因」がよく判りません。↑に書いた「生物学的要因」(遺伝)でいいのでしょうか?

44 ■おはようございます

上の二つのコメントは無かった事にしてください。改めてコメントします。取り急ぎ失礼します。

45 ■>>ブミ

最右翼というのに笑ってしまった。僕は刺客ではありませぬ。

46 ■こうではないか(1/2)

と思います。間違い等の御指摘お願いします。
↑の欄での回答より(A・B)
A.普通、一卵性双生児の統合失調症の一致率が70%というと、その一致率の高さに一般人は驚愕します。それこそまさに生物学要因の高さに他ならないですから。
B.その30%こそ環境要因と言えます。(ここで、純粋に環境要因だけでもない点として、必ずしも遺伝子が一致していないことを付け加えています)
C.Bを右記とする⇒一卵性双生児の其々をE・Fとし、Eのみが統合失調症である。其々の環境をE=E的環境、F=F的環境とする
『遺伝子と疾病』(2006/7/17)より抜粋
D.一卵性双生児の場合、統合失調症の一致率は70%程度といわれる。ただ、別な親に育てられた場合は、少し違った確率になるため、この70%という数字はもちろん環境要因も含まれている。というのは、双子の場合、同一の親に育てられることが非常に多いためだ。偶然、違う親に育てられた場合、当然一致率は下がる。

47 ■こうではないか(2/2)

①(D)より「生育環境」は略100%一致しているものと考える
②一致率70%にも不一致率30%にも「生育環境」と「遺伝子」は当然関係するので、70%は双子の「成育環境」と「遺伝子」の一致率と考える。不一致率30%は①により「生育環境」は略一致していると思われ、「遺伝子」の方の不一致によるものと考える(「遺伝子」の不一致率30%は多くはないと思われる)
③(A)を「生物学的要因」のみと出来ない理由 
※(D)『70%という数字はもちろん環境要因も含まれている』となっている事
※(D)『同一の親に育てられることが非常に多い』にしては、一致率70%は低いと考える
※更に(D)『違う親に育てられた場合、当然一致率は下がる』のであるから、この70%はもっと低くなるのである
④(B)が「環境要因」のみと出来ない理由
※(D)『同一の親に育てられることが非常に多い』のに、「環境要因」が30%とは到底考えられない。(同じ事だが、逆に言えば「環境要因」としたとして、不一致率30%(違う親に育てられた)という確率が高過ぎると考える)
⑤統合失調症の発症の原因は“E的環境”である「環境要因」&「生物学的要因」の両方によるものと考えます。前コメント欄の「素因にすぎない」という発言は、原因の100%が「環境要因」だと言った訳ではなく、「素因」に過ぎないものが精神疾患に至るのは「環境要因」が原因であると思われるからです。ですが、以前も言いましたが、この事についてはまだ断定していません

48 ■追記

↑やはり、誤りが幾つかありました。ですが、趣旨は概略上記の通りですので、御理解戴けるかと思います

49 ■>>KAOLU

あなたの主張していることがいまひとつわからないのですが、結局、一卵性双生児という特殊な環境では、あまりに遺伝的背景が大きいと言わざるを得ないというのが結論でしょう。

もともと統合失調症というのものは、ある日突然、発病要因が揃うのではなく、生まれてから徐々に、神経のシステムのほころびが進行しているのです。ほころんでもなお、発病しない人がいるのも事実ですが。

5人兄弟でそのうち4人が統合失調症の家系では、残りの1名もたぶん、統合失調症的な神経システムの損傷があるはずです、しかし表現型はそうではない。こういうものは、統合失調症に限らず、あらゆる病気がそうなっていると思います。

僕はそういう考え方をするタイプの精神科医なのです。

50 ■どうもです(1/2)

コメントを入れ易い雰囲気を感じて質問した次第ですが、それは大きな錯覚だったようで、なんか凄いストレスを感じ、上のコメントを投稿したあと、こちらには来ていませんでした。精神科医のブログに来てストレスになってどうするんだって話ではありますが、精神科医のブログにコメントしたのは初めてですが、他のブログでもこのような経験はした事がありません。ストレスを感じた理由としては当ブロガーが一言多いと思える、その一言に皮肉が込められている事と(此処の欄の二回目の返答から不快でした)、そんな事から質問し辛かった事も関係しているようです。皮肉ともとれる一言は、素人を相手にしていると思っていないからとも考えられ、途中で苛々したのもこの理由かと思われます。
上記のような事から、ここでコメントした目的はどうでもよくなったのですが(信頼出来ないブロガーの意見を聴いても無意味なので。70%・30%も?で)、記事自体に疑問があり上の欄(11/2)で書いてみました。従来でしたら疑問を感じたら質問するのですが、先でも書きましたが質問し辛い事もあり、上のような書き方になってしまいました。上につては当ブロガー自身もどうでも良い事でしょうから、削除するなり好きにしてください(“上については”デスヨ)。今回は二回目の返答を確認した時から、此処を去る前に言っておこうと思っていた事を投稿しにきました。

51 ■どうもです(2/2)

精神疾患とは全然関係ない事ですが、過去にも疑問に思う事を聖職者数人に質問した事があります。どなたも素人が相手だと承知していたからだと思いますが、とても解り易く丁寧に回答してくださり、紳士的な対応でした。不愉快だったり苛々したり等は全くありません。今迄が良すぎたのかも知れませんが、今回の場合はおそらく例外だろうと思います。ただ、上の欄で触れている記事は、考えるきっかけにだけはなりましたので、この記事を引き合いに出してくださった事に感謝します。この記事に持った疑問も略解決した事で(勿論当ブログからではなく、調べたりとか色々)、精神疾患についても少し知る事が出来ました。
蛇足ですが、他者に多少褒められるのは嬉しい事ですが、あまりに褒められるとどうしていいか判らなくなりますし、褒め過ぎる人にも何かちょっと疑問を持ってしまいます。自分とは無関係でも、余りにも過度に他者を褒めるというような光景を傍で見聞きしているのも(過去コメントにウンザリする程有り)、あまり気持ちの良いものではありません。褒める人、褒められる人、お互い気の合う者同士で良かったですね。

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