2006-10-18 23:06:23

オーラップ

テーマ:オーラップ
一般名;ピモジド
オーラップはブチロフェノン系抗精神病薬に属し、1974年に発売されている。いわゆる定型抗精神病薬の範疇に入る。一般に賦活系の薬物とされており、無為、自閉などの症状を改善させるが、催眠、鎮静作用は弱く自発性の亢進が認められる。剤型は1mg、3mg、細粒があり、白の円形の形状になっている。割線はない。以前は発売元の藤沢薬品を示すFの文字が刻まれていたが、今は合併してアステラス製薬に変わっているため、ひょっとしたら、この文字も変更されているかもしれない。うちの病院では細粒しか使わないので知らないんだな。一般に、服用のミリグラム数が小さい薬物は力価が高く、そうでない薬物は力価が低い。数百ミリ単位で使われるフェノチアジン系の例えばコントミンは力価が低く、オーラップのように上限でも9mgまでとされている薬物は力価が高いのである。

効能・効果は、
1、統合失調症
2、小児の自閉性障害、知的発達障害に伴う以下の症状
  動き、情動、意欲、対人関係等にみられる異常行動、睡眠、食事、排泄、言語などにみられる病的症状、常同症などがみられる精神症状


となっているが、まぁ簡単に言えば、統合失調症と小児に出現する異常行動などに適応があるのである。(アメリカでは、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群にも適応がある) このブログを見ている人で、オーラップを服用している人はほとんどいないと思うが、アスペルガー症候群などの診断を受けている人なら、あるいは服用している人もいるかもしれない。非定型抗精神病薬が出現するまでは、賦活系の薬物は極めて限られていて、オーラップはその限られた薬物の1つであった。オーラップは一般に6mgまでで処方されていることが多い。つまり力価が高くパワーがある薬物なのである。

数年入院していて経過も思わしくない患者さんにオーラップを処方して劇的に良くなることがあった。26歳くらいだっただろうか?1人の男性患者さんは、大学在学中に発病してもう数年入院していた。手の甲にはタバコを押し付けた火傷がいくつもあり、他の患者さんに暴力を振るうことも多いので、病棟ではいつも注意しておかないといけなかった。退院できるなんて到底思えないような病状だったのである。手にタバコを押し付けて火傷をするのは自傷行為であるが、背景には離人体験などが関与していると思う。(アンヘドニアの項参照) ある時、オーラップを処方してみた。いくら処方したか、ミリ数はもう思い出せない。すると今まであったいろいろな異常行動が次第におさまり、数ヵ月後、退院できたのである。その後、外来通院を続けたが、ある時、僕にウイスキーか焼酎だったか、持って来てくれた。彼がアルバイトをして最初の給料で買ってきてくれたのであった。そんな風に病状を劇的に変えられるような薬物で、サッカー風に言えばオーラップは決定力があるといえた。それからもう10年以上経つ。僕は病院をかわったので、彼の消息を知らなかったんだが、最近聞いた話では、今も外来通院しており元気なんだという。あれだけ入院していた患者さんだが、今は安定していて再入院をすることもないらしいのである。

オーラップの欠点は、以前に書いたようにQT延長を来たすこと。これは非常に深刻な副作用であるので、心電図は十分に注意しておかなくてはならない。オーラップのように古い薬物は少し用量をオーバーしてもあまりレセプト的には文句を言われそうにないが、この副作用があるので9mgを超えて処方する気にならない。イギリスでは上限が20mgまでになっているようで、やはり人種的な忍容性の差が大きいといえる。オーラップは賦活系の薬物ではあるものの、SDAではないので、わりと錐体外路系の副作用が出現する。振戦や特にアカシジアは多いような気がする。また、これはSDAに似ているが、処方したことにより病状悪化を来たす率も平凡な定型抗精神病薬より高いような印象がある。薬価的には3mg錠で50円ちょっとなので、9mg使ったとしてもたいした額ではない。オーラップのエピソードをあと2つほど書きたいが、長くなるのでまた別の機会に。

参考
アンヘドニア
アスペルガー症候群
QT時間延長
メージ症候群(後半)


コメント

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1 ■後二つを・・・・

楽しみに待っています。
高名なK氏に「帯状回の邪気があるので、オーラップが合うと思う」と言われ、
近々処方されるかもしれないので・・・

2 ■オーラップ待っています。

あと二つほどのエピソード楽しみにしています。

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