2006年8月25日夜、福岡市東区の海の中道大橋で、飲酒後に運転していた当時市職員の今林大被告(24)の乗用車が、大上哲央(あきお)さん(36)一家5人が乗った多目的レジャー車(RV)に追突。大上さんの車は海中に転落し、長男紘彬(ひろあき)ちゃん=当時(4つ)、次男倫彬(ともあき)ちゃん=同(3つ)、長女紗彬(さあや)ちゃん=同(1つ)=が水死した。大上さんと妻かおりさん(32)も負傷した。 一審で検察側は、今林被告が泥酔状態で車を運転したとして、危険運転致死傷罪と道交法違反罪の併合罪(最高刑懲役25年)で起訴。福岡地裁は結審後、検察側に予備的訴因として追加させた業務上過失致死傷罪と道交法違反を併合した最高刑の懲役7年6月を言い渡した。
(2009年5月16日掲載)
悲惨な事故を2度と繰り返させないために−。福岡市の飲酒運転3児死亡事故を「過失」ではなく「故意犯」と位置付け、被告に懲役20年を言い渡した15日の福岡高裁判決。飲酒運転事故撲滅に向け、ともに声を上げてきた各地の被害者遺族たちは「私たちの訴えがようやく司法に届いた」と肩を抱き合った。無邪気な笑顔の幼いわが子3人の遺影と並んで会見に臨んだ大上哲央(あきお)さん(36)、かおりさん(32)夫妻は「3人の命が奪われた原因の悪質性がきちんと裁かれた」と、胸に迫る思いを静かに語った。
一審判決を破棄、懲役20年−。高校1年の次男を飲酒ひき逃げ事故で失った高石洋子さん(47)=北海道江別市=は、裁判長が読み上げる主文を聞いた瞬間、仲間と手を取り合った。「いまだに飲酒運転を続けている人の背中に、ひやっとしたものを感じさせてくれる判決。国民1人1人が受け止めるべきです」。そう言葉を強めた。
飲酒運転のトラック事故で2児を亡くした井上保孝さん(59)、郁美さん(49)夫妻=千葉市=も涙をこぼし「裁判所は当たり前のことをやっと認めてくれた。悪質な運転には、勇気を持って危険運転罪を適用してほしい」と語った。
事故遺族たちは16、17日、活動を広めるため、鹿児島市で署名活動に立つ。大学1年の娘を亡くした正林信子さん(59)=埼玉県坂戸市=は「1件でも飲酒運転が減り、私たちのように無念な思いを抱き続けなければならない人が増えないようにしたい。今日の判決は大きな力になります」と話した。
夏の夜の悪夢から2年9カ月。「本当に苦しい毎日を送ってきました。私たちが思い続けたことが伝わった結果だと思う」。会見で哲央さんは絞り出すように言葉を継いだ。かおりさんは「『過失』か『故意』かで、刑に服す彼(今林被告)の、罪と向き合う責任の感じ方が違うと思ってきた。彼の意識も変わるのではという思いがあった」と話した。
事故後は、高石さんや井上さんたちと、各地で飲酒運転の撲滅と厳罰化を求めきた大上さん夫妻。いちずに訴えたその姿が、ときにいわれのない中傷にさらされたこともあった。穏やかに生活する場所を奪われ、今は福岡の地を離れて暮らす。「懲役20年という年数よりも、(被告に)事件と向き合って反省してもらうことが1番の願いです」。哲央さんはそう締めくくった。
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