1999年、東京都の東名高速で飲酒運転のトラックに追突された車が炎上、女児2人が焼死した事故などをきっかけに、悪質な事故の厳罰化を求める声が上がり、刑法に新設、2001年12月に施行された。飲酒や薬の飲用、ことさらの信号無視、通行妨害目的の幅寄せ、割り込みなど、故意に悪質で危険な運転をして人を死傷させた場合に適用される。法定刑の上限は死亡事故で懲役20年、負傷事故で同15年。
(2009年5月16日掲載)
福岡市東区の飲酒運転3児死亡事故で危険運転致死傷などの罪に問われた元市職員今林大(ふとし)被告(24)に、福岡高裁(陶山博生裁判長)は15日、業務上過失致死傷などの罪で懲役7年6月(求刑懲役25年)とした一審判決を破棄、危険運転致死傷罪を適用し、懲役20年を言い渡した。危険運転致死傷罪は21日に始まる裁判員制度の対象事件。同じ事件で量刑が3倍も異なり、同罪適否の判断の難しさを裁判員となる市民にも示した形となった。今林被告の弁護人は上告する方針。
高裁判決について、専門家や市民団体の評価は割れた。飲酒事故の根絶に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「MADDジャパン」の飯田和代理事長は「プロの裁判官が基準を示してくれた。裁判員になる市民の参考になる」と歓迎。これに対して交通事故の裁判に詳しい高山俊吉弁護士(東京)は「事故直後の飲酒検知は酒気帯び程度だった。危険運転罪の構成要件は抽象的で、裁判員裁判では気分で裁かれてしまう危険性がある」と懸念する。
一審の福岡地裁判決は、被告の相当量の飲酒を認めながらも、事故現場まで狭い道や交差点を無事通過したことなどから同罪の構成要件である「正常な運転が困難な状態」を否定。事故原因を「過失」の脇見運転とし、業務上過失致死傷を適用した。
しかし、高裁は事故直前の状況を同じく認めながらも「幅の狭い道では意識的に慎重運転にならざるを得ず、危険な運転が顕在化しなかっただけ」と判断した上、脇見も事故現場の橋に歩道側への傾斜があるため「直進するには絶えずハンドルを微調整する必要があり、時速100キロで長時間は不可能」と否定。被告が酔いを自覚していたのは明らかとして「故意性」も認め「アルコールの影響で正常な運転が困難だった」「一審判決の事実認定は誤り」と断じた。
九州大学大学院の内田博文教授(刑事法)は「一審は厳格な事実認定で、控訴審は飲酒との因果関係を緩やかに認定した。高裁の判決は裁判員制度を意識した感が否めない」と話した。
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