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2009年05月18日

栗田 亘 コラムニスト、元朝日新聞「天声人語」執筆者 経歴はこちら>>

「集中豪雨的」報道になってはいないか(2/3)


 岡部さんの講演でも、新型インフルエンザは決して侮ってはならない人類の大敵であることはよくわかる。メディアも厚労省も、その観点から注意を喚起し、情報を提供していることも理解できる。
 しかしそれでも「冷静に冷静にと日々煽り立て」と受けとめる人びとがいるのである。

 どこそこで感染者が見つかった、成田での検疫体制はこうだ、帰国者の反応はこれこれである、メキシコ料理店の客が減った、マスクの売れ行きがものすごい、といったオモテのニュースは、確かにあふれんばかりに報じられてきた。

 カナダから帰国した横浜の男子高校生に国内で初めて感染の疑いが生じたとき(5月1日)は、各紙とも一面から社会面まで目をむくような扱いだった。
 締め切り時間ぎりぎりのニュースだったし、幾分かは仕方ないかとも思うが、一方で、岡部さんの講演のような行き届いた記事は、あったとしても、あまり目立たなかった。

 たとえば岡部さんは、「年配者は免疫をもっているのか」との質問に「可能性はありうるが、データはない。いまの時点でそうだと言うのは危険だ」と答えている。
 老齢者は比較的かかりにくい、という記事は私も読んだ記憶があり、その年齢層に属する一人として「安心材料」になっていた。うーん、そうか、むやみに安心してはいけないのだな。と、講演のたとえばそんな部分も、私にとって役に立つ。

 岡部さんは講演の終わりに、寺田寅彦の文章を紹介した。

  ものをこわがらな過ぎたり
  こわがり過ぎたりするのはやさしいが
  正当にこわがることは
  なかなかむつかしい

 そして「我々は今、正しくこわがることができるであろうか、という課題に直面している」と結んだ。

 講演の聴衆はジャーナリストなのである。穏やかな語り口ではあるが、私はこれを痛烈なメディア批判だ、と(勝手に)受けとった。

  →次ページに続く(前段に人気タレント泥酔事件と北の「人工衛星」)

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