「悪法」推進議員は誰だ!(4) 八木秀次(高崎経済大学教授)、花岡信昭(ジャーナリスト)、百地 章(日本大学教授)
「1回ぐらい民主党」の危険さ
八木 民主党も、人権擁護法案の対案として、2005年に「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案(人権侵害救済法案)」を提出しました。この法案は、地方の人権委員会の委員の選定もジェンダーバランスを配慮し、NGOの関係者や人権侵害の被害を受けた経験のある者を入れるように努めなければならないとしたり、委員の委嘱に国籍要件を設けないなど、人権擁護法案よりいっそう激しい内容です。川端達夫、仙谷由人、小宮山洋子、高木義明、伴野豊、松本龍、江田五月、千葉景子、福山哲郎、松岡徹、簗瀬進の各氏などが推進派として名前が挙がります。
もし民主党政権になったら、この法案が可決されるかもしれないと考えるだけで、絶望的な気分になります。年内に必ず衆院選があるわけですが、はたして民主党というのは政権を任すに足る政党なのか。その点はよくよく考えなければなりませんよ。
花岡 もともとの民主党に小沢氏率いる自由党が合流して現・民主党が誕生したわけですが、いわば庇を借りて母屋を乗っ取るかたちで、小沢氏が代表になったわけです。
そこで象徴的なのは小沢一郎代表といちばん仲がいいのは旧社会党出身の横路孝弘氏だということです。これは「いちばん遠くにいる者と手を握る」という小沢氏の組織論の表れですね。いちばん離れた人物としっかり手を握ることで、その真ん中の部分もごそっと引き寄せることができるという考えです。
八木 民主党は選挙互助会といわれるように、右から左まで揃っています。松下政経塾出身のしっかりした人はメディアの露出も多く、知名度もありますが、じつは実際に政策の立案を誰がやっているかというと、その担い手は旧社会党出身議員・職員であることが非常に多い。
代表的なのが、横路孝弘氏を中心に結成された「新政局懇談会」に集まるメンバーです。民主党の参議院議員会長で日教組を支持基盤としている輿石東氏もメンバーですし、ほかにも鉢呂吉雄、金田誠一、松本龍、郡和子、赤松広隆、土肥隆一、横光克彦(以上、衆議院議員)、岡崎トミ子、千葉景子、佐藤泰介、山下八洲夫、水岡俊一、神本美恵子、松岡徹(以上、参議院議員)の各氏などをはじめ30名ほどが参加しています。
また、いまだに旧社会党の理論研究集団として大きな影響力を誇ってきた社会主義協会出身の人びとが、民主党本部の事務局を牛耳っているといわれますね。民主党のマニフェストはたしかにしっかりしていますが、じつは毎年作成・配布をしている政策資料「政策インデックス」になると「真っ赤」です。外国人参政権法案や国会図書館法改正、ジェンダーフリー、夫婦別姓、子どもの権利基本法などといったさまざまな「悪法」が民主党の事務局とその同志である旧社会党議員から出てくるわけです。
「悪法」推進に関していえば、何度も名前が出てきている千葉景子氏。外交姿勢はといえば、「次の外務大臣」の鉢呂吉雄氏。男女共同参画社会に関しては日教組出身の神本美恵子氏です。また副総理はこれも日教組出身の輿石東氏。結局、民主党の支持母体は官公労や自治労、日教組などの組合が大きい。表に見えている民主党のクリーンなイメージと実際の支持母体と権力基盤の古さは非常に乖離しているから、実際の政策もイメージと大きく違ってくる。
民主党に1回ぐらい政権を担当させたほうがいいという人がいますが、村山政権の1年半を振り返ってみればそれがいかに間違っているかわかると思います。彼らは1年半のなかで、その後数十年にわたって日本国を自縄自縛するさまざまな楔を打ち込んできました。村山談話しかり、男女共同参画しかりです。うっかり油断していると、あとから毒が回ってくるのです。
百地 民主党政権が実現したときに一挙に成立してしまう恐れがある「悪法」は本当にたくさんありますね。たとえばいま八木さんが言及された国立国会図書館法の改正も大問題です。これは国立国会図書館に恒久平和調査局を設置して、日本の戦争責任をずっと追及していこうというものです。だから、一度でも現在の小沢民主党に政権を取らせたら大変なことになります。
八木 その法案は通称「慰安婦法案」と呼ばれ、国会図書館のなかに日本の戦争加害がどのようなものであったかを調査する特別セクションを設置して、そこで「日本の侵略」の実態を調査させようというわけですね。
百地 これはすべて鳩山由紀夫氏を筆頭提出者として、平成11年から平成18年まで四度にわたり提出されていて、平成18年5月に提出された際の提出者は民主党の鳩山由紀夫、近藤昭一、寺田学、横光克彦、日本共産党の石井郁子、吉井英勝、社民党の辻元清美、保坂展人の各氏でした。
ほかにも改正教育基本法についても、法案を骨抜きにしてもう一度改正前に戻そうという動きもあるようです。
八木 また、永住外国人の地方参政権付与についても、民主党は岡田克也氏を代表とする「永住外国人法的地位向上推進議員連盟」を結成して強力に推し進めていますから、民主党政権ができれば間違いなく通ってしまう。本当に気が重いですよ(笑)。
「悪法」もぐら叩き
花岡 教科書的にいえば、「政権交代可能な二大政党制」が議会制民主主義の理想だと思います。しかし、この場合の二大政党制はあくまで保守政党による二党制でなければなりません。おっしゃるように、いまの民主党は非常に危ないものを包含している。
八木 自民党と民主党の決定的違いは自治労や日教組など民主党を牛耳っている支持母体関連の政策ですね。これを見ればはっきりする。自民党もこのあたりをもっと強調して、争点にして選挙に臨むべきでしょう。
百地 ただ、どうでしょう。この衆参ねじれ状態は長く続きませんし、次の総選挙、そしてその次と考えていけば、まだまだ政界再編の可能性はあると思うんですよ。
花岡 そのときに保守リベラルと本格保守に二分されれば、理想的な二大政党時代が到来するのですけれども。
八木 せめて、この鼎談で名前が挙がったような方々の多くが一方に集まってくれると、選挙のときにもわかりやすいのですが(笑)。
それからもう1ついえるのは、一連の「悪法」を振り返ってみると、どうも公明党の影がちらつくケースが多い。まさに「『悪法』の陰に公明党あり」という具合です。
百地 公明党と連立を組むことによって、自民党らしさがどんどん失われていますよね。公明党・創価学会の支援なしには当選できないと思い込んでいる議員も多く、現在の公明党依存体質は異常ですね。その結果、いまやこれまで自民党の根幹を支えてきた支持層が離れつつある。
花岡 たしかにそのとおりですが、一方でたとえば自衛隊の海外派遣については、公明党が与党でなければ明らかに可決されない。とくに公明党の支持母体である創価学会婦人部はかつての社会党と同じような「青年よ、銃をとるな」の感覚です。一連の自衛隊の国際貢献が世界的にも国内的にも評価されるようになった陰には、公明党との連立政権がそれなりに機能してきたからだとはいえる。
竹下登元首相は保守二大政党論者でした。その分かれ目はどこにあるかというと、公明党を容認する保守と、容認しない保守が分かれ目だ、と。これは非常にわかりやすい。
八木 今回の議論では、社民党や共産党はほとんど挙げませんでしたが、それはいわずもがなということで(笑)。
悪法はいったん通ってしまうと今度はこれを廃案にするのはすごく大変です。しかもこれらの法案は議論を尽くして決まるのではなく、よく知らないうちに全会一致で通過してしまうわけです。
しかも、人権擁護法案や外国人参政権法案をはじめ、「悪法」はこの数年来、こちらが隙を見せると同じテーマが出ては引っ込みを繰り返してきています。
百地 まさにもぐら叩きですからね。こっちを叩いたら今度は違うところから「悪法」が出てくる。よほどしっかりと目を配っていなければなりません。有権者もこういう問題を忘れずに投票すべきでしょう。
八木 民主党も、人権擁護法案の対案として、2005年に「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案(人権侵害救済法案)」を提出しました。この法案は、地方の人権委員会の委員の選定もジェンダーバランスを配慮し、NGOの関係者や人権侵害の被害を受けた経験のある者を入れるように努めなければならないとしたり、委員の委嘱に国籍要件を設けないなど、人権擁護法案よりいっそう激しい内容です。川端達夫、仙谷由人、小宮山洋子、高木義明、伴野豊、松本龍、江田五月、千葉景子、福山哲郎、松岡徹、簗瀬進の各氏などが推進派として名前が挙がります。
もし民主党政権になったら、この法案が可決されるかもしれないと考えるだけで、絶望的な気分になります。年内に必ず衆院選があるわけですが、はたして民主党というのは政権を任すに足る政党なのか。その点はよくよく考えなければなりませんよ。
花岡 もともとの民主党に小沢氏率いる自由党が合流して現・民主党が誕生したわけですが、いわば庇を借りて母屋を乗っ取るかたちで、小沢氏が代表になったわけです。
そこで象徴的なのは小沢一郎代表といちばん仲がいいのは旧社会党出身の横路孝弘氏だということです。これは「いちばん遠くにいる者と手を握る」という小沢氏の組織論の表れですね。いちばん離れた人物としっかり手を握ることで、その真ん中の部分もごそっと引き寄せることができるという考えです。
八木 民主党は選挙互助会といわれるように、右から左まで揃っています。松下政経塾出身のしっかりした人はメディアの露出も多く、知名度もありますが、じつは実際に政策の立案を誰がやっているかというと、その担い手は旧社会党出身議員・職員であることが非常に多い。
代表的なのが、横路孝弘氏を中心に結成された「新政局懇談会」に集まるメンバーです。民主党の参議院議員会長で日教組を支持基盤としている輿石東氏もメンバーですし、ほかにも鉢呂吉雄、金田誠一、松本龍、郡和子、赤松広隆、土肥隆一、横光克彦(以上、衆議院議員)、岡崎トミ子、千葉景子、佐藤泰介、山下八洲夫、水岡俊一、神本美恵子、松岡徹(以上、参議院議員)の各氏などをはじめ30名ほどが参加しています。
また、いまだに旧社会党の理論研究集団として大きな影響力を誇ってきた社会主義協会出身の人びとが、民主党本部の事務局を牛耳っているといわれますね。民主党のマニフェストはたしかにしっかりしていますが、じつは毎年作成・配布をしている政策資料「政策インデックス」になると「真っ赤」です。外国人参政権法案や国会図書館法改正、ジェンダーフリー、夫婦別姓、子どもの権利基本法などといったさまざまな「悪法」が民主党の事務局とその同志である旧社会党議員から出てくるわけです。
「悪法」推進に関していえば、何度も名前が出てきている千葉景子氏。外交姿勢はといえば、「次の外務大臣」の鉢呂吉雄氏。男女共同参画社会に関しては日教組出身の神本美恵子氏です。また副総理はこれも日教組出身の輿石東氏。結局、民主党の支持母体は官公労や自治労、日教組などの組合が大きい。表に見えている民主党のクリーンなイメージと実際の支持母体と権力基盤の古さは非常に乖離しているから、実際の政策もイメージと大きく違ってくる。
民主党に1回ぐらい政権を担当させたほうがいいという人がいますが、村山政権の1年半を振り返ってみればそれがいかに間違っているかわかると思います。彼らは1年半のなかで、その後数十年にわたって日本国を自縄自縛するさまざまな楔を打ち込んできました。村山談話しかり、男女共同参画しかりです。うっかり油断していると、あとから毒が回ってくるのです。
百地 民主党政権が実現したときに一挙に成立してしまう恐れがある「悪法」は本当にたくさんありますね。たとえばいま八木さんが言及された国立国会図書館法の改正も大問題です。これは国立国会図書館に恒久平和調査局を設置して、日本の戦争責任をずっと追及していこうというものです。だから、一度でも現在の小沢民主党に政権を取らせたら大変なことになります。
八木 その法案は通称「慰安婦法案」と呼ばれ、国会図書館のなかに日本の戦争加害がどのようなものであったかを調査する特別セクションを設置して、そこで「日本の侵略」の実態を調査させようというわけですね。
百地 これはすべて鳩山由紀夫氏を筆頭提出者として、平成11年から平成18年まで四度にわたり提出されていて、平成18年5月に提出された際の提出者は民主党の鳩山由紀夫、近藤昭一、寺田学、横光克彦、日本共産党の石井郁子、吉井英勝、社民党の辻元清美、保坂展人の各氏でした。
ほかにも改正教育基本法についても、法案を骨抜きにしてもう一度改正前に戻そうという動きもあるようです。
八木 また、永住外国人の地方参政権付与についても、民主党は岡田克也氏を代表とする「永住外国人法的地位向上推進議員連盟」を結成して強力に推し進めていますから、民主党政権ができれば間違いなく通ってしまう。本当に気が重いですよ(笑)。
「悪法」もぐら叩き
花岡 教科書的にいえば、「政権交代可能な二大政党制」が議会制民主主義の理想だと思います。しかし、この場合の二大政党制はあくまで保守政党による二党制でなければなりません。おっしゃるように、いまの民主党は非常に危ないものを包含している。
八木 自民党と民主党の決定的違いは自治労や日教組など民主党を牛耳っている支持母体関連の政策ですね。これを見ればはっきりする。自民党もこのあたりをもっと強調して、争点にして選挙に臨むべきでしょう。
百地 ただ、どうでしょう。この衆参ねじれ状態は長く続きませんし、次の総選挙、そしてその次と考えていけば、まだまだ政界再編の可能性はあると思うんですよ。
花岡 そのときに保守リベラルと本格保守に二分されれば、理想的な二大政党時代が到来するのですけれども。
八木 せめて、この鼎談で名前が挙がったような方々の多くが一方に集まってくれると、選挙のときにもわかりやすいのですが(笑)。
それからもう1ついえるのは、一連の「悪法」を振り返ってみると、どうも公明党の影がちらつくケースが多い。まさに「『悪法』の陰に公明党あり」という具合です。
百地 公明党と連立を組むことによって、自民党らしさがどんどん失われていますよね。公明党・創価学会の支援なしには当選できないと思い込んでいる議員も多く、現在の公明党依存体質は異常ですね。その結果、いまやこれまで自民党の根幹を支えてきた支持層が離れつつある。
花岡 たしかにそのとおりですが、一方でたとえば自衛隊の海外派遣については、公明党が与党でなければ明らかに可決されない。とくに公明党の支持母体である創価学会婦人部はかつての社会党と同じような「青年よ、銃をとるな」の感覚です。一連の自衛隊の国際貢献が世界的にも国内的にも評価されるようになった陰には、公明党との連立政権がそれなりに機能してきたからだとはいえる。
竹下登元首相は保守二大政党論者でした。その分かれ目はどこにあるかというと、公明党を容認する保守と、容認しない保守が分かれ目だ、と。これは非常にわかりやすい。
八木 今回の議論では、社民党や共産党はほとんど挙げませんでしたが、それはいわずもがなということで(笑)。
悪法はいったん通ってしまうと今度はこれを廃案にするのはすごく大変です。しかもこれらの法案は議論を尽くして決まるのではなく、よく知らないうちに全会一致で通過してしまうわけです。
しかも、人権擁護法案や外国人参政権法案をはじめ、「悪法」はこの数年来、こちらが隙を見せると同じテーマが出ては引っ込みを繰り返してきています。
百地 まさにもぐら叩きですからね。こっちを叩いたら今度は違うところから「悪法」が出てくる。よほどしっかりと目を配っていなければなりません。有権者もこういう問題を忘れずに投票すべきでしょう。
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