発声練習

2009-05-17

[] 大学院(博士+修士)の話と博士の就職難の話をごちゃまぜで話すのを止めよう

  • 大学研究者だけでなく、企業などで活躍できる専門知識を備えた人材を育成しようと、国は1991年度から10年間で大学院生を倍増化する計画を進め、増加傾向は10年後以降も続いています。91年度に9万9000人弱だった院在学者数は、2000年度20万5000人、08年度は26万3000 人弱と、91年度の2.65倍に増えました。院生の数はまだ足りないのでしょうか。
  • 橋本
    • 全体としては明らかに多すぎます。大学院は間口を大きく開けた一方で、大学院教育の質を全く上げてきませんでした。その結果、従来どおりの出口としての大学研究者ポストや企業採用の枠は基本的に増えていません。当然、就職できなかったり、できても期間限定という不安定な状態でしか仕事ができなかったりする人たちが増えてきました。
    • 博士の学位を取った後、任期付きなど安定的でない研究職に携わる人に限ったいわゆる「ポスドク」、ポストドクターだけでも1万7000人程度、さらに「隠れポスドク」が相当数いると見られています。大学4年間から大学院5年間、さらにポスドクの任期3年を2回やった場合、累計15年間で1人あたり1 億円も国費が投入されたことになるという試算もあります。こうした人材のうち少なからぬ人数がフリーター化している訳で、なんとももったいない話です。

いい加減、大学院(博士+修士)の話と博士の就職難の話をごちゃまぜで話すのを止めていただきたい。日本はアメリカ式の大学院制度じゃないので、主流は修士課程までなんだってば。いまや、修士の就職率は4年大卒の就職率と同等かそれ以上のはず。ポスドクや博士課程の就職の話をする場合には「博士課程=大学院」と呼ばないで欲しいで計算したとおり、平成18年度の話で言えば就職率(= 就職者数/(就職者数+進路未決定者)*100)は以下のとおり。

  • 学部卒業:75.7%
  • 修士修了:80.3%
  • 博士修了:58.8%

話のメインは博士号取得者の就職のことなんだから、大学院というくくりにして話を水増しするのは止めてくれ。記者の方が出している大学院生の在籍者数は、大学院修士課程と博士課程の在籍者数を足し合わせたもの。橋本氏の回答は主に博士課程の話。読者があたまごっちゃごちゃになっちゃうよ。

  • しかし、まだ院生や博士の数は足りない、欧米先進国に比べ1000人あたりの博士の数は日本は少ない、と指摘する人もいます。
  • 橋本
    • よく耳にしますが、不毛な議論です。アメリカの「博士」と日本の「博士」とは質がまったく異なります。同じ「博士」という言葉で議論するのは建設的ではありません。研究業績を出す力とマネジメント力など総合力をみると、アメリカの博士の方が圧倒的に優れています。
    • その大きな要因は「競争」にあります。アメリカではまず大学院に入る際、3倍ぐらいの厳しい選抜をくぐり抜け、さらに厳しい勉強で鍛えられドロップアウト組が結構出ます。博士号を取れるのは半分ぐらいでしょうか。一方、日本の院は、誰でも入れて誰でも博士号を取れるといって過言ではない、ぬるま湯のような状態です。入るときの倍率は0.7倍、そして入ってしまえば9割ぐらいは博士号を取ることができます。よく「日本の大学は入るのは難しいが出るのは簡単」と言われてきましたが、今の大学院は入るのも出るのも簡単というわけです。こんなに違いのある人材を同列に並べ、数だけ問題にしたところで、何も解決しません。

あと、アメリカの大学院の制度と日本の大学院の制度を比較するときにはちゃんと考慮しないと。アメリカの大学の博士号取得者が良く教育されているのは確かだけど、その原因を博士課程の絞り込みに求めるのはいかがなものかと、大学院同士の比較でいえば、学校基本調査の数値を参考にすれば日本は修士課程入学者が10万人/年で、博士号取得者が1万人/年なので、大学院の入学者の1割しか博士号を得ていない。批判は正しいと思うけど、原因の分析は正しいの?ぬるいと言われる日本すら博士号とるのは楽じゃないよ。

参考:

774774 2009/05/17 22:20 私はJ-CASTとサーチナとNNAは見ないようにしています。

なまえなまえ 2009/05/17 22:34 採用側が期待するのは「X大学の大学院卒」ならば「これくらいの人材だろ」みたいな水準感。
経済学で言うところシグナリング効果という奴だ。
それが近年(ざっとここ10年くらい低落傾向と考えてよい)ダメダメだから件の橋本氏みたいな意見が飛び出すわけ。

世間から見ればあなたの言うような大学内の事情など「関係ねえ」。じゃあジャブジャブになって以降の修士ならばレベル高いんか。(2008年採用まで)景気よかったから第二新卒扱いで修士も採用されただけじゃないんか??? そういう大学外からの視線を知らないと「あんた象牙の塔の住人なんだねえ」と言われてしまうと思うよ。

next49next49 2009/05/18 01:33 >774さん

J-CASTは結構適当な記事書きますよね。せっかく、Webを中心媒体とした
報道組織なのにもったいない限りです。今回の記事なんかも、数字の根拠と
なるリンクなどをガンガン貼れば良いのにと思います。

また、私ははてなブックマーク経由でしかJ-CASTの記事は読まないのですが、
自分が読んでへんてこだと思い、かつ、自分が情報を提供できそうな記事に
関しては変な情報がネット上に回ってしまうから良くないと思いますので
出来る限りエントリーで書くように心がけています。

next49next49 2009/05/18 01:41 >なまえさん

> そういう大学外からの視線を知らないと
> 「あんた象牙の塔の住人なんだねえ」と言われてしまうと思うよ。

だから、数字を出してこういうエントリーを書いているんです。

私もなまえさんも、このエントリーを読んでくださっている皆様も
全員「世間」の構成員です。「世間」の風潮というのは時代とともに
変わるものですから、「世間」の風潮を帰るためにはデータをもとに
現状認識を一人一人変えていくしかないんです。

k.kohak.koha 2009/05/18 01:42 こういうのを見ると、いまいち釈然としない気分になります。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090506k0000e040013000c.html

私らはそんなに要らん子ですか、と。

CADCAD 2009/05/18 02:11 日本の問題なのだから,日本の中で最適解を求めていく必要がありますし,そのために
議論がなされるべきなのでしょうね.
#議論のための議論になってはいけませんが.

アメリカを引き合いに出していますが,かの国と同じ方法で後を追うのなら,追いつく
可能性は非常に低くなってしまいます.
高等教育をどうすべきかという難題については,各国も同じように悩み,それぞれ違う
方法を試している訳ですし.

各国の取り組みについては,以下の書籍が分かり易く,かつデータも豊富です.
http://www.amazon.co.jp/4121017641/

>k.koha さん
そんなに卑下する必要はないと思います.
#これまで散々痛い目に遭わしておいて,いまさら,と仰るのであれば,
#そのお気持ちは理解できますが.

せっかく国が後押ししてくれるのだから,チャンスとして生かせば良い
のです.

国にしてみても,決して安くない税金を投入して育成した人材が無駄になるよ
り,企業で成果を上げてもらったほうが税収(所得税+発明や研究成果による
企業利益に基づいた法人税)があるのでうれしいはずです.

apjapj 2009/05/18 04:49  既に、修士課程卒でも使えない人の割合が増えているということに、企業が気付き始めています。
 特に、大学院のみのコースを作った旧帝大だと、学部入試では絶対にその大学に受からないような人達が、ゆるい入試でどんどん入っています。学部入試で通った大学(旧帝大よりだいぶ難易度は下)の大学院の試験に落ちた人が旧帝大の院なら受かるというのが現状です。

JavaBlackJavaBlack 2009/05/18 08:14 >修士課程卒でも使えない人の割合が増えている
これは単に若者の数が減っていわゆる「大学全入時代」になったために、従来なら不合格になるであろう質の悪い学生まで合格になり学生の質の最悪値や平均値が低下しているという、ごく当たり前の話ですよね。そしてこれは博士卒に限定されるわけではなく、修士卒でも学部卒でも同じです。
そういういみでは「修士課程卒でも」というよりは「大学合格者」と言い換えちゃって良い程度の話です。

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