昔話-その24-
ヒカルオンで一番苦労したのは音楽だったのかもしれません。
実は、最初は渡辺宙明先生ではなかったんですよ…
主題歌を含めて作曲家と歌手はレコード会社の方で決まっていたんです。
ただ、この作品はなんとしても宙明先生にやっていただかなければ意味がありません。
とにかく、連日レコード会社の担当の方とのバトルでした。
険悪な空気も流れていたのですが、脚本が上がり、コンテが上がり、キャラが出来…
レコード会社の方もようやく理解してくださって、劇伴だけは宙明先生にお願いできることになりました。
ただ、その段階でも主題歌に関してはまだレコード会社の指名曲のままです。
僕には、なんとしてもそれを阻止しなければならない理由がありました…
だって、レコード会社は主題歌を”歌謡演歌”でやろうとしていたんですから…
宙明先生との打ち合わせの際、策略を巡らせた僕は、先生もいらっしゃるその場で、戦闘シーンに使う挿入歌を作っていただけないでしょうかと切り出しました。
先生の目の前で、レコード会社も駄目とは言えないだろうと賭けに出たんですね。
幸い先生も乗ってくださって、僕の計略はまんまと成功したわけです。
その後も交渉を重ねて、折角ですから宙明先生の曲をオープニングに、レコード会社の指名曲をエンディングに使用しましょうという形に落ち着きました。
ヒカルオンの主題歌「烈空!学園特捜ヒカルオン」は、こうして制作にはいりました。
流れで、作詞までやらせていただけることにはなったのですが…
なにぶん、作詞なんてやったことはありません。
なんとか1番の歌詞を作った段階で宙明先生に見ていただいたのですが、メロディをお作りになる際に、歌詞の一部にも手を入れてくださいました。
それを戻していただいた後に、僕が2番以降の歌詞を書いて完成させています。
ですから、厳密には作詞に関しては宙明先生との共作なんですね。
主題歌に関しては、実はまだまだバトルは続いていました…
楽曲は宙明先生の曲で行くことになったものの、この時点では歌手はレコード会社の指名の方のままだったんですね。
でも、こちらとしてはここまで来たら、串田アキラさんにお願いするしかないじゃないですか…!
レコード会社の方も、僕の余りのしつこさに根負けしてくださったのか、1番をレコード会社の指名歌手、2番を串田さんに歌っていただき、アニメのオープニングには2番を使えばいいじゃないかという事になりました。
これが、あの変則的かつ豪華な二人の歌手の起用の理由です。
レコーディンクは、早稲田のアバコスタジオで行われました。
僕も立ち会ったのですが、このとき初めてレコード会社の指名歌手の方を知るわけです…
金子久美さん。
とても上品でお綺麗な方でしたが、ひとたびマイクの前に立つや、驚くほどパワフルな歌唱力!
うわああああっ、全然アリじゃん!!!
初めて生で聞いたプロの歌唱力の素晴らしさは衝撃的でした。
この時は、流石に色々とわがままを言って申し訳なかったなと思いました。。。
串田さんのレコーディングは、お仕事の都合で深夜になったのですが、先に録音済みの金子さんのボーカルにかぶせる形での収録でした。
串田さんはクラブでのライブを終えてからスタジオにいらっしゃったらしく、お酒も入っていらしたのか、なかなか声が伸びません。
宙明先生がブースに入って、自らピアノを弾きながら歌唱指導をしてくださり、なんとか収録が終わりました。
もう明け方近かったと思います。
当時乗っていたジムニーで、宙明先生をご自宅までお送りしたのも良い思い出です。
このレコーディングが終了した際に、宙明先生の楽曲を聞いた担当の方が、想定していた歌謡演歌では作品に合わないとやっと理解してくださり…
ここでようやく、ヒカルオンにその曲を使うのをやめましょうという事になりました。
そこで、それではエンディングには金子さん歌唱の1番を使用しましょうと僕から提案したと言う訳です。
歌謡演歌は、次の「ボディジャック」の主題歌として使用されたようです。
ヒカルオンのサントラレコードに、何故か「ボディジャック」の主題歌「夜に泣いて」が収録されていたのは、そういうわけなんですね。
と、いうわけで…
僕がヒカルオンでもっとも苦労して胃を痛めたのは、音楽のことだったかもしれない…という話でした。
ヒカルオンの話は、あと一回続きます。
最後は、アイキャッチとキャストの話になります。
※ヒカルオンの音楽の原版テープに関しては、レコード会社の倒産もあり見つかっていないようです。
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