新型インフルエンザの感染者は17日も大阪と兵庫で増え続けた。しかし大阪市は神戸市などと異なり、学校休校措置や集客施設への休業要請を見送った。背景には、弱毒性とされる新型インフルエンザへの過度な対応の結果「都市機能がマヒする」との懸念が見え隠れする。「国は再考を」(平松邦夫大阪市長)。「国は毒性に関する知見を明確に」(橋下徹大阪府知事)。地方から悲鳴が上がった。
「新型インフルエンザは弱毒性とされており、強毒性とされる鳥インフルエンザを想定した対応とは異なる」。平松市長は17日の記者会見で、強調した。
人口約265万人、昼間人口は350万人を超える大阪市。月曜の18日には、通勤や通学で関西一円から人が流れ込む。それだけに感染拡大を阻むための市の対応が注目されたが、結論は「毒性が弱く、冷静な分析が必要だ」として休校などの措置を見送った。
平松市長は今回の措置について「社会経済活動を止める強毒性の鳥インフルエンザとは違うことを分かってほしい」と市民に理解を求めた。さらに「みんなが怖がってしまっていいのか。弱毒性だとこれだけ言われている。国も再考してもらいたい」と訴えた。市幹部は「一斉の休校や施設の自粛要請は、都心部では影響が大き過ぎる。交通網が張り巡らされており、効果も疑問だ」と指摘した。
橋下知事も17日、会見で「どこかで通常のインフルエンザの対応に切り替える必要があるのでは。今の国の方針のままだと都市機能がマヒしてしまう」との懸念を示した。
一方、毎日延べ約60万人が通る大阪・キタの地下街「ホワイティうめだ」。この日も飲食店などに大勢が詰めかけた。管理会社は「買い物客らに『マスクなしでは通らないで』とは言えない。終息を願うだけ」と淡々と話した。
ミナミのアメリカ村でもマスク姿の若者が見られた。マスクを着けていない京都市中京区の高校1年の女子生徒(16)は「新型は普通のインフルエンザと同じぐらいの毒性と聞いた。それほど心配していない」と冷静。大阪市此花区の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を訪れた名古屋市の会社員、中島朋美さん(20)は「感染は怖いが、予定をキャンセルするのも嫌なので、マスクを着けて来た」と話していた。
生徒の感染が相次いで明らかになっている関西大倉高校(大阪府茨木市)では17日も、宮之前隆春校長(72)が会見。「多くの生徒に感染が広がっていくのではないかと心配。全校生の家庭と連絡を取って健康状態を確認している」と沈痛な表情で話した。同校は休校期間を23日まで延長。25日からの中間試験も延期する。
兵庫県高砂市の県立高砂高では、生徒3人の感染が確認された。富樫暁宏校長は「簡易検査で陽性だったので覚悟はしていたが、やはりショックだ。生徒の一日も早い回復を祈るとともに、まん延防止に努めたい」と厳しい表情で語った。
同校によると3人は1年女子(15)と2年男子(16)、3年男子(17)で、いずれもバレー部。16日朝、既に感染者が出ていた神戸高の校長から富樫校長宅に「10日に高砂高で両校の男子バレー部が練習試合をした」と電話連絡があり、部員らの健康状況を確認。一部が発熱などの症状を訴えており、うち3人の感染が17日夕に確認された。3人が入院した同県加古川市の加古川市民病院によると、全員快方に向かっているという。【久野洋】
毎日新聞 2009年5月18日 1時24分