まじぃ~今月マジでピンチ~。
大体ルノーのレストア…その次に大幅改修しなきゃいけなかったのがマズかったわね…。シンちゃんをお迎えに行った時にN2地雷でベッコベコ。
今だ続いてるのよねぇ…レストアと修理費のローンが。
その前に、やっぱ、一人暮らしでマンション買っちゃったのがマズかったかしらね??アレのローンって結構家計を圧迫してるのよねぇ…。
一人で2LDKってのはチョッチ、きつかったかしら??
まぁ、今はシンちゃんやアスカが居るから今更独身寮に入るってのも…ねぇ?
って、その前に『独身寮』っていうのが気に入らないわ!!
高官用宿舎なんかがあればよかったのよ…なーんか妙なところにネルフは出し渋るのよねぇ…。
このことについて意見書でも出そうかしらねぇ…??
その前にペンペンもいるし…アレだけの大きさの冷蔵庫を入れれるところってのも…ねぇ??
しっかし、あの冷蔵庫も業務用なだけに使う電気代がバカにならないのよねぇ…。
さらにペンペンったらやったらとお風呂に入りたがるのよねぇ…。
水道メーターの回りが明らかに一般家庭よりいいのよ。はぁ。今度ペンペンに言い聞かせて…。
…私が居ない間に入るわね、ペンペン。一日に何度も。
でも最大の原因はアレか? 飲みに言った時の代金。
チョーッチいい店で飲むとあっという間ね。シンちゃん似のホストがいたのがマズかったのよ…。
って、これじゃあ、あたしゃショタじゃないの?!
…ま…まぁ、それはともかく…、
お財布の中の残高3万円…
あと三週間、これでやり過ごさなきゃいけないのよね…
はぁ…憂鬱だわ。
ああ、まだ今月、シンちゃんとアスカのお小遣いまだ渡してないわ…。
シンちゃんが一万円でアスカが二万円…
マジーわ。渡しただけで懐からっぽ、お財布大寒波、ノーマネーだわ。
ネルフ作戦部作戦局作戦部長、葛城ミサト三佐は今困っていた。
今までの無駄遣いのツケが回ってきたのだ。
今、彼女の財布の中に入っている金額は三万円…。
同居のシンジ、アスカに小遣いを支払ったら残金がゼロになってしまう金額だ。
彼女は一尉から三佐に昇進して昇給もしたはずだった。そして、シンジとアスカに関しては別途に養育、扶養費としてネルフからいくらか支給はされていた。
しかし、彼女はアルコール好きと車好き、そして仕事をしている時と打って変わった日常のだらしなさがここまで切迫した家計にしてしまった。
ぶっちゃけ、シンジとアスカの養育・扶養費を使い込むほど無駄遣いしたのだ。
このまま渡しそびれたフリをしてシンジとアスカの小遣いを無視することも出来るのだが…。
「ねぇ、シンジぃ~。ミサトから今月のお小遣い貰った?」
「ん? 僕はまだだよ。 もしかしてアスカもまだなの?」
「そーなのよ!」
「僕もそろそろ新譜欲しいから買ってSDATに落としたいんだよね。」
「私だって、新しい服欲しいのよ。
もう、サイズ合わなくなってきてんのよ」
「太ったの?」
「違うわよ!!バカ!!バストのサイズが大きくなって胸が窮屈なの!!
私は成長期なの!!もう、アンタそんなことも分かんないの!?」
「ご、ごめん…」
「わ、わかればいいのよ… あ、アンタのせいなんだからね…」
「う、うん…」
二人の間の話は何の話なのかは良く分からないが…。とにかく、アスカは服のサイズが合わなくなり、シンジは新譜の曲が欲しいらしい。
「まぁとにかく、先立つものがなけりゃどうしようがないわ。
シンジ!!ミサトから小遣いせびりに行くわよ!!」
「そ、そうだね…。」
…果たしてミサトは彼らから逃れることが出来るのだろうか?
ミサトは今日、休みにもかかわらず、ネルフ本部の自分の執務室で仕事をしていた。
というか、先立つものが不足している上にシンジとアスカとの接触を極力減らす為に休みだろうとなんだろうと仕事をしにきていた。
しかし、実際やっているコトといえば…
「…三丁目の酒屋…まだ高いわね…
四丁目のディスカウントストアのエピチュは…うーん、まだ高いわね。
セールとかやらないのかしら??
って言って、丸々三万使っちゃうと後が辛いしねぇ~。
うーん、ここはやっぱ、BOAビールにグレードをダウンして値切るか…。」
…ネットワークでビールの安売りをしている店を探していた。
ミサトは必死になって考えた。
まず、今月は飲みに行くのは無理だ。
だとしたら家で…いや、家にはシンジとアスカがいる。
ネルフの仮眠室の冷蔵庫にこっそり持ち込んで飲むしかない。
加持を掴まえておごらせるのもいいが…そう簡単に捕まる男なら苦労しない。
ここは、保安諜報局の内部監査に加持の身辺調査でもして自分以外の交友関係…特に男女間のを洗いざらい調べて、「浮気したわね!!加持!!」と、理由をこじつけておごらせるのもいいかもしれないが、生憎、加持の行動は最近大人しい。
…それに加持に金欠だと正直に話すのもシャクだ。
さらにこのコトが加持経由でミサトの友人の赤木リツコにでも知られれば、
「子供の養育費を飲みつぶすなんて…ミサト、ブザマね。」
…などと言われかねない。
実際そうなのだがミサトはそれを認めたくなかった。
「ん?この店安いわ!!早速オーダーよっっ!!」
ミサトはネットワークで見つけた安売りのビールを即決でオーダーを出した。
金額は三万ギリギリまではさすがに…いや? 行くか??
結局三万近くのビールのオーダーを出した。
配達先はネルフ本部。
支払いはキャッシュ…現金。
今日の夕方にでも配達に来て、集金して、手元の三万は小銭程度しか残らないほどすっからかん。
シュコッ!!
ミサトの執務室の圧縮空気でロックされていた自動ドアが開く音がした。
ミサトが机から顔を上げると…。
「ミサト!!」「ミサトさん!!」
…アスカとシンジが居た。
ミサトはサッと椅子から立ち上がり、そしてキリっとした顔をしてシンジに向かって言った。
「シンジ君、今日は仕事で帰れそうもないから。 今日は何かデバって。じゃあ――」
そう言い終わるなり、ミサトは颯爽と執務室から去って言った。
「ちょっと!?待ちなさいよ!!ミサト!!
…って、バカシンジ!! 何ボケボケ~ってしてんのよ!!」
シンジはミサトに圧倒されてボ~っとしていたがアスカの言葉でハッと我に返った。
「ご…ごめん、アスカ。ちょっと驚いちゃって…」
そんなシンジの様子にアスカが大きな声を出して言った。
「バカね!!デバれって言って小遣い無いのに何デバれってのよ!?
あんなもん、言い訳に決まってるでしょ!!
追いかけるわよ!!」
そう言ってアスカはシンジを引っ張ってミサトを追いかけた。
「…チッ!! 見失ったか…。」
アスカはネルフ本部の通路の真ん中で舌打ちをして言った。
「…ねぇ、アスカ。どうしようか?」
そう言うシンジに向かってアスカが両手を腰に当てて言った。
「決まってんじゃん。こうよ!!」
そう言ってアスカは自分の制服のポケットから携帯電話を取り出した。
そしておもむろにとある番号へかける。
『…ハイ。こちら、特務機関ネルフ諜報局第一課です。』
「セカンド・チルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ。
作戦部、作戦局、第一課長の葛城三佐の所在を知りたいんだけど?」
『葛城三佐の所在は只今、第一発令所にいます。』
「そう、ありがとう」
ピッ。
アスカは携帯電話の"切り"ボタンを押した。
「…チッ!!ミサト、第一発令所に逃げ込んだわ。」
アスカはシンジに舌打ちしながら言った。
「…じゃあ、僕達は入れないじゃないか…」
シンジが諦めに似たような感じで言った。
「フン!!そういつまでも第一発令所に居られるハズがないわ!!
…ま、とりあえずはミサトの執務室で待って様子を見ましょう。
…どうせ、あの部屋、今だれ~もいないしさ!!」
そう言ってアスカはシンジを連れてミサトの執務室へ戻っていった。
…その後、執務室から少年と少女の妙な声が洩れ出たりしていたが、何をしていたのか知っているのは内部監査を名目にミサトの執務室を盗聴していた特殊監査部の加持一尉だけだった…。
一方その頃、ミサトは第一発令所にあるコーヒーメーカーのポットからコーヒーを注いで飲んでいた。
「葛城さん…ここに何しにきたんだ?」
休日出勤でやって来てた青葉が自分の目の前のモニターから視線を外して日向に聞いた。
「えっと…多分…僕らの仕事ぶりでも見に来たんじゃないかな?」
同じく休日出勤でやって来てた日向は黙々とモニターの前のデータに取り組みながら答えた。
「オレにはくつろいでるようにしか見えないんだけどな…」
そう言って青葉は冷めたような視線でミサトを見た。
その視線に気が付いたミサトは青葉に向かって聞いた。
「ん?何?青葉君。私に何か用かしら??」
「いえ…。
…そういえば!!葛城さん、今日は休日じゃないんですか?」
そう、青葉が尋ねたらミサトはおちゃらけるように言った。
「あ~。始末書が次から次へと来ちゃってね~。
もー参っちゃうわ~」
「葛城さん、始末書…僕も手伝って先日終ったんじゃないんですか?」
さり気に日向が口を出した。
その言葉にミサトは一瞬ギクっとなったが、
「ネルフ内からの色々な書類よ!
まぁ~日向君の所には回ってこない分だからね~」
その受け答えを聞いていた青葉はなんとなくミサトが何かを隠しているような気がしたがツッこんで聞くのは止めた。
一方、日向の方は「またか…」という顔をした。
途中、ミサトはネルフ本部に配達された何かの箱(というかビール)を素早く受け取って支払いをしていたが、一応ネルフ内では高い地位にあるミサトである。
それがなんなのか分かっても誰一人として文句を言う者はいなかった。
そして素早く第一発令所に戻って再び篭城を決め込む。
青葉と日向はいい加減、ここから出て行って欲しかったがミサトは何を考えてるのか、空いているオペレーターの席に陣取って頑として動こうとしなかった。
そして日が暮れてきたという時刻、ネルフ施設内に呼び出しの放送が鳴り響いた。
ピンポンパン。
『お呼び出しいたします。
作戦部作戦局第一課長、葛城三佐。
赤木博士がお呼びです。
至急、赤木博士の研究室へ来てください。
…繰り返し~』
ずっと第一発令所に篭城を決め込んでいたミサトはリツコの呼び出しに気が付いて渋々第一発令所を出た。
…って…リツコ。なんの用だってのよ?
一方、第一発令所を出て行くミサトの後姿を見ながらずっと上司に篭城を決め込まれ、あまり仕事がはかどらなかったというか、途中の一服も出来なかった青葉と日向はやっと胸を撫で下ろした。
はっきり言って部下にとって仕事中に部屋に意味もなく上司に篭城されるのはメイワクだったのだ。
しばらくして、ミサトはリツコの研究室に入った。
そして…。
「あ、ようやく来たわね。ミサト。」
「あ、良かった。ミサトさん。待ってたんですよ。」
…アスカとシンジが居た。
ミサトはこれを見て血の気が一気に引いた。
そんな様子を見ていたリツコがいたって冷静な顔付きでコーヒーを片手に言った。
「シンジ君とアスカがね、ミサトに用事があるからって…。
代わりに呼んだんだけど…?」
そういってリツコはすまして自分の端末に向かって残りの仕事のデータの打ち込みを始めた。
ミサトは逃げる機会がないかと必死になったがそんな暇を与えまいとばかりにアスカが言った。
「ミサト!!今月のお小遣い!!
早く頂戴よ!!」
そしてシンジもアスカに習うように言った。
「あの…、ミサトさん。今月のお小遣いですけど…」
「えぇ~っと。う~~。」
…既に逃げ場を失ったミサトはこの二人の言葉に返す言葉も浮かばず、しどろもどろになった。
その様子を横目にリツコが一言言った。
「…ブザマね。」
その後、ミサトに禁酒令が出されたのは言うまでもない…。
END
蛇足
「ねぇシンジ。
結局、お小遣いもらえないからアンタ、私に何かくれる?」
「え? 僕何も持ってないよ?」
「バカね…お金じゃ買えないモノをくれればいいのよ♪」
そう言ってアスカはシンジの首に手を回した。
そんなアスカの様子にシンジはアスカの腰の辺りに手を回して…。
「くぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
声丸聞こえじゃあああああ!!!!」
ミサトは自分の部屋まで丸聞こえなシンジとアスカの睦言にキレてた。
その上、アルコール切れのミサトは今にも暴れ狂いそうだ…。
…全ては彼らの小遣いまで使い果たしたのが悪いのだが。
自業自得…。
ほんとにEND