今日はミサトさんの要望で白子のお鍋だった。
加持さんやリツコさんを呼んでお酒でも飲みながらお鍋をつつく…つもりだったらしい。
その当の白子鍋を要望したミサトさんは少し残業が残っていて遅れてくるとのこと。
それで僕は先にお鍋を作って既に来ている加持さん、リツコさんにお酒を、一緒に暮らしているアスカにはソーダを出して食べることにした。
テーブルの簡易コンロの上には白子鍋がグツグツと煮えている。
加持さんとリツコさんはおちょこでお酒をちびちび飲みながら突いていた。
そしてアスカは…
お鍋の中に入っているモノ(白子)をマジマジと見ながら口に入れていた。
「ねぇ、シンジ。 これ…まったりとした味して…まぁ、美味しいんだけど何なの?」
アスカが聞いて来た。
「あ、白子なんだよ。
今朝新鮮なのが手に入ってさ…ミサトさんがお鍋で食べたいって言うから。」
「ふーん、ミサトにしては結構美味しい食材のチョイスね。」
アスカはサラリと爆弾発言をしつつ、お鍋の中の白子をパクパクと食べ始めた。
そんなアスカの様子を見ながらリツコさんがほろ酔い加減でニヤニヤ笑って言った。
「うふふふふ… アスカって結構スキモノなのね…」
「は? 何の事?」
「リッちゃん、あんまりアスカをからかったら悪いぞ。」
加持さんも酔いながらニヤニヤ笑って言った。
「だから!! 何なんですか!!!」
僕はこの時、すごくイヤな予感がしたんだ。
この二人、アスカをからかってる…。
そしてそのとばっちりを受けるのはいつだってこの僕。
そして今日のお鍋を提案したのはミサトさんでも作ったのは僕だから、今日は間違えなく…。
そろそろ逃げる準備をした方がいいと画策していたけど…やっぱり逃げちゃ駄目…てなこと言っている場合じゃない!!!
「あら?アスカ知らないの?白子の事?」
リツコさんが勿体ぶって言った。
「だからぁ! 勿体ぶらないで教えて!!!」
アスカの堪忍袋の緒が切れそうだ。
そして次の言葉でアスカは間違えなく切れるに違いない。
僕は本当に逃げ出す準備をした。
「うふふ…、白子というのはね、魚類の"milt"のことよ。
人間で言うところの…そうね、"Hoden"かしら?」
これを聞いたアスカは顔をしかめてダッシュで洗面所に行った。
そして、
うぇぇぇぇぇぇぇ!!!
ガラガラ、ぺーっ!!ガラガラ、ペーっ!!ガラガラ、ペーっ!!!
と、ハデな音を立てながら盛大に吐いてうがいしていた。
ああ、いつかのキスを思い出す…。
そしてダッシュで僕の元にやって来て仁王立ちして言った。
「あんた!!
なんてモン食べさせるのよ!!」
「な…なんてモノって…。
ミサトさんが食べたいって言ったから…
それにただの白子だろ!?」
そう言ったら、アスカが僕の足にケリを一撃おみまいしてくれた。
「言い訳するな!!」
「え?だって白子って魚のハラだろ?」
本当は魚のなんなのか分かっていたけど一応そう言ったら、アスカからまたもう一発ケリをいただいた。
「アンタバカ~?! あれは魚の精巣よっっっっっ!!」
アスカは僕の股間を指さしながら言った。
「アンタのソレと同じよっっっっ!!!!」
アスカはそう言い残してダッシュで自分の部屋に行ってしまった。
「あらあら、アスカには刺激が強かったかしら?
シンジ君には災難だったわねぇ?」
リツコさんがのーてんきにお酒を飲みながら言った。
「誰のせいだと思ってるんですか?!」
「あら?でもアレは栄養があってなかなかいいのよ?
シンジ君のもアスカに食べさせてあげたら?」
「はぁ?!」
僕のナニを食べさせるっていうんですか???リツコさん???
「おやおやリッちゃん。今日はまた、一段と過激なコトを言うな。」
加持さんが無責任かつ、のーてんきに言った。
「うふふふ…。 たまにハメを外すのも悪くはないと思うわよ…」
………ダメだ…。
酔った大人に何言っても無駄だ。
…後にミサトさんが帰って来たけど、
(帰って来た時点ですでに出来上がっていた。何処で飲んで来たんだ???)
似たような話題で僕とアスカと白子を酒の肴にわいわい一晩中騒いでいた。
…僕はやられ損じゃないか…。
そしてアスカはしばらく僕と顔を合わせようとしなかった…。
END