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最先端・文化財デジタル保存に求められた西陣の「箔」技術 |
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文化財の宝庫・京都では、数年前から寺社の宝物を最新のデジタル技術で保存・記録し、後世に伝える取り組みが盛んに行われており、高精細デジタルカメラや大型スキャナーで寺社の屏風や襖絵などを複写、復元し、痛みの激しかった本物をより良い環境に移して保存、修復する機会を作っています。また、データをネットで公開することで、多くの人が文化財に触れる機会を作ったり、目的に応じてデータの貸し出しを国内外に行っています。 財団法人京都国際文化交流財団によるデジタルアーカイブ事業では、これまで、大覚寺、平安神宮、祇園祭の懸装品など幾つもの文化財をデジタル技術で保存・複製してきましたが、復元する際、どうしても最新技術だけでは表現できなかったものがありました。それは「金銀箔」の風合いでした。 そんな時に救世主となったのが、西陣で箔の知識と技術を持つ伝統工芸士・裕人礫翔（ひろと・らくしょう）さん（４３）でした。 |
複製された大覚寺襖絵「桃竹図」を間近に見ながら、裕人礫翔さんご本人から直接解説していただきました |
| 裕人礫翔さんの作品とともに、デジタル複製された襖などが展示されているのが、西陣にあるギャラリー「礫翔」 | ギャラリー「礫翔」前の浄福寺通りは、石畳の道に町屋が立ち並び、和服の似合う京都らしい雰囲気を醸し出している | ギャラリー「礫翔」の看板はやはり金箔。石のような強さ、重みも兼ね備えながらも楽しく、そして広く世界を翔けまわるという意味を込めて名付けられたそうです |
西陣の「箔」技術が秘める可能性を体感 〜ギャラリー「礫翔」オープン 本来は金箔の下地に絵を描くのが順序ですが、この複製化の作業は、まずデジタル複写した絵ありき。従って、絵の隙間を埋めるように金箔をのせる作業は大変困難だったそうです。「でもね、何百年前の絵師の描いた線から迷いなど、気持ちが見えて面白いんですよ。」と語る礫翔さん。複製化を通して絵の背景を担当する礫翔さんの作業を見ていると、時を越えて古（いにしえ）の絵師達と会話しているように見えました。 もともと金銀箔の伝統工芸士である礫翔さんですが、これまでから「箔」の技術を帯だけにとどまらず、様々な分野と融合させ作品を発表してきました。そして、石畳の情緒ある西陣・浄福寺通りに、京町家のギャラリーをオープンさせたのが去年の春のこと。 ここで実際に文化財の複製作業や作品の展示をされているので、ちょうど作業中ならば間近での見学も可能だそうです！ これは大変貴重でお得な体験ですね。 |
| ギャラリー「礫翔」の２階に裕人礫翔さんのアトリエがある | 複製作業には数種類の筆が使い分けられている | 塗っているのは“にかわ”に本金箔の金泥を溶いたもの |
| 金属の耀変で様々な光を放つ引箔。これらを素材として、いろいろな作品が作られる | ||
| 箔が吹き付けられた和紙を極細に割いて織り込んでいき、きらびやかな帯などを作り上げるのが「引箔」の伝統技法。 割かれた「引箔」の１本１本はとても細いが、かなりの強度を持ち、少し引っ張ったくらいでは切れない（左から２枚目） |
本物を教えてくれた京都・西陣 〜基本があるから応用ができる 西陣生まれの西陣育ち、家業は柄絵箔業という礫翔さん。しかし、学生時代は油絵を専攻。また、卒業後は室町の呉服問屋に就職したり、海外を巡った時期もあったそうです。「枠の中でじっとしているのが嫌なんですよ。でもね、外に出て、外から見て初めて京都の、西陣の凄さが分かりました。」 物心ついた頃から西陣の文化の中に育った礫翔さんは、最高級の西陣織の技術に囲まれ、また、琳派の絵画など、本物を自然に目にすることができたこの環境に今、感謝していると言います。「金の色でもいろんな色がある。本物の色、良い物を知らないとその善し悪しが判りませんから。」と、これらの基本があって初めて応用ができたとお話してくださいました。 |
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| こうして京都・西陣をアイデンティティーとする礫翔さんが、和装以外で手掛けてきた「箔」を使った作品とは…、裁断する前の引箔に文字を書く、書家（榊莫山さん、片岡鶴太郎さん他）とのコラボレーションや、極細に裁断した和紙をファッションデザイナー（桂由美さん）のドレスの素材としての提供、またお皿や建材など衣食住への技術の適用など、現在もジャンルの幅を広げていらっしゃいます。 | |
■裕人礫翔さんの技は多様な分野で表現されている |
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| 著名な書家とのコラボレーション作品なども | 裕人礫翔さんデザインの建材は飲食店の内装などにも用いられている | 裕人礫翔さんが開発された西陣ガラス |
| 奈良の墨運堂さん（墨染紙布）と、天香堂さん（天然香材）とのコラボレーションから生まれた香袋「礫翔墨染香袋」 | 金属の耀変ならではの繊細な色の変化が美しい | 三本合わせると月が浮かび上がる帯 |
町家のギャラリーは西陣新文化の発信地 文化財の修復作業をはじめ、こうした礫翔さんの新しい試みを無料で展示、公開するギャラリー「礫翔」ができてまもなく１年。西陣の風情たっぷりの町家ギャラリーは、西陣を知る隠れたスポットとして最近注目を浴びつつあります。 箔の技術をふんだんに使った小物の販売は、主に一階で。お手頃な価格なのがまた嬉しい。２階は礫翔さんのアトリエ兼ギャラリーで、靴を脱いで、畳の部屋でくつろぎながら説明を受けることができ、これまた大変新鮮でした。 なかなか異業種との交流が乏しかった西陣織の世界。しかし、これまで業種を越えた融合を自ら試みてきた礫翔さんはこんな夢を描いています。「京都中に点在する技の数々を線で結べれば、伝統の技を活かした新しい産業もでき、京都で働きたいという若者も増えるのでは…。」。 伝統の良さを守りつつも伝統にあぐらをかかない礫翔さん。新しいものと古いものが自然に融合するギャラリー「礫翔」で、西陣の一つの未来形を見た気がしました。 |
２階のギャラリーでは復元した文化財や大きな作品を主に展示 |
ギャラリーのコーディネートはフラワーアレンジメント講師でもある原田ゆかりさんが行っている |
１階では礫翔オリジナルの商品や伝統工芸品も購入できる |
金銀箔を使って作られたオリジナルのコースター |
裕人礫翔さん（右）とコーディネーターの原田ゆかりさん（左） |
（ ライター：高橋知子 ） |
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※この記事の情報は公開時（ 2005-03-11 ）のものです。
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京の伝統技法と最新デジタル技術の融合を西陣から発信
礫翔
京都市上京区寺之内通浄福寺下ル大黒町727番地
075-431-5676
帯の織屋さんが立ち並び、石畳の情緒あふれる浄福寺通りにて平成１６年３月オープン。伝統工芸を生かした箔アートのギャラリーの他、デジタルアーカイブ事業の一環として、重要文化財を大型スキャナーで撮影後、和紙に印刷し、伝統工芸士・裕人礫翔さんが金箔を施した重要文化財複製作品（大覚寺桃竹図と豊国神社豊国祭礼図屏風）の展示が行われている。
市バス今出川浄福寺停留所／千本上立売停留所より徒歩約5分
なし
10:00〜18:00
不定休
無料
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※この情報は最終更新日（ 2008-06-12 ）時点のものです。
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