きょうの社説 2009年5月17日

◎鳩山民主党誕生 政権交代後の「青写真」早く
 小沢一郎民主党代表の辞任表明からわずか五日後に、後継者が決まった。本来なら、政 権公約の概要を示したうえで代表選に臨むのだろうが、政策論争を深める十分な時間がないなかで、「党の顔」を選ばざるを得なかった。慌ただしく船出した鳩山民主党にまず求められるのは、政権交代後の「青写真」をできるだけ早く、具体的に示すことだろう。

 小沢代表の下では、常に「政局」が優先され、「政策」は二の次だった。党内の結束を 乱すのを恐れ、党内論争をあえて避けてきた感がある。特に外交・安全保障政策については、論議の入り口に立つことすら難しい状況だった。

 単なる野党であればそれでもよかったのかもしれないが、「次の首相」候補となる鳩山 由紀夫代表は、この問題から逃げるわけにはいかない。政権与党を目指す政党として外交・安全保障にどう向き合うのか、政権公約の骨組みを明らかにし、自民党との違いをはっきり提示してほしい。党内対立を恐れて課題をうやむやにしていては、政権担当能力を疑われる。

 小沢氏の問題で、民主党は思考停止に陥った印象がある。上げ潮ムードがみるみるしぼ んで衆院解散を求める声まで勢いを失い、支持率低迷に苦しんでいた麻生内閣は「敵失」で息を吹き返した。

 鳩山代表は、幹事長として小沢氏を三年間支え、代表選では小沢氏の全面的な支持を得 た。鳩山代表は「小沢氏の傀儡(かいらい)政権と呼ばれるつもりは一切ない」と強調していたが、代表選の各種世論調査で鳩山支持が岡田克也氏より低かった最大の理由は、小沢氏との距離が近いと見られたからだろう。国民の多くは西松事件について、小沢氏が説明責任を果たしたとは思っていない。鳩山体制下で、小沢氏がどんな立ち位置を占めるのか、国民の厳しい目が向けられている。

 鳩山民主党の誕生で、石川県や富山県などの地方組織は、「これでようやく選挙が戦え る」と安堵している。民主党支持の国民も同じ思いに違いない。今回、投票権が与えられなかった党員やサポーターの意見をしっかりとくみ上げて、政権交代を熱望する支持者の期待にこたえてほしい。

◎カーゴ便また減便 景気のせいとあきらめず
 小松空港に就航しているカーゴルクス便が減便され、週三便から週二便体制となった。 ピーク時には週五便も運航されていたカーゴ便はこのところ、逆風にさらされ続けており、今回の減便でついに一九九四年の就航当時の状態まで戻ってしまったわけだ。ここまでくれば、もはや危機的状況と言わざるを得ない。

 減便の主因は、世界同時不況に伴う国際貨物の減少であり、航空会社とすればやむを得 ぬ判断だろう。ただ、県などとしては「景気のせい」とあきらめてしまうわけにもいくまい。便数が減れば、当然ながら荷主企業にとっては使い勝手が悪くなるから、手をこまねいていては貨物の落ち込みに拍車がかかってしまう恐れもある。荷主企業へのよりきめ細かい働き掛けなど、事態をこれ以上悪化させないための最大限の努力を求めておきたい。

 「カーゴ便の減便傾向に歯止めをかけるには、貨物の確保が不可欠」ということで、県 などで組織する小松空港協議会は今年度、北信越五県の荷主企業を対象とした新たな助成制度を設けた。貨物一キロ当たり五円、年間五十万円を上限に補助金を交付する仕組みである。この施策の方向性は、間違っているとは思わない。効果が出てくる前にまた減便が決まってしまったのは痛いが、まずはこの助成制度の周知に全力を注いでもらいたい。

 それでも反応が鈍ければ、たとえば荷主企業の地域要件の緩和など、助成の拡充を考え てもよいのではないか。「百年に一度」とも形容される不況に対抗するためには、場合によっては非常の手段をとることも必要だろう。

 現在、国際定期貨物便が就航している国内の空港は、小松のほかには成田、関西、中部 だけだ。カーゴ便は小松空港の大きな強みであると言ってよく、さらなる減便や廃止だけは、何としても避けなければならない。新幹線開業後の空港の在り方を考える上で欠かせない路線でもあるのだから、苦境を乗り越え、いずれは復便を実現するために、あらゆる手だてを講じてほしい。