景気「底打ち」は幻想に過ぎない
2009年05月17日10時00分 / 提供:ゲンダイネット
世界経済の行方に楽観論が強まっている。バーナンキFRB議長は「金融危機は2、3年で正常化」と言うし、日本では与謝野経財相が「夏には底打ち」などと言う。そんな中、市場関係者に衝撃を与えているのが「世界経済はこう変わる」(光文社)という本だ。元大蔵官僚で慶大准教授の小幡績氏と元銀行マン、神谷秀樹氏の対談では、戦慄のシナリオが語られている。
●“慶大准教授”小幡績氏の戦慄見通し
小幡「僕自身、経済危機は現在第3幕の前半で、最悪の場合、第4幕までありうると思っています。第1幕はパリバショックによる金融市場の混乱、第2幕はリーマンショックによる金融市場の機能不全、第3幕は実体経済への転移。そして、第4幕は政府が財政破綻し、通貨が価値を失う段階です。これがアメリカで起これば、世界経済は崩壊。ゲームオーバーになる。その可能性はゼロでないところが怖い」
神谷「私は世界恐慌並みの状況にすでに突入していると思います。そのすべての過程が1合目から10合目まであるとすると、恐らくまだ2合目くらいで、これから8合目ぶん進まなくてはなりません。今後3年から5年の間、どん底に向かっていく時代になると思います」
これが2人の見通しなのだ。小幡氏に詳しく聞いてみた。
「景気の行方について、楽観論が主流になりつつありますが、いまは大きな分岐点です。世界中が大がかりな財政出動をして、とにかく、混乱を落ち着かせようとしていますが、これにより、民需が回復しなければ、財政破綻の危機が表面化する。ずっと財政出動を続けるわけにはいかないからです。財政危機が現実化すれば、通貨は暴落し、ハイパーインフレになる。すでに、その兆候が出ています。米国債の10年もの金利は2%くらいだったのが3%以上になっている。30年ものは入札が成立しなかった。英国、ドイツも国債未消化の危機にある。とくにヨーロッパは深刻。今後もアイスランドのような国家のデフォルトが続くだろうし、それをキッカケにポンド危機が再燃する。金融立国の英国経済がダメになれば、米国にも跳ね返ってくる。大恐慌のときは株価は最終的に9分の1になった。今回も同じだとすれば、これからが本番です。10年、20年くらいはダメかもしれないと思います」
●見たこともないようなスピードで進行する
民需が容易に回復しない理由はいくつかある。
「大恐慌のときは欧州で大戦が始まった。日本のバブル崩壊はアジアを中心とした新興国の成長で救われた。“外需”によって、景気は回復するのですが、今回は世界中が沈んでいる。それもだんだん悪くなるのではなく、見たこともないようなスピードです。高級車は1台も売れず、億ションは1部屋も売れない。前年同期比50%くらい減ってしまう。これでは、債務超過になる前に資金繰り破綻してしまう」
日本経済はどうなるのか。
「資産の傷みはそれほどでもないのに、キャッシュフローが大きく目減りし、結局、世界でもっとも大きな打撃を受けてしまった。高級ブランド品を売って儲けてきたのに、世界的にバブルがはじけて、高級品がまったく売れなくなったからです。おそらく、景気が戻ってきても、富裕層がレクサスを買うような時代は来ない。安い大衆車でいいや、ということになる。15兆円の景気対策を打っても、回復が軌道に乗らなければ、米国と同じく、財政破綻の危機が表面化します。日本の国債は日銀はじめ、国内で引き受け先があるからまだマシですが、マーケットが不信感を持ち始めると、一瞬でトレンドは変わる。危機感が欠如し、備えがないだけに心配です」
小幡氏は、「結局、景気回復はアジアの新興国頼み」だという。しかし、それでも、劇的な回復はない。
「人口が減っている日本はもともとマイナス成長を受け入れなければならないのです。日本人はそれを覚悟すべきです」
●ちっとも喜べない「上場企業」倒産減少
景気先行指数が「6カ月ぶりに改善した」とか「下げ止まりの兆し」とか、ここへ来て日本経済に薄日が差し込み始めたかのような報道が相次いでいるが、眉につばをつける必要がある。
会社更生法の運用が変わったことをご存じか。
●ルール変更と厚化粧で危機を隠蔽、先送り
「一言でいえば、昨年末から会社更生法適用申請時に、社長など経営者の責任が問われなくなったのです」
こう指摘するのは、民間調査大手、東京商工リサーチ調査部の友田信男統括部長だ。会社更生法には適用申請時、会社をダメにした経営者に厳しく責任を問う。企業のモラルを維持するためである。それが今回、骨抜きにされた。4月に入ると金融庁は、事業継続に「重大な疑義」が生じている企業の決算書に監査法人が注記する、いわゆるゴーイング・コンサーン(GC)に関しても、条件を緩めてしまった。
「以前は、資金不足の企業が資金調達を『検討』していると、GCが付けられたが、今回は大目に見ることになりました」(経済ジャーナリストの小林佳樹氏)
おかげで、昨年度に過去最多だった上場企業の倒産が激減している。1―3月は14社も倒産したのに、4月は、商工ローン大手SFCG(東証1部)と不動産開発の中央コーポレーション(東証2部)のわずか2社にとどまった。製造業に限っても、4月に業績を下方修正した企業は411社に上るが、倒れていない。
前出の友田信男氏がこう言う。
「GC企業は、黒字決算に沸いた08年3月期でさえ、240社もあった。同じ基準なら、今年は昨年以上の大騒ぎになる。倒産件数も増えるでしょう。倒産が少なくなったことは悪いことではないが、GCが付かなかったからといって企業体質が強化されるわけでも、銀行融資が潤沢に行われるわけでもありません。一連の措置は当面の危機を先送りしただけで、早晩、資金繰りに困窮した企業倒産が大量に発生するとみています」
国の指示で、これでもかというくらいに厚化粧した企業の姿。バケの皮がはがれた後が怖い。
(日刊ゲンダイ2009年5月14日掲載)
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