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NIKKEI NET

社説2 冷静に柔軟に感染拡大防げ(5/17)

 新型インフルエンザの2次感染が国内で初めて確認され、対策の重点が切りかわった。政府は新型ウイルスの国内侵入を阻む水際対策に全力をあげてきた。これからは水際対策を継続しつつ国内の感染拡大防止や医療態勢の充実に軸足を移す。

 新型インフルエンザの潜伏期間は最長で7日とされる。感染しても顕著な症状が出ない人もいる。無症状で検疫を抜けた感染者から2次感染が起きたとみられる。海外での感染の広がりを考えてもいつまでも水際で防ぎきれるものではなかった。感染者はさらに増えるに違いない。

 今回の新型は豚インフルエンザの変異で生まれた。幸いなことに病原性は毎年の季節性インフルエンザと大差ない。治療薬もある。ほとんどの患者は軽症で回復している。

 国民ひとりひとりの対応はいつものインフルエンザと同じでいい。人込みになるべく出かけない。出かけたときはマスクを着け、せきエチケットを心がける。うがいや手洗いで体を清潔に保つ。基本動作が大事だ。糖尿病などの持病がある人は重症化しやすい。特に注意が必要だ。

 高齢者の感染が少ないとの見方が出ているが、お年寄りは心配ないと受け取るのは早計だ。少ない理由が医学的にはっきりしないし多くの高齢者は慢性的な病気を持つ。リスクは高いと考えて用心するにこしたことはない。

 個人は通常のインフルエンザ並みに冷静に防衛策を講じればよいが、社会の対応は異なる。多くの人が一度にかかれば社会的な混乱を招くこともありうる。だれも免疫を持たない新型だけにその恐れを否定できない。重症化のリスクが高い人にうつる危険も増す。

 大流行にしないため、感染者が発生した地域で学校や保育園などを休んだり、イベントを中止したりすることもやむを得ない。感染経路を明らかにするため感染者と接触した人たちを割り出すことも必要だ。

 症状が普通のインフルエンザと似ており誤解も生じやすい。政府や自治体はプライバシーを守ることや経済活動への影響とのかねあいを考えて臨機応変に対策を進めてほしい。対策が円滑に進むために正確な情報に基づく国民の理解も不可欠だ。

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