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【社会】

『集団感染』の様相 追跡調査 困難さ増す

2009年5月17日 朝刊

生徒が新型インフルエンザに感染していることが確認され、学校前で会見する神戸高校の岡野幸弘校長(中)=16日午後、神戸市で

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 国内で初めて新型インフルエンザの発生が確認された十六日、感染者は神戸市の県立高校生八人に上った。いつもは観光客でにぎわう神戸の繁華街の人通りは減り、マスク姿が目立つように。大阪府の高校生にも感染の疑いが浮上するなど、一気に拡大した。スポーツイベントなどの延期や中止が発表されるなど、影響も出始めた。 

 国内で初めて新型インフルエンザの感染が確認された神戸市。患者は渡航歴がなく、二次感染が水面下で広がっている可能性も。感染ルートの解明も始まったが、濃厚接触者の追跡は困難を極めそうだ。

 感染者の追跡調査は感染源や感染経路、発症一日前から発症後七日目までの行動を追跡し、感染リスクが高い濃厚接触者をリストアップする。

 感染が確認された生徒三人が通う兵庫県立神戸高校は教職員と全校生徒で計千八十一人。感染した男子生徒二人が所属するバレーボール部とサッカー部だけでも約八十人に上る。同市は十六日朝から保健師が同級生や同じ部の生徒らの自宅を訪れ、健康状態に異常がないか調査を始めた。今後も保健師計約三十人を動員して作業を進める。

 感染した生徒が飲食店やスーパーなど不特定多数の人が集まる場所に立ち寄っていた場合、追跡作業はより大がかりになる。担当者は「調査にどれぐらい時間や人手がかかるのか見通しが立たない」とため息をつく。

 厚生労働省は同市に職員を派遣しており、調査の手が足りなければ増員も検討する。

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 根路銘国昭・生物資源研究所長は「患者が一人いたら、周囲に十人の潜在的な感染者がいる」と話し、二次感染の広がりを懸念する。

 世界保健機関(WHO)は新型ウイルスに感染した人が、何人の人にうつすかという数値(再生産数)を約一・四と推定。この数字は季節性インフルエンザよりはやや高く、スペインかぜなど大流行を起こしたウイルスよりは小さい。

 米国で確認された感染者は七千人だが、米疾病対策センター(CDC)は十万人以上の感染者がいると推定している。国立感染症研究所の岡部信彦感染症情報センター長は「現状では日本でどの程度広がっているかは分からない。神戸だけで収まるというのは楽観的な見方だ」と話す。

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 医療機関が「新型インフルエンザ感染を疑う症例」は、(1)三八度以上の発熱やせきがある(2)発生国への渡航歴がある−ことなどが基準となっている。

 今回の高校生は感染を疑う手掛かりとなる渡航歴がなく、現行の検知体制の“網”にかかりにくかった。二次感染が広がっている場合、渡航歴がない事例が増える可能性もある。

 

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