
(1) 6月に公表された政府税制調査会の報告書において、所得税の各種控除の廃止・削減を検討すべきとの見解が示された。具体的には、主に
1定率減税を完全に廃止し、
2配偶者控除・扶養控除・特定扶養控除などの家族を養うための控除を改廃すると共に、
3サラリーマンの必要経費として控除が認められてきた、給与所得控除を削減ないし廃止することを求めている。
これは、課税の公平を口実としているが、実際に計算してみれば、現在16兆円程度に過ぎない所得税収を、一気に11兆円も増やそうというものであって、これは単なる大規模増税以外の何物でもない。
(2)増税内容は、公平とは程遠いものである。
1)そもそも現在、サラリーマンの必要経費として申告が認められる費用は、通勤費、研修費、単身赴任者の帰省費用などごくわずかである。税調は、総務省の家計調査を根拠に必要経費は少ないと決め付けているが、この調査では平均的世帯の衣服費を2万円、理髪・クリーニング費を年1.4万円などと見積もっており、その内容はあまりに実態とかけ離れている。 |
2)給与所得控除は、サラリーマンと事業所得者の所得捕捉率の不公平の是正の性格をもっており、削減すればかえって不公平を拡大する。 |
3)配偶者控除は、世帯単位で見たときの、共働き世帯との控除額の均衡や、配偶者の家事労働への貢献を考慮して認められているものであり、こうした点の説明がなされていない。 |
4)高校生・大学生(16~22歳)の子どもを扶養している場合に認められる特定扶養控除について、特定年齢の子どもを優遇する合理性がないとしている。しかし、子どもがこの年代にある時にもっとも家計の教育費負担が増えることは明らかであって、廃止することにこそ合理性がないと言うべきである。 |
5)定率減税は来年から半減されることが決定しているが、税制にゆがみを生じているとして、これを全廃するとしている。しかし、定率減税はもともと恒久減税として導入したもので、ゆがみを生じているとの批判はあたらない。 |
(3)政府は景気が回復過程にあると主張している。しかし個人の所得に関しては、政府の統計を信用しても、小泉内閣誕生以来前年割れを続けてきたところ、ようやく前年比でわずか0.6%上がったに過ぎない。個人消費も、授業料の値上げなど教育費の支出増の影響を除けば伸びているとはいえない。
個人消費が伸びなければ景気の回復は持続しないし、個人の所得が増えなければ、いくらGDPが伸びようが、生活者にとっては景気回復と呼ぶに値しない。今回の増税を実施すれば、年収500万で25万円以上、同700万では50万円以上の増税となると試算される。景気がいまだ回復したと言えない現状において、個人を対象とする増税を口にすること自体が誤りである。まして、取り易いからとサラリーマンを狙い撃ちする不公平な増税など、絶対に認めるべきではない。
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