はじめに

このページではイヤートレーニング用の教則本を紹介させて頂きます。
たった3冊だけなので、ご覧になられた方は拍子抜けされるかもしれません。
何故こんなに少ないかというと、私自身が実際に使って、さらには効果が実感できたものに限定しているためです。

この手のトレーニングはとにかく根気と時間を必要とします。
ここで紹介する3冊の本も本気で取り組めば1年とか2年単位で習得する内容ですので、そんなに数がこなせるものでもありません。また、楽典等の知識習得に関しては色々な書籍を読めば理解が深まるという側面もあるかと思いますが、音感の訓練については方法に一貫性があった方が身になるのではないでしょうか。不毛に大量の教則を購入するよりも実際に力がつくものにじっくり取り組むというスタンスで3冊に限定させて頂きました。

いずれも独習が可能で、当然の事ながら相対音感の習得を目的とした教則本です。
学習にあたっては自分で音を確認するのにキーボード等の鍵盤楽器を使用される事をお勧めします。

紹介した以外にも優れた教則本は沢山あるでしょう。
ここに書いた以外のものから自分にあった本を探すのも良いと思います。ただ、ポップス畑の教則本ではほとんどまともな本が無いのが現状なので、クラッシックの教則を中心にあたられる事をお勧めします。

教材の選択基準としては初心者のための相対音感トレーニングが診断テスト代わりになるかと思います。こちらのページの練習が問題なくこなせるようならば「視唱の練習 和声感の育成をかねて」からスタートするのをお勧めします。結構苦しいようでしたら「インプロヴィゼイションのための イヤートレーニング」で基礎的な練習をしてから「視唱の練習 和声感の育成をかねて」に進む方が効率が良いかと思います。「音楽家の基礎練習」に関しては他2冊と肌合いが違い、音感というより読譜全般のテキストなのでどのレベルからでもスタートできると思います。

イヤートレーニング関連の教則本レビュー

音楽家の基礎練習

(パウル・ヒンデミット著 千蔵八郎訳 音楽之友社)

amazon→音楽家の基礎練習

音大等でも幅広く使用されている読譜、ソルフェージュの包括的なテキスト。 各章毎にリズムの練習、音高の練習、最後に両者を合わせた総合練習という 構成。

第1部はリズムをたたく、音程を歌うという形、第2部は書き取りという形なので 独習者は第1部のみで勉強して書き取りは音源付きの別のテキストを利用したいところ。 ちなみに第1部は約180ページ,第2部は約50ページという構成。

(長所)

カリキュラムが段階的に進めるよう組まれており、何より練習課題の豊富なのが良いです。 位置づけとしては音感だけのテキストというよりかは読譜全般の学習書です。このテキストの1部をしっかりやり通せば確実に総合的な音楽力のアップが望めると思います。

(短所)

歌うトレーニングに関しては音叉のA音を聴き、それを基準にして歌える音を段階的に増やして行く方針をとっています。音叉さえあればどこでも正確な音程が掴めるようになるので、合理的な考えだとは思います。けれども、個人的な見解を言わせてもらえば、この練習はある程度調性の感覚を把握できてからの方が効率が良いのではないでしょうか?

後はクラッシック系の教本ではおなじみのハニホへでの音名表記が結構煩わしい。これはクラッシックの教材全般に言える事ですが、このテキストでは特にうっとおしいです。まあ、慣れればなんと言う事はないのですが、ハニホへを使いつづけるのは害あって益なしなので早いところやめて欲しいというのは私のわがままでしょうか。


インプロヴィゼイションのための イヤートレーニング

(アーメン・ドリアン著 井上智訳 ATN)

amazon→インプロヴィゼイションのための イヤートレーニング 2CD付

数少ないポップス系のイヤートレーニングの良書。 コードを軸して歌うトレーニングが中心となっています。 このテキストはドレミで歌う事ではなく、フアンクションのナンバーを使用する 方式(例えばCMaj7に対してCは1と歌う)を採っていますが、これはドレミで歌う事と 競合するものではないので、ドレミに読み替えるも良し、テキストの指導要領に従っても良しだと思います。

(長所)

スケール、コードの音程感を掴むエクササイズが具体的かつ詳細に紹介されており、 トーナリーティー、コードの感覚を掴むための手引書としてはとても良いと思います。

(短所)

上の長所とのギャップが激しいですが、リズムを打つ練習、総合的な読譜の練習に関しては 段階的とは言えず、また分量も足りません。どうせなら別の書籍を副読書として推薦するなりして そういうものは割愛しちゃった方が良かったのでは? 総合的な練習は他のテキストにゆだねて、基礎トレーニングのガイドブックとして利用するのが 吉だと思います。


視唱の練習 和声感の育成をかねて

(金光威和雄 内藤忠勝 松代信子 呉暁 共著 音楽之友社)

amazon→視唱の練習 和声感の育成をかねて

個人的に強く推薦したいテキスト。

(長所)

何よりも多くの視唱テキストで非常に不親切である、練習法の部分が明確に示されている事。 練習の際にどのように和音を扱うのかが明確に書かれているところが独習者には助かります。 課題の量も豊富なので基礎的な視唱練習の教材はこれ一冊あれば十分ではないでしょうか。

(短所)

あくまで「視唱」という枠組みのテキストなので、いきなりイヤートレーニング初心者が取り組むには 難しいかもしれません。第1章のC durでもなかなか通せないようならば上で紹介している 「インプロヴィゼイションのための イヤートレーニング 」等で基礎的な音程感覚を掴んでから スタートした方が効率が良いと思います。

聴音の教材

当サイトでは聴音の教材は飽くまで補助的な使用を勧めている通り、分量的に独習用の教材で賄いきれない部分があります。ですが全く紹介しないというのも不親切なので、2点ほど代表的なものを挙げておきます。両方とも100題程度の課題が用意されています。


音大受験生のためのパーフェクトソルフェージュ[旋律聴音編]

amazon→音大受験生のためのパーフェクトソルフェージュ[旋律聴音編]

個人的には一番使いやすいかと思います。音大受験生とかなら下の受験生のための「聴音」で全巻やった方がよいかもしれませんが、一般的にはこちらで十分なんじゃないでしょうか。

受験生のための「聴音」

(単旋律編)

amazon→CD 【決定版】 受験生のための「聴音」 CD+問題集付 1 ≪単旋律編≫

(二声編)

amazon→CD 【決定版】 受験生のための「聴音」 CD+問題集付 2 ≪ニ声編≫

(和声編)

amazon→CD 【決定版】 受験生のための「聴音」 CD+問題集付 3 ≪和声編≫

以前は聴音の独習と言ったら、このシリーズしかありませんでした。長らくカセットテープだったんですがCD版になったようで何よりです。とりあえずシリーズ全部紹介してありますが、まずは1巻(単旋律編)ですね。二声とか和声に関しては飽くまで音大受験用の教材なので、ポップス畑の人は採譜で培った方が良いかもしれません。

Contents

相対音感トレーナー

ビギナー
メジャーkey
マイナーkey(主音ラ)
マイナーkey(主音ド)