イチロー４年ぶり連発に「がっさ気持ちいい」

６回２死一塁、２打席連続本塁打となる２ランを放ったイチロー（共同）

　◆マリナーズ５―４レッドソックス（１５日・シアトル）　マリナーズのイチロー外野手（３５）がレッドソックス戦で、０５年７月以来４年ぶりの１試合２ホーマーを放った。初回先頭の左前安打で９試合連続安打とすると、５回の３打席目に３号ソロを右越えに、６回の第４打席では逆転弾となる４号２ランを右中間に叩き込んだ。チームの連敗を３で止め、日本人メジャー最多記録を自ら更新する４度目の“マルチ本塁打”に、「がっさ（すごく）気持ちいい」と喜びを神戸の方言で表現した。

　イチローが方言で喜びを表現した。「がっさ気持ちいい、っていうことだけですね」“がっさ”とは、２０００年まで在籍したオリックスの地元、神戸周辺の言い回しで“非常に”や“すごく”という意味。０５年７月３０日のインディアンス戦以来、メジャー４度目のマルチホームラン。しかも、２本目が逆転Ｖ弾とあって、５１番の表情に笑顔が満ちあふれた。

　この２発には伏線があった。２回２死一、二塁で迎えた第２打席。カウント１―３から、レ軍先発左腕レスターの甘い直球が内角へきた。「いい結果を出せる可能性は高かったと感じました」それが打ち損じで中飛。悔しさが募っていた。

　挽回（ばんかい）のチャンスはすぐに訪れた。５回先頭の第３打席は０―２から、１点を追う６回２死一塁での４打席目では１―３から連続アーチ。ともに有利なカウントで、サウスポーの内角球を右翼席へ運んでみせた。「失敗して（すぐに）同じ状況はなかなか生まれないけど、今日はたまたま２回もそれがきたから珍しい。僕の記憶でもそういうことはあまりない」一度のミスを２倍にして取り返す活躍に、右翼席では「イチローは神です」のプラカードが揺れていた。

　すぐに城島は勝利を確信したという。過去２試合は逆転サヨナラ負け。この日も１点リードの９回２死一塁、ベイの大きなフライが左翼方向へ飛んだ。「イチローさんが打っていたから、一歩手前で入らなかったんでしょう。スーパースターが打つと、ひっくり返されないもの。昔、（前ソフトバンク監督の）王さんが『打つ人が打てば、その試合は勝つ』とよく言っていたしね」７番でスタメンマスクをかぶった正捕手の言葉通り、打球は失速した。

　日米通算本塁打は１９５本となった。「そもそも、僕にはホームランの美学ってあんまりない」４年ぶり１試合２発にも、クールな振る舞いは変わらない。逆転勝利の余韻が残るロッカーで、連敗を３で止めた天才ヒットメーカーは、愛犬・一弓（いっきゅう）が描かれた扇子を涼しげにあおいでいた。