新型インフルエンザ 国内のワクチンの製造の現状を取材しました。
新型インフルエンザの世界の感染者数が6,700人を超えました。
一度は収まっても、第2の大流行も懸念されるインフルエンザ、国内のワクチンの製造の現状を取材しました。
新型インフルエンザの感染者3人の入院から6日、成田赤十字病院の野口博史感染症科部長は「現在は、もういつ退院しても可能であるような症状に落ち着かれております」と話した。
3人は体調が回復し、13日に行った遺伝子検査も陰性で、15日にも退院できる見通しだという。
一方、世界各地の感染者は、6,700人を超えるなど、見えない敵との戦いは続いている。
12日の衆院予算委で、舛添厚労相は「6月初めぐらいには、新しいワクチンの製造ができると思います」と述べた。
こうした中、日本政府は、ワクチン製造の検討に入った。
香川・観音寺市にある阪大微生物病研究会・観音寺研究所では、現在、新型のワクチンの製造準備を進めている。
研究所内部について、担当者は「(中を拝見させてもらっても?)いや、これはですね、中へ入る方はですね、すでに登録した方でないと入室できません」と話した。
生きたウイルスを扱うため、研究所内部は、厳重な管理が徹底されている。
まだ、国から新型のワクチンについては正式な依頼はなく、ワクチン株も届いていない。
阪大微生物病研究会・観音寺研究所の奥野良信所長は「順調にいけば、10月ぐらいから最初のワクチンが出荷できるのではないかというふうに考えられます。そのワクチン株が、本当にいいものができるかどうかが問題で、ワクチン株がなければ、われわれ製造できないですね」と話した。
研究所では、すでに冬に向けて、季節性のワクチンの準備が進んでいる。
しかし、国内のワクチン製造能力は、年間最大2,800万人分と限られており、新型の増産は難しいのが現状となっている。
そして、ワクチン製造の必需品、ニワトリの卵の不足も問題視されている。
インフルエンザワクチンの製造方法は、ニワトリの有精卵にウイルスを注射し培養させる。
そして、遠心分離器などで不純物を取り除き、濃縮・精製して完成する。
卵1個からは、わずか0.5〜1人分のワクチンしかできない。
阪大微生物病研究会・観音寺研究所の奥野良信所長は「卵の絶対量というのは、ある程度決まっておりますので、季節性のインフルエンザワクチンと、新型インフルエンザのためのワクチンのバランスというのが重要になってくると思います」と話した。
季節性か新型か、気になるワクチンの製造について、日本時間の14日夜、WHO(世界保健機関)の専門家らと製造会社が電話会議を始めた。
ワクチンの製造量や比率について提言をまとめ、WHOは、各国に勧告することになるという。
そんな中、世界中が秋からの第2波を懸念している。
秋冬に流行する理由について、獨協医科大学微生物学講座の増田道明教授は「(ウイルスは)低温で乾燥した状況の方が、活性を失いにくい。ヒトからヒトへうつりやすい」、「夏場にインフルエンザの流行が収まったから、それでおしまいということは、決して油断はできない」と話した。
1918年に出現し、世界中で4,000万人以上の死者を出したスペイン風邪だが、当時の日本での死亡者数は、秋をピークに死者が急増している。
春夏には収束したかに見えたが、再び第2波が秋すぎから始まっている。
はたして今回、第2波は来るのか、獨協医科大学微生物学講座の増田道明教授は「今後、秋冬を迎える南半球の地域で、この新型インフルエンザがどういう流行を示していくか、これについても、やはり注意を払う必要があると思います」と話した。
拡大し続ける感染者、ワクチンなどさまざまな予防手段の検討が急がれている。
(05/15 01:34)