民主党の代表選がきょう行われ、野党第一党の「顔」が決まる。立候補を表明している鳩山由紀夫幹事長、岡田克也副代表のいずれが決まっても、今後の日本の進路に大きな影響を及ぼす重要な選択となろう。
今回の代表選は、小沢一郎代表の公設秘書が起訴された西松建設の巨額献金事件で失墜した党のダメージを立て直すだけでなく、次期衆院選で与党と戦う次の首相候補を選ぶ意味を持つ。党の力量が今、問われている。投票権を持つ国会議員もその覚悟だろう。
鳩山氏は一九九六年に菅直人代表代行らと旧民主党を旗揚げし、代表も務めた党のオーナー的存在だ。二〇〇六年からは幹事長として小沢氏を三年間支えた。岡田氏は〇四年に代表となり、翌〇五年の郵政選挙惨敗で辞任したが、「原理主義者」と呼ばれるきまじめさとクリーンイメージで選挙の顔としての期待を集める。
これまでの記者会見などからは、小沢路線をめぐる違いや、企業・団体献金禁止、国会議員の世襲制限などの政策面での違いが見えにくいが、両者の立ち位置が微妙に異なるところも見て取れる。
小沢氏への評価や、新代表に就任した場合の小沢氏の処遇について、鳩山氏は「(小沢氏の)かいらい政権になるつもりは一切ない」とした上で、小沢氏に重要ポストで執行部入りを求める考えを明らかにし、岡田氏を迎えた挙党態勢を表明した。
これに対して岡田氏は「小沢氏は政治資金の使途を丁寧に説明した方がよかった」とし、小沢氏を一定のポストで処遇するとしても「代表になってから考える」とするにとどまった。
それにしても、小沢氏の代表辞任表明から一週間足らず。政権担当能力を評価するための政策論争を戦わせるには十分な時間がない短期決戦となったのは残念だった。
十五日に日本記者クラブで行われた公開討論会でも、両者はお互いの主張を認め合い、代表選後は「挙党態勢」「全員野球」で自公政権と戦うという民主党PRに終始した感があった。
ただ両者が言うように、今代表選を親小沢対反小沢の戦いだけに収れんさせてしまってはならないだろう。
政策やリーダーシップで次期政権を担う力量を持つという評価からの一票が望まれる。岡山県連などが党員・サポーターを対象に実質的な予備選として行った電話調査など幅広い意見も参考にしてもらいたい。
幼児三人が死亡した福岡市の飲酒運転事故の控訴審判決で福岡高裁は、元同市職員を業務上過失致死傷罪で懲役七年六月とした福岡地裁の一審判決を破棄し、危険運転致死傷罪を適用して懲役二十年を言い渡した。求刑は懲役二十五年だった。
事故の主原因を脇見運転と結論付けた一審から一転しての厳しい処断である。適否の判断で量刑が大きく異なる危険運転罪を適用したのは、飲酒運転の厳罰化を求める世論に応えたともいえよう。
元市職員は三年前、ビールや焼酎など飲んで車を運転。時速約百キロで走行中、一家五人が乗った車に追突して海に転落させ、三児を死亡させたとして危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた。
判決では「前方の注視が困難な状態で、先行車が間近に迫るまで認識できず、アルコールの影響で正常な運転が困難だったとしか考えられない」と危険運転罪の成立を認め、脇見運転が事故原因とした「一審判決の事実認定は誤り」と指摘した。
その上で三人の子どもを一度に失った処罰感情や、飲酒運転事故の撲滅を求める社会情勢にも言及。「失職を恐れて逃走、証拠隠滅まで画策し悪質だ」と厳しく断罪した。
危険運転罪は、「悪質で危険な運転には実態に即した刑罰を科す」狙いで八年前に刑法に加えられた。しかし、構成要件が漠然としており、飲酒の関係では「正常な運転が困難な状態」と規定されているだけだ。
具体的な判断は裁判所に委ねられ、立証の難しさも指摘されている。今回も一、二審の判決で同罪の解釈や運用に大きな隔たりがみられた。二十一日から始まる裁判員制度では、危険運転致死事件も対象となる。裁判員は難しい判断を迫られよう。
(2009年5月16日掲載)