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2009年1月25日 (日)

WEDGE論説の解雇規制に関する説明

WEDGE2月号の私の論説の35ページ3段目のつぎの文章は、労働に関する法規制という言葉と労働法をあまり区別せず使っている上に、単純化しすぎていたため、法律の専門家の皆さんには混乱を招く表現だったようです。

「日本の労働法は、もともと契約自由の原則で書かれていたため、法律の文面では、解雇は自由となっていた。そのため、解雇規制は、権利濫用法理として司法の場で形作られてきた。60年代から徐々に判例が積み上げられ、70年代のオイルショックで整理解雇事例が多発し、解雇のための条件が明確化されていった。いわゆる「解雇法理の4要件」である。 つまり、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の妥当性、④手続きの相当性という4要件が満たされれば、合理的な理由として認められ、解雇権濫用に当たらないとされる。特に②の解雇回避努力の中には、非正規雇用の削減や新卒採用の停止が含まれており、今回のような不況期にはまず「非正規切り」を実施することが司法サイドからも要請されているわけである。」

厚生労働省の高原正之氏から、つぎの文章にした方が正確だとご指摘を受けました。

「日本の民法は、もともと契約自由と権利の濫用は許さないという原則で書かれていたため、民法の文面では、権利の濫用でない限り、期間の定めのない契約の使用者側からの解約(解雇)の申し込みは自由となっていて、この申し込みをした場合には2週間後に契約は終了することとなっていた。一方、労働法では、いくつかの解雇の制限が行われてきた。

 しかし、労働法で定められている不当な解雇には当たらなくても、民法の権利の濫用に当たる解雇は存在する。そのため解雇についての争いの裁判では、何が解雇権の濫用かという形で争われることが多く、司法の場で、解雇一般についての「解雇権濫用の法理」が形作られてきた。この背景には、期間の定めのない契約のほとんどが、民法制定時の想定とは異なり、事実上、定年年齢に達するまでの有期契約と労使によって理解されるようなものになっていたという事情がある。

 その後、この法理は2003年の労働基準法の改正によりその第18条の2として条文化され、さらに労働契約法が制定されたときに条文が移され、この法律の第16条となっている。

 経営上の都合による解雇、つまり整理解雇という特定の類型についての権利の濫用については60年代から徐々に判例が積み上げられ、70年代のオイルショックで整理解雇事例が多発し、解雇のための条件が明確化されていった。いわゆる「解雇法理の4要件」である。

 つまり、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の妥当性、④手続きの相当性という4要件が満たされれば、合理的な理由として認められ、解雇権濫用に当たらないとされる。特に②の解雇回避努力の中には、非正規雇用の削減や新卒採用の停止が含まれており、今回のような不況期にはまず「非正規切り」を実施することが司法サイドからも要請されているわけである。」

 おそらく、これが正確な法律の規制に関する表現だと思います。修正案をご教授下さった高原さんに感謝します。

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