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解雇規制のゲーム理論
経済誌があいついで雇用特集を組むそうだが、編集部でも解雇規制の緩和については「賛否両論」だという。もちろん解雇規制は絶対悪でもないし、絶対の正義でもない。その費用と便益を評価するためのベンチマークとして、簡単なゲーム理論的モデルを考えよう。
しかしBが解雇は不当だとして、訴訟を起こしたとしよう。この裁判にAが勝てば上と同じだが、Bが勝つと、もう1年雇い続けなければならないとする。後者の場合、企業は2年目に賃金を300万円支払って100万円の赤字になるとすると、2年目のそれぞれの利得は（0、600万円）となる（訴訟費用は無視する）。裁判官Cはどういう判決を下すべきだろうか？
Cの選択肢（サブゲーム）だけをみると、AとBの利得の合計は、企業が勝訴すると400万円だが、労働者が勝訴すると600万円だ。労働者は解雇されると生活に困るが、企業は1人ぐらい余剰人員を抱えても倒産するわけではないので、裁判官は労働者の勝訴という判決を出す。これは事後的には合理的である。
しかし労働事件はたくさん起こるから、この判決は次に裁判が起こったときの結果を示し、企業の事前のインセンティブに影響を及ぼす。企業が勝訴した場合の利益は100万円だから、正社員を雇うことによる企業の予想利益をπ万円、勝訴する確率をpとすると、π＝100p。他方アルバイトによる利益は50万円だから、正社員を雇うことが合理的になるのは、π＞50すなわちp＞1/2のときである。
つまり企業が勝訴する確率が半分以下だと、アルバイトを雇うことが合理的になるので、左下の（50万円、200万円）が均衡（サブゲーム完全均衡）になる。これは右上の正社員を雇用した結果（100万円、300万円）より両者にとって劣る。解雇規制が強化されるとpは低下するので、アルバイトを雇うことが合理的になり、正社員の雇用は失われ、企業も熟練労働者を雇えない。このように個別には合理的な行動を合成すると社会的に悪い結果をまねくパラドックスを、合成の誤謬とよぶ。
逆にいうと、たとえ裁判になっても確実に勝訴することが予想できれば、企業は正社員を雇う。つまり解雇の条件が事前に明確であれば、企業はその条件をクリアすることが可能になる。ところが整理解雇の4要件は、事実上「事業を閉鎖しないかぎり解雇できない」というものだから、これを事前にクリアする――閉鎖するとわかっている事業に雇用する――ことはありえない。
だから労働経済学で実証的にもよく知られているように、解雇規制の強化は雇用を減らすのである。したがって労働基準法を改正して、あらためて解雇自由の原則を明確にし、その適用除外条件を具体的に明記すべきだ。この場合、比較衡量しなければならないのは、サブゲームCで何が望ましいかではなく（ここだけみれば労働者保護が望ましいことは自明）、労働者保護の利益と労働需要の低下による損失のどちらが大きいかである。
しかしBが解雇は不当だとして、訴訟を起こしたとしよう。この裁判にAが勝てば上と同じだが、Bが勝つと、もう1年雇い続けなければならないとする。後者の場合、企業は2年目に賃金を300万円支払って100万円の赤字になるとすると、2年目のそれぞれの利得は（0、600万円）となる（訴訟費用は無視する）。裁判官Cはどういう判決を下すべきだろうか？
Cの選択肢（サブゲーム）だけをみると、AとBの利得の合計は、企業が勝訴すると400万円だが、労働者が勝訴すると600万円だ。労働者は解雇されると生活に困るが、企業は1人ぐらい余剰人員を抱えても倒産するわけではないので、裁判官は労働者の勝訴という判決を出す。これは事後的には合理的である。
しかし労働事件はたくさん起こるから、この判決は次に裁判が起こったときの結果を示し、企業の事前のインセンティブに影響を及ぼす。企業が勝訴した場合の利益は100万円だから、正社員を雇うことによる企業の予想利益をπ万円、勝訴する確率をpとすると、π＝100p。他方アルバイトによる利益は50万円だから、正社員を雇うことが合理的になるのは、π＞50すなわちp＞1/2のときである。
つまり企業が勝訴する確率が半分以下だと、アルバイトを雇うことが合理的になるので、左下の（50万円、200万円）が均衡（サブゲーム完全均衡）になる。これは右上の正社員を雇用した結果（100万円、300万円）より両者にとって劣る。解雇規制が強化されるとpは低下するので、アルバイトを雇うことが合理的になり、正社員の雇用は失われ、企業も熟練労働者を雇えない。このように個別には合理的な行動を合成すると社会的に悪い結果をまねくパラドックスを、合成の誤謬とよぶ。
逆にいうと、たとえ裁判になっても確実に勝訴することが予想できれば、企業は正社員を雇う。つまり解雇の条件が事前に明確であれば、企業はその条件をクリアすることが可能になる。ところが整理解雇の4要件は、事実上「事業を閉鎖しないかぎり解雇できない」というものだから、これを事前にクリアする――閉鎖するとわかっている事業に雇用する――ことはありえない。
だから労働経済学で実証的にもよく知られているように、解雇規制の強化は雇用を減らすのである。したがって労働基準法を改正して、あらためて解雇自由の原則を明確にし、その適用除外条件を具体的に明記すべきだ。この場合、比較衡量しなければならないのは、サブゲームCで何が望ましいかではなく（ここだけみれば労働者保護が望ましいことは自明）、労働者保護の利益と労働需要の低下による損失のどちらが大きいかである。
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常勤でも総合職的な核になる社員とそうでない一般職がおります。
非常勤ではアルバイト(所謂日雇い)・パート(日給月給制)・季節工(有期)がおります。
さて
派遣の社員は派遣元で雇われているのですが、派遣元での上記のどの分類で在職しているのでしょうか。
派遣元の非常勤のアルバイト(所謂日雇い)・パート(日給月給制)で雇われているのであれば、単に派遣会社と非常勤職員との抗争であり派遣先の会社は迷惑千万ということになります。
派遣会社の従業員は正社員しか雇わない(そうであっも余っている業界から足りない業界への労働力の調整弁にはなりますが、かなりの資本力のある会社でないと無理でしょう)、そして、その正社員をクビに出来るのは、派遣会社自体が左前になったような時だけである、と言うようなことであれば現行の体系との整合性も取り敢えずは保たれると思います。
派遣社員と派遣先会社との関係のみがクローズアップされておりますが、派遣元会社とそこが雇用している派遣社員との関係が今一わかりません。
・最適化の対象を、企業の利益と労働者の賃金に限定して話を進める
・正社員かアルバイトか。解雇か裁判か。条件分岐を２択など単純化する
このような単純化の手法は、混沌とした状況の中で意思決定を行うビジネスの世界では常に使用されます。（政治の世界では知りませんが…）
本エントリを読むと、これらが明快に整理された主張が述べられていたので、非常に感銘を受けました。
皆がこのような手法を身に付ければ、無駄な会議も減り、建設的・生産的な議論が展開され、問題はより素早く解決され、知識産業の生産性も向上し、豊かな生活を享受できるというものでしょう。（ちょっと言いすぎか。）私も精進しなくては。
個人的には「サブゲーム」という考え方と「結果が次のインセンティブに影響を及ぼす」という観点が勉強になりました。
解雇規制の議論を聞く際には、各論者がどのレベルの、どのサブゲームの問題について論じているのか、何と何を比較しているのか、明確に意識する必要がありますね。
トータルで望ましくするにはどうすればいいのかを論じているのに、一部のサブゲーム内での望ましさについてしか見えていない場合は、議論はすれ違ったままでしょう。
派遣会社は派遣先との契約が成立している間は商売になっているわけですよね？
あなたが「迷惑千万」という例えは意味不明ですよ。
派遣されてくる人間が派遣元でどういう雇われ方をしていようが社間で結ばれた契約が履行されていれば派遣先には無関係じゃないですか？
極端に言えば働いてくれる人が社間契約の範囲で派遣されてくるなら誰でも良いわけですよね？
例えば派遣先に契約を解除されてもいないのに、雇用形態はどうあれ派遣元が労働者を解雇する状況ってどんな状況でしょう？
派遣会社とそこに雇われている人がもめて辞めようがクビになろうが派遣先は替わりの人さえ用意してもらえば文句無いわけです。
この時に起こる一時的な問題、例えば業務の引き継ぎだとかあるいは研修等のようなものが発生したことによる一時的なロスは迷惑千万なのかもしれませんが...
社間の契約は対等な関係ですから文句があるなら契約を解除するだけの話ですよね？
これは派遣先だろうが派遣元だろうが一切関係なく、純粋に雇う側と雇われる側の関係のお話ですよ。
この図をまんま派遣会社に置き換えてみれば良いのでは？
で、なくて派遣先の会社と派遣先の従業員の会社関係(つまりそこの会社と従業員)と派遣元の会社とそこの従業員(派遣として派遣会社に雇われている派遣元従業員)とはえらいさ差があるので、派遣会社とそこに雇われている派遣社員の関係はどのような関係であるのかをお聞きしたかったわけです。
「派遣会社は派遣先との契約が成立している間は商売になっているわけ」ですが、メーカーも流通業も売れている間が商売になっているだけですが、簡単には店をたたみません。
ただし、これは解雇を無条件に自由にして「企業が気分次第で解雇しても国は何もしない」ということではありません。コモンロー的に不当な解雇については、司法が止めるでしょう。それは上限金利を撤廃することが闇金を公認することを意味しないのと同じ。
経済学の基本的な考え方は、「事前規制はなるべくやめて市場にまかせ、社会的な被害が出る場合には事後的に取り締まる」ということです。同じことは大麻や売春にもいえます。これは半世紀前にフリードマンが明らかにしたことですが、日本ではいまだに説得が必要なんですね・・・
只、解雇の自由を保障することで、解雇された人の尊厳を如何にするかは、また、限りない問題を発生させると思います。
例えば、1割の派遣や期間労働者の解雇することと、ＣＥＯ以下全員の賃金を1割カットすることの違いは何でしょうか。
村社会からの決別が歴史の必然だとしても、痛みを共有し会えない社会を目指すことが、社会をリードするオピニョンリーダーの当たり前の取るべき姿なのでしょうか。
強者と、弱者に二極分化した社会を良しとしてしまえば事態は簡単です。
現に、意欲も努力もしない派遣など、切り捨ててしまえと言う発言がネット上には溢れています。
それは、悲しいことではないでしょうか。4000円のベアを要求する労働組合が、派遣について、全く言及していない。これはやはり今其処にある異常だと思います。
いじめを肯定し、増長させる社会が始まっている。
リンク先を見しましたが、１年間で労働人口の３分の１が転職し25万件の職の喪失と新規雇用が生まれているとは高い流動性ですよね。
独立行政法人が他国のシステムを研究するのは良いことですが、成果を少しは政策にも反映させてほしいものです。
東洋経済のWebページに特集されていたようです。
http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/46b495508efcce5bb693cacbc9529b4e/
日本の中だけで、全員が強者になる事を目指せば、全員が弱者に落ちぶれる事になるでしょう。弱者が固定化されないように復活戦を何度でも挑戦できるスキームがあれば良いのではないでしょうか。
>意欲も努力もしない派遣など、切り捨ててしまえと言う発言がネット上には溢れています。
そういう人でも強者でいられる世界というのは、社会主義者の描いた理想の国の事ですか？いつから日本は、そんなに弱い国になってしまったのでしょうか。
経営者が優秀（ある意味で）ならば労働法程度の規制では、正社員は過剰保護された状態になりません。わかり易いのが、いわゆるブラック企業という存在。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BC%81%E6%A5%AD
要するに、正社員が過剰保護されているというのは、労働契約法よりも、経営によるものが大きいのです。年間の労働時間2000時間×最低賃金700円程度では、労働契約法を遵守していることになりますが、年収200万円にも達しません。
正社員という無期雇用契約の中身よりも、さらに輪をかけて異常なのは年功序列賃金でしょう。法改正よりも、労使共に賢くなることが重要だと思います。
解雇ができる正社員（無期雇用契約）というのは、一体どんな契約なのかよくわかりません。それならば、最初から有期雇用契約が主流になればよいと思います。
派遣規制が強化されては絶対にならないと思います。
池田先生、城氏、辻広氏、三方には、頑張ってほしいです。
定期借家権が制約が多くて使いにくい制度だからと思っています。双方合意でも普通借家に切り替えられないなど・・・。切替が可能だと試験的に定期で入れてよさそうな店子なら普通借家にできれば供給は増える可能性があるのではないでしょうか。契約が公正証書なのも躊躇する原因かもしれません。
立ち退き料がネックになってファミリー向けの賃貸物件が少ないということも聞きますので、普通の借家でも立ち退き料一定の条件化（5年以上住んでる場合など）は立ち退きを求めやすくするなどもっと柔軟に契約ができることが良質の借家の増加につながるのかなとおもいます。
下記文面ですと定期借家は普通に比べて広くて賃料が高いそうですから、条件があえば利用する大家はいるのだと思います。
http://athome-inc.jp/pdf/news/080408_2.pdf
賃貸入居時の一時金（敷金、礼金）の高さは何とかならんかなと常々思っています。
たとえば出世したくない人でも出世させられるような例や、技術者に営業をやらせるようなことを平気でやります。それでうまくいく例もあるのでしょうが、それよりも自分が長年培った技術を生かせる別の会社に移った方が本人のためでもあるし、社会全体の利益にもつながるのではないでしょうか？
人に仕事を割り振るのではなく、仕事に人を割り振るシステムにしなければ、日本企業の生産性はあがらないと思います。
例えば賃貸マンションで入居者が過剰に保護（家賃未払いでも追い出しにくい）されている場合、管理会社（家主）は、入居審査のハードルを厳しく設定しようとします。例えば契約者と保証人の源泉徴収や勤務先の決算書等と様々な審査書類を要求します。
逆に、この「過剰な保護」がなくなれば、管理会社もそれほど厳格な審査を行わなくなり、入居者も楽に入居できるようになる。私は後者の方が良いと思っています。貸主・借主双方の負担が減ります。雇用規制でも同じことが起きるのでしょう。
あと、日本では転職を繰り返すことが、タブーとみられますが、例えば現在の転職が難しい状況で「日本人の好きな精神論」を振りかざし、合わない仕事を我慢してこなし、その人はなんとか80パーセントの能力を発揮しているとします。一方では転職が容易な環境で、人々は自分の合う仕事を見つけるまで転職し、自分に合う仕事に就き、その人は100パーセントの能力を発揮することができました。こちらの方が経済的にも労働者にとってもハッピーな事と思いますがなかなか日本ではこういう発想が生まれませんね。
また、解雇規制についての賛否両論は、一方が効率性の観点で論じているのに、もう一方は公正・正義の観点で論じ返すので、話がかみ合わないのかなと思いました。これは経済学者の事前の観点と、法学者の事後の観点のすれ違いと同じようなものかもしれない。
「事前問題」体系的に分析
http://www.jlea.jp/nikkei_1_25.pdf
を読んで「事後の正義」の意味が分かりかけてきたので、思わず書かせて頂きました。ここまで理解するのに１ヶ月以上かかった私は経済学の素養無さすぎｗ。いつもスレ汚しすみません^^;←汚していることにすら気付かない人
過剰な保護がなくなり普通の保護になるだけなので、あまり身構えなくてもいいのに…
>技術者に営業をやらせるようなことを平気でやります。
僕のおじさんは自動車整備工だったけど、年齢とともに地位が上がって店長になっちゃって、
慣れない営業をやることになってヘトヘトになってましたね
私はそれを、�〆�の高賃金を「取り返し分」として正当化するための、そして�∈�の若年者を低賃金で使うための、「捏造された賃金モデル」であると感じます。なぜなら当時の彼らにそんな認識は無かったはずだから。
社会システムが構成員が自覚しているものだけじゃないのは当たり前でしょうが。
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