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労務事情
休憩・休日・休暇 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/5/1
Q

年休権の行使:
年休の事後請求を認めなければならないか?

病気や自己都合などによって欠勤した従業員が, この欠勤日を年休に振り替えてほしいと申し出てくる場合があります。 当社ではこれまで, この申出を一切認めてはいませんが, 年休の行使は自由だから認めるべきだという者もいます。 認めなければなりませんか?
   
A 就業規則や慣行などによって, 年休の振替を認めていなければ, 認める義務はありません。
 
年次有給休暇 (以下, 年休) とは, 労働者が, 労働の義務ある日に, 賃金を保障されて就労を免除される 「休暇」 をいいます。

この年休については, 労基法 39 条により, 労働者の権利として制度化され付与される 「法定年休」 と, 労使が, 就業規則や労働協約などによって自主的に設けた 「法定外年休」 (たとえば, 法定の年休日数を上回って付与される超過分の年休日数や, 時効によって年休権が消滅した年休を積み立てて, 特定の目的のために利用する積立年休など) がありますが, 労基法の規制に服する年休は法定年休であって, 法定外年休については, 年休の請求条件や年休の買い上げなどに関しては労基法の規制に服さず, 労使が自主的に決めることができるとされています (Q49 参照。 なお, 以下この項で年休という場合は 「法定年休」 をいいます)。

労働者は, 一定の期間 「継続勤務」 し (入社初年度は6カ月間, 継続勤務が6カ月を経過したあとは, その後1年間を継続勤務するごとに), 年休の出勤率算定の対象となる期間の 「全労働日」 の8割以上を 「出勤」 すれば, 法律上当然に年休を取得する権利= 「年休権」 が発生しますが (労基法 39 条1項, 2項。 全林野白石営林署未払賃金請求事件・最高裁第2小法廷昭 48.3.2 判決, 労働判例 171 号 16 頁。 なお, 継続勤務, 全労働日, 出勤の意味についてはQ48 で取り上げます), その日数は, 表1, 表2のとおりです (労基法39条2項および3項。 72条の特例の適用を受ける未成年者の年休については省略します)。

ところで, 労働者が年休権を行使するためには, 原則として事前に, 定められた所定の手続きにより, 年休を取得する時季を指定 (特定) して使用者に申し出なければなりません。 具体的には 「何月何日」 とか 「何月何日から何日間」 年休を取得するなどと, 取得時季, 取得日数を指定して申し出る (請求する) ことになります。 請求は, 遅くとも年休取得日の前日の勤務終了時刻までにはなされなければならないでしょう (東京中央郵便局事件・東京地裁平 5.1.27 判決, 労働判例 628 号 71 頁, 高栄建設事件・東京地裁平 10.11.16 判決, 労働判例 758 号 63 頁)。 この取得時季の指定=請求を年休の 「時季指定」 といい, この権利を年休の 「時季指定権」 といいます。

使用者は, 労働者から年休の取得請求があった場合は, 請求された時季に年休を付与することが事業の正常な運営を妨げないかぎり, 請求のあった時季に年休を付与しなければなりません (同法4条。 Q49 参照)。

また, 労働者の年休取得の単位は 「労働日」 であり, 労働日は原則として暦日計算 (午前零時から午後 12 時まで) です。 したがって, 1勤務 16 時間隔日勤務, あるいは1勤務 24 時間の1昼夜交替勤務で, 1勤務が2暦日にわたる場合も暦日の原則は適用されますので, 当該1勤務の年休は2日, つまり2暦日の年休を取得したことになります (昭 63.3.14 基発 150 号 (39 条))。

ただし, 「交替制における2日にわたる1勤務及び常夜勤勤務者の1勤務については, 当該勤務時間を含む継続 24 時間を1労働日として取扱って差支えない」 とされています (前掲・基発 150 号 (39 条)」。

なお, 半日年休の請求については, 年休は1労働日を単位とするものであるから 「使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない」 (前掲・基発 150 号 (39 条)) とされています。 認める義務はないが, 認めても違法ではないということです。

ところで質問は, 病欠などにより欠勤した日を, 後日年休にしたいとの申出がある場合, これを認めなければならないかということですが, 前述したように, 年休は事前請求が原則です。 したがって, 就業規則や労働協約あるいは慣行などにより, 年休の事後請求=年休の振替を認める取り扱いがなされていないかぎり, これを認めるか否かは, 使用者の裁量によることになります。

この問題について裁判所は, 前掲の高栄建設事件において次のように説示しています。

「労働者による有給休暇の請求は時季指定に係る労働日以前にされなければならないのであって, 有給休暇の請求が時季指定に係る労働日以後にされた場合の有給休暇の請求とは, 有給休暇の請求が事前にされなかったために当該労働者の指定に係る労働日の就労義務が消滅しておらず, したがって, 当該労働日は欠勤と取り扱われたことについて, 労働者が欠勤とされた日を有給休暇に振り替える措置 (いわゆる年休の振替) を求めるものにすぎず, 労働基準法 39 条4項に規定する有給休暇の請求とは異なるものである。 そして, 使用者が年休の振替を認めるかどうかは使用者の裁量に委ねられているというべきである」。

表1 一般の労働者
継続勤続年数(年) 0.51.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
付 与 日 数(日) 10 11 12 14 16 18 20
表2 パートタイマーなど, 週の所定労働時間が30時間未満の労働者に対する比例付与
週の所定
労働日数 年間の所定
労働日数(日) 継続勤務期間 (年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
付与日数(日) 4日 169〜216 7 8 9 10 12 13 15
3日 121〜168 5 6 6 8 9 10 11
2日 73〜120 3 4 4 5 6 6 7
2日 48〜 72 1 2 2 2 3 3 3

野村勝法

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