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民主党代表選の投開票日を翌日に控えた15日、岡田克也副代表と鳩山由紀夫幹事長が公開討論会で直接対決した。鳩山氏は小沢一郎代表の党運営や安全保障政策を批判し「脱小沢」色を演出。「敵は自民党」と、互いに政策面の違いがないことを強調する場面も目立ち、「親小沢」「非小沢」の対立構図打ち消しに双方が動いた形となった。ただ、両陣営の多数派工作は激化しており、党内に異論の強い改憲論議はともに封印した。【上野央絵】
「小沢代表の時代に、なかなか執行部といえども透明性の中で暮らすことができなかった」
鳩山氏は小沢代表体制の問題点として、党の経理や候補者選定で不透明な部分があったことをあえて指摘し「徹底的に透明度を高めていく必要がある」と述べた。
この背景には、小沢代表の辞任表明後、党内で小沢氏支持グループを中心に鳩山氏を後任に推す動きが広がり、「鳩山氏を後継に据えて院政を敷くつもりでは」との疑念が噴き出している現状がある。鳩山氏の発言には「かいらい」批判をかわす狙いがあるとみられるが、鳩山氏自身、幹事長でありながら、小沢氏から十分な情報を伝えられなかったことへの不満もにじんだ。
国連決議に基づく国連の活動であれば海外での武力行使も憲法に違反しないという小沢氏の持論についても、鳩山氏は「小沢氏は国連至上主義。国連が認めたら何でもやるべきだという発想を踏襲するつもりはない」と明言。岡田氏も「国連決議があっても武力行使そのものは認められない」と指摘した。
その一方で、鳩山氏は代表就任後の執行部人事で小沢氏を選挙関係の要職に迎える考えを示しており、「しっかりとした役を与え、頑張ってもらう」と改めて強調。岡田氏も「小沢さんは能力、経験、選挙における大変な蓄積がある。ぜひ活用して選挙に臨みたい」と、小沢氏に協力を求める考えを表明し、小沢路線の「継承」か「刷新」かの争点がかすんできた。
「政策はそう大きな違いはないと思います」。岡田氏は討論会の冒頭から切り出した。
鳩山氏も「戦う相手はお互い同士というより麻生政権」と同調し、小泉構造改革や地方分権を巡る見解を岡田氏にただした後、「すべて一致しており、ディベートにならない。民主党のPRとしてはありがたい」と言って会場の笑いを誘った。
企業・団体献金の全面禁止を巡っても、小沢氏辞任前には、岡田氏は現実的配慮から慎重姿勢、鳩山氏は小沢氏の意をくんで積極姿勢だったのに比べ、この日はともに「3年後の全面禁止」で歩調を合わせた。
年金制度改革は地方分権と並ぶ民主党の目玉政策。当然、両氏の主張は一致するが、それに伴う消費税率の引き上げについては、議論することも否定する鳩山氏に対し、岡田氏は議論の必要性を強調することで年金改革への熱意の違いを印象づける作戦に出た。
岡田氏は自ら主導した超党派議員による年金改革案を説明したうえで「消費税の議論もセットになる」と主張した。
鳩山氏は基礎年金の税方式への移行に20~40年かかることを指摘したが、岡田氏は「移行期間中、まったく消費税を上げる必要がないということではない」と畳みかけた。
憲法改正を巡っては、岡田、鳩山両氏ともに慎重な発言に終始した。
岡田氏は、改憲の必要性は否定しなかったものの「かなりプライオリティー(優先度)は低い」。祖父・鳩山一郎元首相ゆずりの改憲論者であるはずの鳩山氏も、地方分権や経済立て直しには「たいへんな胆力が必要」として「首相になったときに即、憲法改正に手をつける状況にない」と述べた。
代表選後、挙党体制で政権交代を目指すに当たって、党内対立の火種となる憲法論議は封じざるを得ないのが実情。同時に、投開票を翌日に控えたし烈な多数派工作の中で、両陣営の「草刈り場」となっている護憲派の旧社会党系グループへの配慮もうかがえる。
集団的自衛権行使に慎重な政策集団「リベラルの会」(代表世話人・平岡秀夫衆院議員ら15人)は14、15日、憲法9条堅持などを盛り込んだ政策を両陣営に持ち込み、改憲論議を進めないようくぎを刺した。
毎日新聞 2009年5月16日 東京朝刊
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