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喜びの帰宅、残る不安 “風評被害”に懸念 '09/5/16

 新型インフルエンザ感染を受け、不自由な一週間を過ごして十五日に停留が解除された大阪府寝屋川市の府立高校の生徒ら。病原性は通常のインフルエンザ並みとみられ、当初の四人以外に感染拡大はなかった。

 ただ影響は少なくない。進学をひかえた三年生が半数を占め、勉強の遅れが気になる生徒もいた。着替えや日用品が不足し、高校は教材や日用品を急きょホテルに送った。テレビで報道される自分たちの話題に不安を覚えた。初の感染例として注目され、いわれのない“風評被害”が出る懸念もある。

 大げさにも見える今回の措置は、国の行動計画が強毒性のH5N1型鳥インフルエンザを主に想定しているため。二年生の男子生徒(16)の父親は「今回の措置に異議はない」としながら、「病原性の強さに応じたきめ細かい対応が取れなかったのか」とも漏らした。

 「弱毒性の流行は行動計画の想定内だ」と語るのは国立感染症研究所の岡部信彦おかべ・のぶひこ感染症情報センター長。「最初は守りを固めておいて、後は柔軟に対応する。海外の症例や生徒らの症状をみると、このウイルスは七日間の停留で十分だ」と話す。

 ただ「今回は水際対策が功を奏したが、毎回うまくいくとは限らない。国内発生に備える必要がある」と警告する。

 学校の感染防止策が不十分だったのに加え、渡航先の安全確認にも課題を残した。京都産業大の大槻公一おおつき・こういち教授(獣医微生物学)は「致死率が高いウイルスが発生した場合、さらに徹底した対策が必要になる」と話す。

 一方、カナダへの短期留学にかかわった大阪府寝屋川市には、行政責任だけでなく生徒らを中傷する電話が相次いだ。大槻教授は「本当に根絶しなければいけないのは、そうした人たちの醜い心だ」と言い切る。




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