都内に103施設ある無届け老人施設の約半数は、老人福祉法に基づく有料老人ホームとしての届け出義務を課せられないことが、都の調査で分かった。住宅の提供業者と訪問介護や配食サービスの提供業者が契約上、異なるため、「賃貸住宅」と判断せざるを得ない場合がほとんど。中には確信犯的に「脱法」を狙っているとみられるケースもあり、都は国に対し、実態に即した指導ができるよう法制度の見直しを求める考えだ。
これは群馬県渋川市の無届け老人施設で起きた火災を受けた調査。既に廃止されているなどの理由で調査できなかった9施設を除く46施設が有料老人ホームに該当、残る48施設は該当しないと見なされた。
無届け施設が都内最多の20施設ある大田区では、12施設が「非該当」。非該当施設の入居者を今年3月まで担当していたケアマネジャーは、「マンション内に2室を借り、各部屋をベニヤ板で仕切って20人程度を入居させていた。入居者はほとんど認知症。夜間は1人のヘルパーが全員を見回り、食事もすべて作っていた」と話し、実態は有料老人ホームだったと明かす。
区生活福祉課によると、この事業者が区内に開設する7施設に生活保護受給者58人が入居しているという。
都高齢社会対策部によると、非該当施設には届け出の法的根拠がなく、現状では指導が難しいという。狩野信夫部長は「非該当施設の中には、住宅と他のサービスを独立させ、高度の質を維持しているケースもあれば、貧困ビジネスと言わざるを得ないケースもある。一定の基準を設けた上で、個々のケースに対応していく必要がある」と話している。【市川明代】
毎日新聞 2009年5月16日 地方版