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スーパー戦隊シリーズ 創作SSスレ

1 :名無し:2008/10/20(月) 16:20:06 ID:U66KzPhz
ここは東映スーパー戦隊シリーズ
のパロディ小説、ギャグ小説などを考えて
書くスレです

36 :創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 11:06:57 ID:PkeDMy3M
まじすか わざわざどうも
じゃあ近いうち巣にしよう

37 :創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 15:31:06 ID:PkeDMy3M
まずは移行作業的なことをしようっと

38 :シュバルツェル・レオパルト 誕生編1:2009/03/02(月) 15:33:28 ID:PkeDMy3M
 せまいキッチンの小さなテレビは、テロリスト幹部護送のニュースを放送していた。

――ブラックスミス太子を名乗るテロリストはアメリカでさらに取り調べを受けたのち、
国際司法裁判所へと送られる予定です。超日本警備社とヒーロー学園から派遣されたヒーロー
が護送するとのことで……

 朝食のパンをむりやり腹に詰め込んだナオコは、慌ただしく家を出た。
「いってきまーす」

 ミドルの黒髪が揺れ、制服のスカートがひるがえる。足音が歩道を移動した。
 どこにでもあるような光景だ。
 高校生の彼女は、今日小テストに出るかも知れない英単語を頭で繰り返した。
 平凡ながらもささやかな幸せの続く毎日を、ナオコは疑わなかった。
 毎日か判で押したように同じであることに、特に不満もない。
 まさに今出発しようとするバスに向かって、ナオコは懸命に駆けた。

「乗ります、乗りまーす!」
 突然、ナオコの目の前が黒くなった。
 見上げると、黒い仮面がある。目の部分だけ開いた鉄の仮面はシンプルだが不気味だ。
 ナオコは黒い腕に抱えられ、地から離れるのを感じた。

「ちょっ、何?」
 鉄の鎧に身を固めた男は、ナオコを抱えて空を駆けた。
 ナオコが悲鳴を上げても、地上ははるか下だ。風に身をこすられ、ナオコは身動きも
とれなかった。

 気づけば、ナオコは高層ビルの屋上にいた。風が強く吹いてナオコの髪を乱した。
 はるか下に見下ろせる街では、多くの人々が変わらぬ毎日を忙しく生きている。
 鎧に黒い仮面の男が、ナオコに近づく。

「おおプリンセス! 会いたかったぜ」
 仮面の裏から聞こえる声は、意外によく通る軽いものだった。
「プリン? あ、あの、な、なんですかこれ」
「すまないが人質ということになってもらう、ソーリーソーリー」
「ひ、人質って……」

「私を覚えていないのか?」
「え?」
「記憶を操作されているのだな」
「へ?」
「いいんだ、私は気にしないぜドントマイン。少しずつ思い出せ。私はブラックスミス太子」

39 :誕生編2:2009/03/02(月) 15:35:11 ID:PkeDMy3M
 どこかできいたことがある、と少し考えてから、ナオコは思い出した。
「あ、テレビでやってたテロリスト?」
 ブラックスミス太子を名乗る男は仮面をかぶった顔でうなずいた。
 人質の意味を知って、ナオコはまた恐怖に身をすくめた。
 たまに新聞に載るテロリストで、線路を破壊したりダムを決壊させようとする悪人だ。
 屋上に吹く風がやや弱くなった。

「ナオコ、マイワイフよ」
「はあ?」
 ナオコは思わず高い声を出した。
「ともにヒーロー学園に入ってくれ、シュガーベイベ」
「ヒーロー学園?」

 海に浮かぶ島にあるというヒーローの学園。その存在は、ナオコも知っている。しかし、
自分に縁があると思ったことはない。自分の平凡さにナオコは自信がある。
「ヒーロー学園ならすぐ警察に捕まることはない。ヒーローとは何なのか、正義とは悪とは
何なのかを私は知りたい」
「はあ……そんなこといわれても。あの、人違いじゃないでしょうか」

 ナオコが弱々しく言うと、ブラックスミス太子は仮面の奥の瞳に悲しみの色を浮かべた。
 その目に見つめられると、ナオコは体の芯に何か熱いものをおぼえた。

 不意に、見つめ合う二人に影が投げ掛けられた。
「見つけたぞ、ブラックスミス」
 白鳥のような大きな羽根を背負う短髪の男だ。ジャージを着てバレーボールを手にして
いる。

「一球入魂、勝利のアタック! バレーボールズ・ユウト!」
 空中で背の羽根を広げている以外は、ユウトは普通の人間に見える。ユウトはバレーボール
を高く放った。
「いくわよーっ! サーブ!」
 ユウトに打たれた球はオーラをまとって、ブラックスミスを襲った。
 黒い鎧にボールが激突すると、爆発に似た閃光が走った。

「おのれ、ヒーロー学園か……」
 おびえるナオコの前で、ブラックスミス太子の仮面が落ち、音を立てた。
 ブラックスミスの黒い瞳は冬の夜空を思わせるように澄んで輝きを宿し、通った鼻は高く、
あごは細い。長い白金の髪が風で男の顔にかかった。

「あ、あの……」
 ブラックスミスの素顔に、ナオコは恐怖も忘れて見とれた。ただ顔が美しいという以上に、
ナオコは何かを感じた。かつてこの人に会ったことがある、というかすかな記憶だった。

40 :誕生編3:2009/03/02(月) 15:36:55 ID:PkeDMy3M
 ブラックスミスは静かに怒りを燃やした。
 バレーボールは浮かび上がる。
「よっしゃあ、ラリーがつづくぜ、アタック!」

 まだオーラをまとうバレーボールを、空飛ぶユウトがまた打った。
 ますます威力を高めて、バレーボールは高速回転しながらブラックスミスに飛び掛かる。
 地面に落とさず打てばバレーボールは力を増す。ユウトの能力だ。

 砲弾のようになったボールがブラックスミス太子を撃ち、黒い体を弾き飛ばした。
 まぶしい光が飛散する。
 キャアと叫ぶ以外ナオコは何もできず、座り込んで身を震わせた。

「あっ人質がいたのか。やばかったな……」
 ユウトはボールを追って旋回した。

「クェーッ!」
 と突然、甲高い鳴き声が響いた。
 ユウトとは別の、黒い羽根を広げた何かが飛んでいる。クチバシを付けて羽毛で覆われた
顔の、軍服を着た鳥人間だ。
「あちき、ブラックスミス様のしもべ、シュヴァルベ将軍ざんす! 愛刀『大飛燕』と『小飛燕』
の餌食になるざんす!」
 クチバシを上下させながら、両手に大小の日本刀を光らせて鳥人間が急降下する。
 とっさにユウトは飛び上がって二振りの刀をよけた。
 ボールは屋上に落ちて力をなくした。

「くそっ、鳥怪人がぁ!」
 ユウトはいったん降りてボールを取ろうとする。シュヴァルベは左右の刀を手に飛び込み、
させまいとした。二人の飛行超人がとびまわり、白や黒の羽が雪のように舞い散った。

「太子、ここはあちきにお任せざんす!」
 シュヴァルベ将軍がクチバシから声を飛ばすと、ブラックスミスはナオコの手を取った。
「ゆこう、ナオコ。明日へランナウェイ!」
「いえ、あの、ランナウェイって言われても」


 どうすべきか、ナオコは迷った。ブラックスミスは美しい顔をしているが、テロリストだ。
 白い羽根を生やして空を飛ぶジャージの男はヒーローらしい。
 迷っていると、ブラックスミスの足元で床がうごめいた。
 床はうねるとブラックスミスにまとわりつき、鎧のすきまに入って首を絞める。

41 :誕生編4:2009/03/02(月) 15:37:54 ID:PkeDMy3M
「レオパルト、貴様……!」
 ブラックスミスを突き放すと、不定形の物体は獣の形へと姿を変えていく。
 あらわれた黒いヒョウは口を開閉し牙を見せた。
「ナオコ様、ここを離れましょう」

 立て続けに色々なことが起きて、ナオコは混乱気味だ。
 レオパルトという黒ヒョウはかまわず、ナオコの首をくわえ、引きずるように駆けた。

「マイワイフ!」
 追いかけるブラックスミスの腕を、すばやくユウトがつかむ。
「おっと、市民に手は出させないぞテロリスト!」
 ブラックスミスはすずやかな目でユウトをながめる。
「その服は化学繊維か?」
「だったら何だ」
「次会うときはコットンを勧める」

 ブラックスミスが言い終わると同時に、ユウトのジャージは黒くなった。
「ぐあっ、重っ?」
 鉄になったジャージのせいで、ユウトはへばりつくように倒れた。
 周囲にある無生物や、生物由来の物(綿や絹など)以外を鉄にするのがブラックスミス
の能力だ。

 ブラックスミスが見回すと、すでにナオコはいなかった。
「クェッ、殺しますか?」
 白い羽根を広げて腹ばいになるユウトに、鳥人間シュヴァルベが光線のような二振りの
刀を向ける。

「ほうっておけ。ヒーローを一人殺せば二人のヒーローに恨まれる。スマートに行こう」
「そうざんすね、ちょっといい男でござんすし」
 それぞれの刀を鞘におさめるシュヴァルベの体付きは、女のものだった。
 ユウトは身震いする思いだが、身震いすらできない。
「他のヒーローか超日本警備社が来ないうちに離れよう」
 ブラックスミスを腕に抱き、シュヴァルベは飛び上がった。
 黒い羽を何ひらか残し、二人のテロリストは去った。

42 :誕生編5:2009/03/03(火) 17:31:45 ID:BUTAyNhu
 神社の境内で、ナオコは解放された。ブレザーの汚れをナオコは気にした。
 街の神社に黒いヒョウは、いかにも不自然だ。
「あ、あのう、私、何が何だか」

「無理もありませんね。あなたは記憶を操作されて、自分をずっと女学生だと思っているの
です」
 目を光らせる黒いヒョウはあごを動かし、りゅうちょうにしゃべる。流線形に近い黒い体は
目を奪うようで美しい。
「私はレオパルト。あなたを見守っていました」

「人違いじゃないですか。私は本当にただの学生で……」
 ナオコが小さな口で訴えるが、レオパルトは首を振ってヒゲを揺らした。
「それはツクヨミ様に与えられた仮の記憶です。同じような毎日をコピーして植え付けた
だけです」

「そんなこといわれても……」
「じゃああなたに両親がいますか」
「親は物心つくまえに亡くして、義理の父母がいるわ」
「違います。ツクヨミ様が金を渡して、そういうことにしているだけです」

「嘘よ! 本当の親みたいにしてくれてるわ」
「ですからその記憶はツクヨミ様がそのように作っただけで、実際にあなたが今のような
生活をはじめたのはほんの数ヵ月前からです」
 レオパルトの婦人のような声には、冷酷な響きがあった。
「そんな、そんなはずは……」
 ナオコは必死に今までの人生を思い出そうとした。しかし、思い出されるのは同じような
日々の繰り返しばかりだ。

「もしその義理の親に愛されてると思うなら、それは別の愛の記憶と混同しているのでしょう」
「別の愛……」
 ブラックスミス太子の顔がナオコの脳裏に自然と思い浮かぶ。

「私は……ヒーロー……?」

 何かの気配を察知し、レオパルトは身構えた。
 赤い鳥居をくぐって、黒い鎧、白金の髪をしたブラックスミスが歩いてくる。
 鎧は悪のロボットか、魔神の像か何かを思わせた。

「ここにいたか、マイリトルプリンセス」
 ブラックスミスはユウトにやられたダメージをまだ残して、ゆっくりと歩いた。

43 :誕生編6:2009/03/03(火) 17:33:53 ID:BUTAyNhu
「ああ……ブラックスミス……」
 夢遊病者のように歩きだそうとするナオコの前に、レオパルトが四つ足で立ちふさがる。

「いけません、ナオコ様。ブラックスミスは悪に染まってしまったのです」
「え?」
 そのとき、木が枝を揺らし、葉が音を鳴らした。
 若い女が飛び出してきた。浅黒い肌で茶の髪を乱している。
「獣王変身!」
 女が姿を変え、ライオンを模した仮面を付けて武装した姿になる。

「千尋の谷もはい上がる! 百獣の王女、正義の獅子乙女ライオンマスク!」
 メスライオンなので、たてがみはない。勇ましい吠え声を空に響かせ、ライオンマスクは
砂利を蹴った。

「またしても!」
 いらだつブラックスミスにライオンマスクが突進する。
「ライオン拳獅子十六連発!」
 一瞬にして十六発のパンチがブラックスミスにたたき込まれる。
 ブラックスミスの体は吹っ飛んで狛犬にぶち当たる。石の狛犬が破壊されてがれきが弾け
飛び、砂埃が舞い上がった。

「助けに来ました。大丈夫ですか」
 ライオンマスクは丁寧にきいたが、ナオコは恐ろしくてうまく口がきけない。
「は、はあ」
 ライオンのマスクは妙にリアルだ。
 音を立てて、ブラックスミスが立ち上がった。
「やってくれたな、正義」
 ブラックスミスが念を込めると、彼の周囲にある砂利が黒くなって浮かび上がる。
 ただ無生物を鉄にするばかりでなく、彼はそれを操ることができる。ブラックスミス(鍛冶屋)
と呼ばれるゆえんだ。

 弾丸と化した砂利が雨よあられよとライオンマスクに降り注ぐ。
 銃弾に撃たれてもヒーローだから死んだりはしないが、さすがに弾数が多い。
 ライオンマスクはかがんで防ぐしかない。

「ここは場所が悪かったようです」
 レオパルトは身を低くしてブラックスミスに近づいた。
 ブラックスミスの踏む石畳が黒く堅くなっていく。
「裏切り者のフーリッシュキャットめ」
「裏切ったのはあなたでしょう。私たちはクライムファイターのチームでした」
 レオパルトはブラックスミスと対峙しつつ、ナオコにきかせて言った。

「私たちはツクヨミ様をリーダーとする、無法を無法にて裁く闇の正義でした。しかし、
ブラックスミスは悪に堕ちました」
「おまえにはわかるまい」

44 :誕生編7:2009/03/03(火) 17:36:09 ID:BUTAyNhu
 鉄になった石畳が揺らめき、細くそそり立って槍が形づくられる。
「せめて一撃で葬ってくれる、レオパルト!」

「ナオコ様、お逃げください!」
 レオパルトは強く願い叫んだ。迷うナオコを、ライオンマスクが抱えるようにした。
「よくわかりませんが、あのヒョウに任せましょう」
 ライオンマスクはナオコとともに素早く跳び、神社の裏手へと消えた。

 レオパルトは牙をむき、爪をブラックスミスに向ける。
 ブラックスミスの槍は伸びて、レオパルトの腹を貫いた。
 レオパルトはかまわずそのままブラックスミスの頭に爪を立て、咬みつこうとあごを大きく
あけた。

「不定形の貴様には無駄だったか? これならどうだ!」
 槍は形を変え、傘の骨のようになって枝を広げた。レオパルトはいくつもの欠けらに分断
され、無惨に引きちぎられる。
 いくつかの黒い塊が砂利の上に落ちた。

「愚かなアニモーよ。さて」
 ブラックスミスはナオコを探して辺りを眺め回した。古びた神社が何事もなかったかのよう
に構えている。
「シュヴァルベの報告を待つか……?」
 シュヴァルベは目で見た映像をテレパシーでブラックスミスに送ることができる。


 神社の裏から逃げたナオコとライオンマスクは、陸橋の下に身をひそめていた。ライオンマスク
は変身を解き、女の姿に戻った。浅黒い肌、茶の髪をした若々しい女だ。
「大丈夫? 私はサエジマ・ナミ」
「あ、ヤス・ナオコです」

 ナミは上着のポケットからメモ帳をとった。
「メモっとこう、ナオコ、と。驚かせちゃったね。私の変身ちょっと恐いから」
「は、はあ、いえ」
「私たちはヒーロー学園の生徒よ。学園外活動の一環でテロリスト護送の手伝いしてたんだ
けど、まさか脱走の現場に居合わせることができるなんて! すごくラッキ……い、いえ」

 本音を言いそうになったナミは、あわてて首を振った。
 おい、とナオコは心で突っ込む。
「それにしても、あなたユウト先輩は人質って言ってたけど、あの犯罪者と知り合いなの?
 あのヒョウは何?」

45 :誕生編8:2009/03/03(火) 17:38:31 ID:BUTAyNhu
「それは私が教えてほしいくらいで……」
 言いかけたとき、ナオコの頭に声が響いた。
(ナオコ様……)
「あっ、レオパルト?」

 ナミはきょとんとした顔でナオコを見つめている。ナオコにしかレオパルトの声は聞こえて
いないらしい。
(私の体は滅びました。まだ記憶が戻りませんか?)「うん……ごめん」
(あなたが『ブラックマリア』になればブラックスミスにも勝てるのですが)

「ブラックマリア……」
(あなたのヒーローネームです。こうなればしかたありません。私の精神と合体して変身し、
ブラックスミスを倒して改心させましょう)
「合体って、え?」

 ナオコの体が光り輝いた。エネルギーを発して、ナオコは姿を変える。

 体はなめらかに黒くなり、長くしなやかな尾が生えて、顔はヒョウになる。
 ナオコは夜行性の光る目で、自分の手足を眺めた。

「やだあ、なんか全身タイツみたい」
「セクシーでかわいいよ、私の変身より」
 ナミのフォローに、変身したナオコは首をかしげ尾を垂らす。
「そうですかぁ……?」
 ナオコの頭に立つ、尖った耳が動いた。いまや聴力は常人の数百倍だ。
(来ますよ!)
「うん」

 シュヴァルベの腕にぶらさがったブラックスミスが、空からやってくる。
「クェッ、あれはなんざんしょ?」
「レオパルトのようだが……あいつ、人型になってどうしようというんだ」
 シュヴァルベが高度を下げる。ブラックスミスは飛び降り、アスファルトを踏んだ。

「おまえはレオパルトか?」
「わ、私は……」
 ナオコの頭で声がする。
(あなたはシュバルツェル・レオパルトです)
「私はシュバルツェル・レオパルト」
「やはりレオパルトか、馬鹿キャット!」

 さっきまでプリンセスだったのに今度は馬鹿キャットかよ、とナオコはすねたくなる思いだ。
 瞳を閃かせ、ナミはまたライオンマスクと化す。
「今度こそ仕留めるわ」

「生意気な猫どもざんす!」
 軍服の鳥人シュヴァルベが二振りの刀を抜いた。

(あれも私と同じ生体アンドロイドです。今なら戦えるはずです)
 ナオコの頭の中で、またレオパルトの声が響く。
「そ、そう言われても」
 長い刃物のまぶしい輝きが、ナオコを怯えさせた。

46 :誕生編9:2009/03/04(水) 19:54:53 ID:PlRtW4H7
(あなたは五千年前地球にやってきた宇宙人バビルの遠い子孫なのです。ブラックスミスも。
サイキックがあります。戦いかたを教えます)
 高速で襲いかかる刀をレオパルトは紙一重、体をずらしてかわすと拳を繰り出した。

「ライフルカノンパンチ!」
 強烈な一撃がシュヴァルベの胸を打つ。
「グェーッ!」と空を裂くかのような叫びをクチバシからきかせ、シュヴァルベは宙を舞った。
 鳥人間が地に落ちると、黒い羽が散らばる。
「や、やった」
 自分の力に驚愕するシュバルツェル・レオパルト・ナオコ。
 ライオンマスクも驚いて立ち尽くした。
 ブラックスミスが足元のアスファルトを鉄に変え、長い剣を作る。
「許さんぞレオパルト……斬り刻んでくれる」
(あなたはただ強いだけではありません。サイキックを使ってください)
 語りかける声にナオコはうろたえた。
「そんなこと言われてもぉー……」

 ブラックスミスが踏み込み、空を割って黒い剣を振り下ろす。
 体が本能的に反応し、シュバルツェル・レオパルトは剣をよける。すぐに爪を出し、
ブラックスミスを斬った。

「サイキック・斬鉄爪!」
 光が一閃し、ブラックスミスの体を覆う黒い鎧に亀裂が走る。卵の殻がむかれるように、
鎧はブラックスミスの体からはがれていった。
 白い肌ははまったく斬れていない。

(サイキック・斬鉄爪、やわらかいものは斬れませんが硬いものなら何でも斬れます)
 頭に響く解説もナオコにはBGMにもならず、心に留まらない。彼女はただ唖然とした。
 ブラックスミスのたくましい裸体があらわになると、ナオコはヒョウの顔を横に向けた。
「あ、あの、すみません」
 ライオンマスクも手で目を覆う。

「おのれ、レオパルト……!」
 ブラックスミスは斬られた鎧をまた再生しはじめる。生き物のように鉄の破片がうごめき、
ブラックスミスの体に貼りついていく。

 不意に影が落とされるのでナオコが見上げると、上半身裸、下にジーンズのユウトが翼で
飛んでいた。バレーボールを携えている。
「さっきはよくもやったなーっ!」
「ユウト先輩、何で裸なんですか」
 ライオンマスクは恥じらって手を振った。
「だって俺、普通の服着らんねーもん」
 ユウトは背の白い羽根を動かしてみせる。

47 :誕生編10:2009/03/04(水) 19:58:14 ID:PlRtW4H7
「いくわよーっ、サーブ!」
 ボールが波動をまとってブラックスミスへ突進した。ぶつかると光が発し衝撃が周囲に
広がる。
 大音とともにブラックスミスは地に倒れた。斬られた鎧を直す間もなく受けたため、ダメージ
は大きい。

「ナミ、ボール拾え!」
 ユウトが命じ、すぐさまライオンマスクはボールを追う。
「はいっ!」
 トスされると玉はまだオーラに包まれて、空高く上がった。

「まずい、次食らったら……」
 ブラックスミスは苦悶して顔を歪める。

「くたばれ、テロリスト!」
 球が打たれようとする。
 そのとき、空間から太い腕があらわれた。ごつい手がユウトの手首をつかむ。
 ボールはあらぬほうへと落ちていった。
 予想外のことに、ユウトは目をむく。

「やめんか、入学希望者だぞ」
 浮かぶ丸い岩に、ステテコ腹巻の太った男があぐらをかいている。
「あ、あんたは?」
 ユウトが口を動かすと、薄い頭が縦に振られた。

「悪部の事務、ギロチンピエールだ。あいつらは悪部の入学試験を受けるからつれていく。
手を出すな」
「おい、犯罪者だぞ、逃がすのかよ」
「前途有望じゃないか。文句付けたら死刑!」

 たじろぐユウトから離れ、ギロチンピエールは岩を降下させ地に近づいた。
 ギロチンピエールは、ギロチン博士とロベスピエールの遺伝子から生まれた人造人間で
超能力者だ。
 ヒーロー学園研究部により、事務担当として造られた。

「ヒーロー学園悪部入学試験をおこなう。来い」
 ギロチンピエールが濁った目で見下ろす。
 よろよろと立ち上がり、白金の髪を乱すブラックスミスは言った。
「あと一人、ナオコがいないんだ」
(ここにいるんだけどなあ)と、ナオコは複雑な気持ちだ。

「中途半端な時期の試験を認めてやったんだぞ! 遅刻したら死刑!」
 ギロチンピエールは打つような重い声を飛ばす。
「クェッ、太子、超日警も近づいています。ご決断を」
 シュヴァルベがクチバシを主人に近付けた。
 超日本警備社は、民間の警察的組織だ。ヒーロー学園を卒業できなかったり、成績が優秀
でない生徒が優先的に雇われるのが特色だ。

48 :誕生編11:2009/03/04(水) 19:59:25 ID:PlRtW4H7
「おのれ、フーリッシュキャットのせいで愛しのマイプリンセスを置いていかねばならない
とは……」
(だからそれどっちも私だっつーの)
「しかたがない。マイリトルプリンセス・ナオコ、どうかあとから来てくれ」
(ここにいるんだってば)
 ナオコは困ったように、長い尾をぶらつかせた。
 丸い岩の上に座する中年男が、大きな口を動かした。
「この岩に手をつけろ。俺は何かを媒体にしないと超能力が使えんのでな」
 ブラックスミス、シュヴァルベが岩に手を当てる。強い光が発せられた。中年親父が発する
「テレポーテーション!」の掛け声とともに、三人は光に包まれて影になる。
 光が弱まると、そこにブラックスミスたちはいなかった。

 ユウトはゆっくり着地すると、バレーボールを拾い上げた。
「まいったな。どうするよ」
 羽根をたたむと、尻のポケットから布を出し、ユウトはボールを大事そうにふく。
「えーっと」
 変身を解くと、ナミはメモ帳を取り出した。

「超日本警備社とシロキ先生に報告しましょう」
「俺やだなあ。おまえやれよ」
「ええー……」

 何だか気が合ってそうな二人だなあ、などとと思いながらナオコは様子を眺めていた。
変身を解除し、ナオコはもとの学生の姿に戻る。
 ユウトは羽根をびくつかせた。
「うわっ、こいつあの人質かよ。おまえの友達かなんかだと思った」
「ヤス・ナオコさん。ヒーローだったみたいです」
 ナミが紹介すると、ナオコは小さく頭を下げた。
「はい……記憶はないんですけど」

 ナオコは自分が何かを握っていることに気づいた。見ると、黒い猫のような、小さな置物だった。
(これが私の核です)
 またナオコの頭で婦人のような声が響いた。

(ナオコ様。どうかヒーロー学園正義部に入ってください)
「えっ?」
(ブラックスミスが力をつけ、ますます悪の道へ進まぬよう、彼を止める力をつけてください)
「うん……」
 ナオコは迷いの中で、弱々しく返事するしかなかった。
 ブラックスミスにひかれるものがあるのも確かだ。
 彼の黒く深い瞳を思い出すと、ナオコは胸に苦いようなうずきを覚えた。

「う、うん……、やってみる!」

 かくして、ヒーロー・シュバルツェル・レオパルトの学園生活が始まろうとしていた。

49 :創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 20:00:41 ID:PlRtW4H7
移行終わり 次は試験

50 :超新星フラッシュマンVS獣戦士セーラ:2009/03/10(火) 22:27:44 ID:MQlsfMip
新小説は
フラッシュマンと同時期の大ヒットした名劇のアニメ「小公女セーラ」知ってる?
当時戦隊と名劇はわずか1日違いで
フラッシュマンを見た翌日セーラも見た奴はいたのだろうか・・・
そこで戦隊VS名劇っていうのはどう?

ちょうど100年前、タイタンとバラキが友情を結びタイタンが死んだときのこと
地球のロンドンではセーラという少女がミンチン女子学院の明度としてこき使われ苦しい日々を送っていた。
そんなセーラはミンチンに放火の濡れ衣を着せられついに学院を追い出される。
その様子を学院の上からエイリアン軍団が見ていた。
行く当てもなく絶望し歩き回るセーラの目の前に死んだはずの両親が現れる。
(セーラは元はお嬢様だったが父親の死が原因で明度になった)
セーラはエイリアンが化けたとも知らず泣きながら抱きついて気を失うが気がついたときにはラボーの中だった。
ケフレンに「地球で散々苦しんできたお前を拾ったんだぞ」と言われる

そこで改造洗脳でそのまま幹部になってあの90年代を代表する某幼女向けアニメが
元の特撮の話みたいに仲間が突然敵になって今までどんな時も優しかったセーラが冷酷な性格になって人間に復讐するか
それともメスでも改造以降もケフレン達にそのままこき使われてラビアニに変わりメスではネフェルにいじめられるか

セーラがメスに拾われて改造されたところで1986年で戦闘中だったフラッシュマン5人が100年前のロンドンに飛ばされると・・・(タイムスリップ)

http://www.ne.jp/asahi/ramdas/sara/story/story42/index.html
この話のことだから
人間に絶望したセーラの行くあてはもうメスしかない!

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取りに行ったけどなかった。次は一時間後に取りに行くです。
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