現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス
  4. トピックス
  5. 経済気象台
  6. 記事

国家の破綻リスク

2009年4月7日0時53分

 世界的な経済危機に対し、主要国は既に金利政策を使い果たした。それだけに、需要の追加には財政政策への要請が高まる。先のロンドンの金融サミットでも、米英から強い要請がなされた。

 これに対して独仏など欧州からは強い反発が示された。主要国の中で突出して財政事情の厳しい日本は、米国の主張を支持し、追加景気対策を打ち出した。皮肉にも米国の主要紙からは「カミカゼ支出」と揶揄(やゆ)され、国家破綻(はたん)へと向かう自殺行為と書かれる結果となった。

 今回の独仏からの批判にも一理ある。金融機能が不全で、経済に拡大しようという推進力、意欲が乏しいときに、財政金融両面から支援しようとしても、なかなか呼び水にならない。特に選挙を控える日本では「魚のとり方を教える」型の長期戦略ではなく、困った人に「その日の魚を与える」短期的な痛み止め型の政策に傾斜しやすい。それだけ政策の効率が悪く、後々借金のつけが重くのしかかる。そこで米紙は「国民の貯蓄がある間は良いが、高齢化が進み、貯蓄がなくなったときに、この巨大な赤字がファイナンスできず、国家が破綻に向かう」と警告している。

 今日の景気に対し、政府自ら全治3年といい、輸出への過度な依存のつけとも認識する。そうであれば、その間毎日魚を提供していては財布がもたない。日本が得意とする分野で新しい「魚のとり方」を研究し、輸出に代わる雇用機会を国内に創造するしかない。

 米国の要請とはいえ、まず数字ありきの対策を示し、選挙前に「お恵み」的にカネをちらつかせる。そのおカネがもともと国民のものであるとの認識が政府には欠如しているのではないか。(千)

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内