次期衆院選へ向けた自民党の政権公約(マニフェスト)づくりをめぐり、政策の売り込み合戦が始まっている。安倍晋三元首相が憲法解釈で禁じられている集団的自衛権の行使を掲げれば、中川秀直元幹事長は持論の公務員制度改革を提唱。存在感をアピールする狙いとともに、「選挙後」の政局もにらんだ主導権争いの側面もありそうだ。
安倍氏は22日、麻生太郎首相と首相官邸で会談し「集団的自衛権の行使が可能になるよう公約に掲げるべきだ」と進言。首相として臨んだ07年参院選で大敗し、退陣後は動きを控えていたが、今月の訪米で米政府要人と相次いで会談するなど外交・安全保障面で発信を強めている。
自民党は28日、細田博之幹事長が委員長を務める政権公約策定委員会を設置。メンバーの一人は、「安倍内閣が掲げたテーマは07年参院選で国民の心に響かなかった。公約のメーンは景気対策や雇用、社会保障など国民生活に身近な問題だ」と警戒感を隠さない。
一方、中川氏は幹部公務員の降任、降給を内閣が弾力的に行えるようにする公務員制度改革や、議員定数削減の実現を目指す。27日夜、東京都内の日本料理店で武部勤元幹事長ら約20人と会食し「霞が関改革が選挙の大きな争点になる」と公約化に意欲を示した。
「反発もあるが全力で頑張りたい」
28日、自民党本部で開かれた若手議員の会合。菅義偉選対副委員長は「世襲制限」の公約化に決意をにじませた。菅氏のもとには中堅・若手が集まり、ベテラン主導の公約策定をけん制している。会合では、政権公約として定年制導入の是非も話題に上り「選挙後の党運営をにらみ、つばぜり合いが始まった」(若手)との見方も出ている。【近藤大介】
毎日新聞 2009年4月30日 東京朝刊