世界はゆっくり滅んでいる、と誰かが言う。
そうゆっくりと。悲しさを感じさせない程ゆっくりと。

例えばお葬式の後。

とてもとても悲しくて、さんざん泣きまくって。その後に来るぽかん、とした瞬間。
ふと何故か微笑んでみたくなる。誰かに優しくしてあげたいという気持ち。

本当の哀しみって奴を理解したあの日から、ヒトは少しだけ優しくなったのかもしれない。



世界の半分が消えたあの日。
傍らに座る大切なヒトが、なんの前触れもなく赤い水となって、ぱしゃっ、と消えたあの日。

本当の悲しみなんてものは、或る日突然やってくる。
その前じゃどんな激しい怒りも深い憎しみも、我を失う。
ぽっかりと空いた大きな穴。やがてあふれてくる涙。

たくさん泣いて、いろんなものを流しつくして。その底に残ったものはぽかん、とした淋しさ。

残されたヒト達は、共に寄り添い始める。
二度と戻らない祭りの日々を暮れる日に重ね、夕凪の中、そっと身を寄り添う。

傍らに誰かが居ないと、寂しすぎるから。
夜は、寂しすぎるから。

【夕凪ナルコレプシー・各章幕間より抜粋】










このお話はエヴァ@2ch支援WebSite様内
「FF発表・評価版」にて
発表させていただいたものに加筆・訂正したものです。