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新型インフルエンザ:国内感染可能性 感染対策を再確認 経路解明が課題

 新型インフルエンザの感染可能性がある患者が現れた。入国前に感染が判明した大阪府の高校生らと違い、感染が確定すれば政府から国内での発生と認定される初めてのケースだ。今回の患者に渡航歴はない。何らかのかたちで新型ウイルスが国内に侵入し、すでに感染が始まっている可能性もある。

 だが、今回のウイルスは感染しても大半は症状が軽いため、冷静に受け止めたい。一方で政府は国内で急激な感染拡大が起こりうるという前提に立った防止策の強化と、感染経路の解明を急がなければならない。

 米疾病対策センター(CDC)によると、新型ウイルスは発症する前日から発症後1週間、周囲に感染する。潜伏期間は1~7日だ。患者の2メートル以内に近付き、せきやくしゃみで飛び散ったウイルスを含む唾液(だえき)を吸い込んだり、ウイルスが付着した手で目や鼻の粘膜に触れることで感染する。これまでの新型に関する研究結果では、若年層で重症化する割合が高い一方、高齢者で感染者がほとんどいないなど理由がはっきりしない点もある。だが、新型の感染者の症状は季節性インフルエンザと同程度と考えられ、通常のインフルエンザ対策を再確認することが求められる。

 感染者が出た場合、保健所が中心になり濃厚接触者の追跡を始める。感染経路を追跡することができて始めて有効な対策をとることができる。感染者の感染源の特定は欠かせない。厚生労働省は速やかに情報を提供し、国民に冷静な対応を呼び掛ける必要がある。

 また、感染者が高校生であることからも、学校現場での対応を明確にすることも急がれる。過去の感染症の流行で明らかなように、児童や生徒が一緒に行動する学校は地域に最も感染を拡大しやすい。教育への影響を最小限に抑えるとともに、被害を拡大させない対応が求められる。

 今回の新型インフルエンザはだれもが感染してしまうと同時に、他者に感染させる恐れがある。手洗いを励行し、人ごみを避けるなど予防に向けた基本を徹底し、発症が疑われれば冷静かつ早期に各地の保健所などに電話相談することが大切だ。【関東晋慈】

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 ◇新型インフルエンザ相談窓口

▽厚生労働省 03・3501・9031

 (午前9時~午後9時)

▽農林水産省 03・3591・6529

 (午前10時~午後5時、平日のみ)

▽外務省 03・3580・3311内線4101、4102

 (午前9時~午後5時)

▽文部科学省 03・6734・2957

 (午前9時~午後6時半)

毎日新聞 2009年5月16日 東京朝刊

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