在沖縄米海兵隊のグアム移転に伴う日本の経費負担などを規定した米国との協定締結が、国会で承認された。
協定は、日米両政府が二〇〇六年に合意した在日米軍再編のロードマップ(行程表)を確認するものだ。海兵隊約八千人のグアム移転経費について、日本側が現地の施設整備などに限り二十八億ドルを上限に負担すると規定している。
二月に中曽根弘文外相とクリントン米国務長官が署名した協定を政府、与党は日米同盟強化の観点から重視し、四月中旬に衆院で可決された。民主党は将来の安全保障政策が縛られる可能性があるとして他の野党とともに反対しており、参院本会議では承認は否決された。だが、協定は条約と同様に位置付けられ、衆院の議決が優先されるため、両院協議会を経て最終的に承認された。
協定は、海兵隊のグアム移転が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設の「具体的進展にかかっている」とし、ワンパッケージであることを明示している。普天間移設が協定実行への最大課題といえる。
しかし、解決の見通しは立っていない。日米両政府は〇六年春、飛行場の移設先を地元の反対が強かった名護市辺野古沿岸域からキャンプ・シュワブ沿岸部に変更し、V字形滑走路を建設することで合意したが、県側は飛行ルートの問題から反対、さらに沖合への移設を求めている。日米政府は「変更は困難」との立場を取っており、平行線をたどったままだ。
移転経費などについての疑問もある。グアムに日本側の負担で建設される家族住宅が高すぎるといった疑念がぬぐいきれていないが、日本政府は二十八億ドルの具体的な積算根拠を明示していない。
政府側は国会審議で、海兵隊の移転人数について定員が現在の一万八千人から一万人に減る趣旨と説明した。沖縄県によれば駐留海兵隊員は定員を大きく下回っており、純減は約三千人にとどまるとの見方がある。
経費や移転人数の問題も野党の協定承認反対の理由だった。国会の場で突っ込んで議論すべきだったが、迫力を欠いた。安全保障政策をめぐり複雑な党内事情を抱える民主党の姿勢が影響していよう。
国内の米軍専用施設の約75%が集中する沖縄の負担を、どう具体的に軽減できるのか。日本側負担は適正なのか。協定が承認されたとはいえ、政府側には十分説明する責任がある。
全国十八の政令指定都市の市長でつくる「指定都市市長会」の会議が、岡山市で開かれた。四月に政令市に移行し初参加の岡山市にとっては、横浜や名古屋、大阪など大都市の仲間入りを果たした実感とともに、地方分権改革などを積極的に主張する先輩格の政令市長らと同じテーブルを囲むことで、大いに刺激を受けたことだろう。
今回の主要議題だった環境問題では、政令市が持続可能な社会の実現に貢献する環境先進都市を目指すとしたアピールを採択した。京都市は、先進国が地球温暖化防止に向けて温室効果ガスの排出削減を約束した京都議定書誕生の地だけに、環境対策に熱心だ。岡山市も取り組みを加速させているが、市長会の一員として先進事例を参考に、一段と効果的で実効性の高い事業を展開させていきたい。
アピールには、来年名古屋市で開催される生物多様性条約締約国会議などの成功に貢献することも盛り込まれた。岡山市は、地域の環境対策だけでなく地球規模の環境保全に対しても、これまで以上に視野を広げていく必要があろう。
新型インフルエンザ対策でも、政令市は国内流通の結節点であり、諸外国との主要な交通拠点であることから感染の拡大防止に果たす役割は重大との認識から、連携を密にして情報共有などで過度の混乱を招かないよう申し合わせた。政令市の責任は重い。
山陽新聞社が昨年行った市民対象の政令市アンケートでは、岡山市職員の行政能力への不安や資質向上を求める意見があった。指定都市市長会議は、岡山市が世界に目を向け、行政能力を高めるための研さんの場となろう。会議を主導する気概を持って他の政令市と連携を深めてほしい。
(2009年5月15日掲載)