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噂の現場

〜開港延期の失態・・・揺れ続ける立ち木問題〜

2008年11月23日放送  噂の現場

富士山のふもと、静岡空港の開港延期をめぐって、現場は揺れに揺れていた。1900億円を投じた静岡空港は、来年3月に開港する予定だったが、空港から1400メートル離れた場所にある54本の立ち木が原因で、延期に追い込まれた。航空法では、航空機が安全に離着陸できるよう、空港周辺に、高さ制限を設けていて、問題の立ち木は最大で12・7メートルも超え、開港にあってはならない「障害物」。さらに、木が根を張る土地も1・1メートル突出。県の測量ミスだった。県は、その失態を1年間も公表をしていなかったのだ。なぜ、ミスをしたのか。

噂の現場

問題の立ち木は、空港建設反対の地権者の一人、大井寿生さん(49歳)の土地にある。大井さんは、10年前に「噂の現場」の取材を受けた時、「こんなところに空港を作れば、日本の恥。土地は絶対、手放さない」と主張。しかし、その後、大井さんの所有する茶畑や山林計3.1ヘクタールは、強制収用され、空港の建設工事は進められた。ところが、県が、木の伐採を強制できる範囲を決めた際、立ち木は、測量やデーターの修正ミスから、対象から漏れた。去年10月、大井さんは、県の指示に従い、高さ制限にかかる周辺の立ち木を自主伐採。問題の立ち木について「県が勝手に線を引いて残していった部分。この線引きがいい加減ではないか。立ち木は高さ制限をこえているのではないか」と繰り返し指摘したが、県側は「何の問題もないから、そのまま残せ」と言って、耳を傾けなかった。そして、大井さんには、その後、地すべり対策工事という名目で、立ち木を伐採することを求めてきたという。「県は、地すべり対策に応じない私が悪い、などと全部責任を外になすりつけようとしていた。県のミスをうやむやにして隠すための工事は拒否した」といっている。

噂の現場

この立ち木問題は、今年9月、空港建設反対の地権者らが国の事業認定を無効として訴えた裁判で、明るみになったが、静岡県の石川嘉延知事は会見で「立ち木が成長したから、伸びた」と、ミスを否定した。ところが、先月29日に一転。開港延期を正式に表明した際、「地形が複雑で、航空測量にミスが生じた」と説明。石川知事は、立ち木が残った原因について、「3年前に行った航空レーザー測量の精度の誤差。航空測量の精度の限界、図面作成時の県のミス」と議会で答弁して、県のミスを認めた。そして、公表の遅れについて「訴訟を考慮した」と釈明。航空測量した会社は「航空レーザー測量の誤差はわずか15センチ。精度は高いが、一般論として誤差を修正するには、現場の立ち入り調査が必要」というが、県側は「当時、反対運動が激しく、不測の事態を避けるために、現地の立ち入り調査を行わなかった」と弁明した。

噂の現場

そして、県は「苦肉の策」を打ち出した。滑走路を計画より300メートル短い2200メートルにして、高さ制限の問題を解決する形で、暫定開港することを発表。この策なら、立ち木を伐採しなくても、開港できる。そして、滑走路短縮のからむ、航空灯火などの追加工事費1億1000万円の補正予算案を議会に提案、今月6日、可決された。県は、可決を受け「遅くとも、来年7月」の開港を目指し、工事を進めているが、県のミスで税金がムダ遣いされるのだ。さらに、問題は空港に3億円かけて設けた、航空機の着陸を誘導する計器着陸装置(ILS)が、使えなくなることだ。目視での離着になり、パイロットの負担が増すうえ、視界不良の悪天候のときは、別の空港まで進路変更しなければならない。

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新たな問題も浮上した。実は、県の滑走路短縮計画が実現しても、最も高い立ち木がさらに39センチ伸びると、また高さ制限にひっかかり、滑走路をさらに短縮する必要がでてくる。立ち木の大半はヒノキで、「39センチにまで伸びるのは2年以内」と専門家は分析。大井さんの54本ばかりでなく、高さ制限を超える立ち木は、周辺も含め計154本もあることもわかった。静岡空港の「完全開港」に欠かせない立ち木問題の解決。石川知事は、立ち木の伐採に向け今月21日、大井さんが交渉の条件の1つにしていた謝罪記者会見を行ったが、大井さんは、担当した県職員の責任を明らかにすることなども求めていて、「完全開港」の見通しは、たっていない。