2009年5月15日 20時12分 更新:5月15日 21時43分
香川県立中央病院(高松市)での受精卵取り違え疑惑を受け、厚生労働省が不妊治療をしている全国の医療機関を対象に調査したところ、受精卵などの取り違えを防ぐため複数のスタッフによるダブルチェックをしていない施設が16%あることが分かった。不妊治療の安全管理マニュアルを作っていない施設も26%あった。体外受精で生まれる子どもは年間約2万人に上り、厚労省はミスを防ぐマニュアル策定などを盛り込んだ指針に改正し、都道府県に通知した。
体外受精で受精卵を取り違えた疑惑が2月に判明したため、厚労省が3月、公的助成を受けて不妊治療をしている全国564施設で調査した。
その結果、一部で取り違え疑惑の時と同様なダブルチェックとマニュアルの不備が明らかになったほか、事故や事故になる可能性があったミスを院内の責任者に報告する制度がなかった施設も15%に上った。
一方、使用器具に患者名を記載するなどの識別や、複数の患者の作業を同時にしない「1操作1患者」のやり方については、99%の施設が徹底していると回答した。
厚労省は「ミスを防ぐ体制が十分に整っていない施設が多い」として、医療安全管理マニュアルの策定や職員研修の実施、外部委託を含めた倫理委員会の設置などを盛り込んで指針を改正した。
今回の取り違え疑惑を契機に設置された、日本産科婦人科学会のリスクマネジメント委員会委員、苛原稔・徳島大教授は「不妊治療に携わるすべての施設が、早期にダブルチェックを含めた安全確保の体制を整えることが重要だ。今後、マニュアルの整備を各施設に促すなど、受精卵などの取り違えがないように努力したい」と話している。【江口一】