1兆円を競う与野党 農業の体質改善は進まず
農水省はコメ政策改革を通じて、生産者主体の生産調整への転換、過剰米処理での農家の自己負担原則導入、一定規模以上の「担い手」農家への支援の重点化を打ち出していた。WTO(世界貿易機関)の農業交渉や農家の高齢化を見据え、市場メカニズムを前提とした担い手重視に切り替えようとしたのである。
ところが、参議院選挙で大敗。米価も暴落したことで、自民党は改革の全面見直しを農水省に迫った。
自民党の要請を入れて、農水省は34万トンのコメを市場から買い上げ、「適正水準」の100万トンまで備蓄量を一気に積み上げた。これを機に、下落基調にあった米価が回復。自民党の狙いは功を奏したかに見えた。
だが、需給引き締めを狙った生産調整強化はうまくいかなかった。07年度補正予算で500億円を用意したものの、382億円を使い残した。また、自民党は、生産調整非協力の農家に「ペナルティを行う用意」をちらつかせたが、「つくる自由」「売る自由」を否定する「時代錯誤の発想」(生産調整を拒否する福島県内のコメ農家)と批判を浴びた。
自民党の手法に落胆した農業関係者も少なくなかった。
「バラまき的な手法である一方、コメ作りに励む担い手農家への支援が乏しい。転作への助成だけでなく、担い手農家に対して、コメの生産費の一部を財政補助する直接支払い方式を導入すべきだ」(岩手県内で営農指導にかかわる農協職員)。
しかし、自民党は生産調整への協力を条件に、すべての農家に薄く広く配分する手法に傾斜していく。その象徴が08年度補正予算に盛り込まれた381億円に上る「水田フル活用推進交付金」だ。同交付金は、コメの生産調整を実施している農家に対して、翌年度も生産調整を継続することを条件に、コメの作付面積に応じて10アール3000円を一律に配るというもの。政策の効果が不明確で、「農家版の定額給付金」(岩手県の農家)とも揶揄される。
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