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産科医 時間外手当訴訟2009年04月23日
◇医師側「画期的判決」◇ ◆「宅直」不認定に不満◆ 夜間・休日の当直勤務に対する手当をめぐって県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が県を訴えていた時間外手当支払い請求訴訟。22日の奈良地裁判決は、「日中の通常業務と何ら変わらない」とする医師側の訴えを認め、県に拘束時間にあわせた時間外手当の支払いを命じた。原告代理人の弁護士は「画期的」と評価。県側は「想定していなかった」と戸惑いを隠し切れなかった。 判決後、記者会見した原告代理人の藤本卓司弁護士と記者団との主なやりとり。 ――判決をどう評価するか 当直時間全部が労働時間なのか、実際に診療行為にあたった時間だけが労働時間なのかが争点だった。判決は私たちの主張を全面的に認め、始めから終わりまで全部が労働時間と判断し、労働基準法に基づいて割増賃金を支払わなければならないと命じた。画期的な判決だ。 ――原告の思いは お金が目的というより、あまりに過酷な環境をどうにかしてほしいと。「こんな巨額な割増賃金が発生すること自体がおかしい。そんなのが発生しないような職場にしてほしい」と話していた。 ――今後どうすれば 国レベルの政治的な決断で措置を講じなければならない。今の予算内では不可能だ。 ――一方、救急患者らに備え、自宅待機する「宅直」は手当が認められなかった 医師が自主的にやっているとして簡単に退けられたが、この点は非常に不満。当直勤務は奈良病院では1人だが、帝王切開手術というのは1人ではできない。本来当直は2人必要だが、産科医不足の現状からできないので、やむを得ずに宅直をやっている。 ――控訴は 争点だった当直勤務について勝ったので、6、7割方勝利と考えている。原告と相談した上で決めたい。 ◎県「想定外」と戸惑い 県は判決後、武末文男・健康安全局長らが会見した。冒頭、「医師には、厳しい労働環境で頑張っていただいているとの認識の下、08年4月からは分娩手当や勤務時間外の呼び出し手当を支給し、処遇改善に取り組んできた」「十分な医療を継続的に提供できる体制を整備するのにどんなことが必要か、日本の医療制度のありようが問われているものと、判決を重く受け止めている」などとするコメントを読み上げた。記者団との主なやりとりは次の通り。 ――判決について 裁判の過程で和解案として、約24%の活動分は支払うという案は出した。全く支払わない、というのはないと思っていたが、すべてを支払え、という判決は予想していなかった。 ――当直が1人体制だが 産科医不足のなか、2人に増やせるめどは立っていない。当直で不十分であれば、宅直も一つの選択肢だ。 ――宅直については県の主張が認められたが 宅直であっても呼び出されて処置をした分は時間外手当を支払っている。全国でも宅直の日そのものを、普通に働く日と同じように認めているところは少ない。日本では主治医制というのがあって、宅直でなくても呼ばれたら出てくる。それを全部勤務と認めるのか。医師の職業倫理としてされてきたことを制度としてどう扱うかが問題だ。 ――今後は 当直明けの応援医師の配置は小児科で一部始まっており、今後広げたい。産科や救命救急センターは当直日数が多く、厳しい労働環境であるのは間違いない。診療科によって当直回数が2〜4倍になっており、解消しなければならないと認識している。
マイタウン奈良
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