福岡高裁判決要旨
福岡高裁が15日言い渡した3幼児死亡事故の判決要旨は次の通り。 【事故原因】 現場の道路には左側が低くなるようにこう配がつけられ、ハンドル操作をせず走行すると進路は左方向に行ってしまう。直進には、前方を見ながら絶えず右にハンドルを微修正する必要があり、長時間の脇見は不可能。車を直進させていた被告はハンドル操作で修正を加えていたと認められ、脇見をしながら行うことは不可能で、前方を視界に入れていたと言え、原因を脇見とした1審判決の認定は誤っている。 弁護人は、被害者が居眠り運転をしていて被告車両のライトに気づき、対向車と勘違いして急ブレーキをかけたと主張する。だが、被害車両も進路を保っていたことから居眠りは考えられない。被害車両の時速約40キロが特別に低速とはいえず、異常な運転をしていた根拠となり得ない。 【危険運転致死傷罪】 被告は、正常な運転状態なら認識できるはずの被害車両を認識できない状態で運転していたとしか考えられず、原因は飲酒の影響以外にはない。 被告は当日、自宅や飲食店で缶ビール1本、焼酎ロック8、9杯、ブランデーの水割り数杯という相当量の飲酒をした。店でも体のバランスを崩すなどの体験をし、自ら酔っているなどと発言している。脳の機能が抑制されて前方注視が困難な状態のため、直前まで被害車両を認識できなかったと認めるのが相当。1審判決は酒に酔った状態を軽視しているが、飲酒状況が重視されるのは当然だ。 危険運転致死傷罪でいう「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」とは、道路と交通状況に応じた運転操作が困難な心身の状態と理解するのが相当。被告は車の操作は可能だったが、前方注視に必要な能力が低下し、先行車を間近まで認識できなかった。被告は自らの視覚に異常が生じ、相当に酔っていたと自覚できていたと認められる。危険運転致死傷罪の成立が認められ、1審判決には明らかな事実誤認がある。 【量刑理由】 被告は相当量の飲酒をしながら身勝手な理由で車を運転し、時速約100キロもの高速で進行しており危険で、経緯や動機に酌むべき点もない。3児の尊い生命を奪った結果は誠に重大。車ごと海に転落した被害者夫妻の懸命の救助もかなわず、3人の子を一挙に失うという残酷な事態で多大な苦痛を受けるなど影響は重大で、被害者には極めて厳しい処罰感情がある。被告は失職を恐れて逃走し、友人に身代わりを頼むなど証拠隠滅も図っており悪質だ。飲酒運転が社会問題化し、危険運転による事故撲滅が強く求められてきた社会情勢にかんがみ、予防の見地からも厳しい非難を免れず、刑事責任は誠に重大だ。
2009年05月15日金曜日
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