福岡3児死亡 控訴審は危険運転致死傷罪認定 懲役20年
5月15日10時38分配信 毎日新聞
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3児死亡事故の控訴審判決で福岡高裁に入廷する両親の大上哲央さん(手前)とかおりさん=福岡市中央区で2009年5月15日午前9時42分、矢頭智剛撮影 |
陶山裁判長は「事故原因を脇見運転とした1審判決には事実誤認がある」と指摘した上で、「飲酒の影響で前方注視が困難な状況にあり、被告もその認識があった」と故意性を認定した。
08年1月の地裁判決は、原因を脇見運転とする今林被告の供述の信用性を認定。最高刑懲役20年の危険運転致死傷罪の成否について「事故前に蛇行運転や衝突事故もなく、水の持参を頼んだ言動などから判断能力を失っていない」とし、酒気帯び運転と断定した。
その上で、現場まで道路状況に応じてハンドル操作していることや、事故から48分後の飲酒検知の数字が呼気1リットル当たり0.25ミリグラムで警察官が「酒気帯び状態」と認定した検知結果を重視し、「飲酒の影響で正常な運転が困難だった」との検察側主張を否定。業過致死傷と道交法違反の罪を併合した最高刑を言い渡した。
控訴審で検察側は、現場での走行実験を収めた動画を新たに提出。「現場付近の道路は横切る形でこう配があり、前を見てハンドル操作しないと直進できない」と脇見運転を否定。「飲酒の影響で前方注視を怠った」と主張し、改めて危険運転罪の適用を求めた。
危険運転罪は▽正常な運転が困難な飲酒や薬物摂取▽制御困難な高速走行−−などで人を死傷した場合に適用される。死亡させた場合の最高刑は懲役20年だが「故意」の立証が難しく、適用件数は年間300件前後にとどまる。3児死亡事故では地裁が結審後、検察側に予備的訴因として業過致死傷罪の追加を命令した。【和田武士】
◇判決の骨子
・道路は左側が低くなるこう配があった。直進するにはハンドルの微修正が必要。長時間の脇見とした1審判決は誤り。
・先行車の存在を間近に迫るまで認識できない状態にあり、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態。危険運転致死傷罪が成立する。
・相当量の飲酒をし、時速約100キロで走行した行為は危険。3人の死の結果は重大。厳しい被害感情ももっともで被告の責任は極めて重い。
◇福岡・3児死亡事故
今林被告は06年8月25日夜、飲酒後に車を運転し、大上哲央(あきお)さん(36)一家5人が乗ったレジャー用多目的車(RV)に時速約100キロで追突して博多湾に転落させ、長男紘彬(ひろあき)ちゃん(当時4歳)▽次男倫彬(ともあき)ちゃん(同3歳)▽長女紗彬(さあや)ちゃん(同1歳)の3人を水死させ、哲央さんと妻かおりさん(32)を負傷させた。被告は現場から約300メートル逃走した。
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最終更新:5月15日12時9分
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