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【主張】「停留」期間短縮 改むるに憚ることなかれ
新型インフルエンザの患者と接触したり、すぐ近くにいたりしたことが判明した人への「停留措置」が、10日間から7日間に短縮された。これを受け、国内初の新型インフルエンザ患者と同じ飛行機に乗り合わせ、停留措置の対象となっていた48人の乗客らの多くは15日夕にも停留が解除されることになった。
確認しうる情報に基づき、目の前の事態に柔軟に対応することは危機管理の基本であり、それを怠るとかえって危機への対処を誤ることにもなる。「改むるに憚(はばか)ることなかれ」である。
インフルエンザウイルスの感染から発症までの間には一定の潜伏期間があるので、患者と接触があった人に対する停留措置は、流行の初期において、国内の感染拡大を防ぐために必要な措置だ。
一方で、停留を求められる人にとっては行動を著しく制限され、必ずしも軽くはない負担を強いられることになる。
病状や潜伏期間、感染力などに関する情報が十分に得られない流行の初期には、対策は最悪のシナリオを想定して組み立てざるを得ない。逆に、それを怠り楽観論に引きずられては、防げるものも防げず、あたら人的な被害を増やす結果にもなりかねない。
だが、国際的な医学、疫学情報の共有が進めば、話は別である。今回は新型インフルエンザ対策本部専門家諮問会議が国際的知見などを踏まえた報告を行い、その報告をもとに厚生労働省が期間短縮を決定した。
科学的根拠に基づいて強制的な措置を受ける人の負担を極力、軽減することは、国民の信頼感を高めるメッセージとしても重要である。新型インフルエンザは今後、国内での感染拡大も避けられない情勢だが、不安のあまり、政府が「念のために」と過剰な対策をいつまでも続けていたのでは、社会的混乱を増すばかりだからだ。
病原体は新型のウイルスであるとはいえ、病原性や感染力は通常の季節性インフルエンザと同程度であることも各国研究者の努力でますますはっきりしてきた。対応のしようは十分にある。
政府自身が流行の推移に応じ、現実に即した柔軟な判断を示すとともに、企業などにも過剰な対策で無用の社会的、経済的混乱を招くことのないよう、科学的な根拠に基づく情報を積極的に提供していく必要がある。